2015 Fiscal Year Annual Research Report
オミクスの手法を統合したトキシコオミクスによる薬毒物中毒の分子機構解析
Project/Area Number |
25460862
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
秋 利彦 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (60304474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 公一 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30244586)
船越 丈司 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40444715)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プロテオミクス / トランスクリプトミクス / 薬毒物 / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬毒物による異状死は法医実務上死因の特定が困難な場合が多く、各種薬毒物の毒性機序の詳細な解析は、鑑別に有用なマーカー分子を開発するための基礎として重要である。本研究課題では覚醒剤・コカイン・ヒ素・硫化水素・エタノール、および敗血症のモデルとしてリポポリサッカライドの毒性機序について調べた。まず、DNAマイクロアレイを用いたトランスクリプトミクス解析により、覚醒剤原料(ノルエフェドリン)による神経細胞死にコレステロール生合成経路の上昇が関与している事を示した。更にGC-MSを用いた定量解析により、コレステロールが細胞内に異常蓄積している事が判明した。コレステロールの動態異常は新規分子制御型ネクローシスであるネクロトーシスの引き金になっている事を示唆するデータを得た。また、エタノールによる心筋細胞死に細胞間接着・細胞骨格の破綻が生じており、Hippo経路が途上で破綻していることも示した。プロテオミクスを用いた硫化水素の肺胞上皮細胞への障害機構の解析で、アクトミオシンの活性化による過剰な細胞収縮やアクチン制御タンパクであるトランスゲリンの発現誘導などを発見した。これらの結果から、質量分析計を用いたメタボロミクス、プロテオミクス解析およびDNAマイクロアレイを用いたトランスクリプト解析の薬毒物による細胞障害機構解析における有用性を確認する事が出来た。更に、この三手法を統合して用いる事により特定の代謝経路や情報伝達経路の関与を網羅的に解析出来る事が示された。
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