2013 Fiscal Year Research-status Report
X染色体多型マーカーの血縁鑑定における有用性の評価に関する研究
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25460874
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
青木 康博 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90202481)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | DNA多型 / short tandem repeat / X 染色体 / 集団調査 / 血縁鑑定 / 連鎖不平衡 |
Research Abstract |
X染色体STRのポピュレーション・データを収集するため,インフォームドコンセントを得た516人(男性293人,女性223人)のDNAにつき,中村らにより開発された 18-plex kit(18座位を同時に増幅・型判定するシステム)により型判定を行った。そのデータから各対立遺伝子頻度を算出し多型性の指標となる各統計値(識別能,多型情報含有値,排除率等)を算出した。各座位の女性における識別能は平均0.829 (0.437-0.979)であり,女性の遺伝子型頻度データについては,いずれの座位もハーディ・ワインバーグ平衡からの乖離はみられなかったが,DXS101, DXS981, DXS6807, DXS7424, DXS9902, GATA31E08 の計6座位において,男性の遺伝子頻度データとの間に有意差が認められた。また連鎖の解析において男性ではDXS7424 - DXS101間(距離 0.8 Mbp),女性ではDXS981 - DXS7132(同 3.4 Mbp)間で統計上連鎖不平衡状態にあるとみなされた。統計指標(p 値)は必ずしも座位間の距離と相関せず,局在により組み換え価が相当異なることを反映している可能性も考えられたが,サンプル数が少ないことの影響も無視できず,この点についてはさらに検討を要する。一方,連鎖不平衡を考慮し,仮にハプロタイプとして扱うとしても多型性指標値にはほとんど影響を与えないことが示された。この点についても,個別の事例においては,独立性を想定しない場合,ハプロタイプによっては数値にかなりの影響がありうると予想されるので,多型指標値の評価を含めさらに検討を行う必要があるものと考えられた。なお,今回の一連の検討において,インターアリル DXS6809*26.2を含め,本邦では,または海外を含め,未報告のアリルが数個観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプルの採取・収集は順調に行え,男性については当初目標数をほぼ達成し,女性については目標数以上を確保でき,全ての試料について18座位(当初目標は20座位)のPCR増幅,電気泳動,型判定が実施できた。ただし,得られたデータはサンプル数に若干不足があることを示唆しており,次年度以降さらに例数を追加する必要である。このことを除くと,データの解析は予定通り進み,各多型指標値の算出や,データの妥当性について検討が可能であった。一方連鎖不平衡の検討についても着手しているが,これについては今後座位数を追加し,さらに詳細な検討が必要と考える。 血縁鑑定におけるX染色体STRの確率的評価法については,基礎的な知見を得るにとどまったが,これについても,次年度以降データのさらなる蓄積と並行して検討を進めることが可能でと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られたデータからは,いくつかの座位で男女間の対立遺伝子頻度に有意な差が認められた。検討を行って行く過程で,これはサンプル数の不足に主たる原因があるものと推定された。特に男性について,当初解析予定数を300サンプルとし,それにほぼ匹敵する293サンプルを検査しえたが,ヘミ接合であることから,情報量は常染色体STR150サンプル分にとどまる一方,多型性は常染色体のそれと大差がないため,遺伝子頻度に少数サンプリングに起因する偏りが生じた可能性がある。したがって,今年度以降もサンプルを追加し,最終的には男性400,女性300,すなわち染色体数としては1000を目指すこととする。 今回検討した18座位間においては,一部統計的に有意な連鎖不平衡が認められたものの,アリル頻度や多型性指標の評価にはほとんど影響が見られなかった。今後より稠密な範囲での検討が必要と考えられるので,検討座位数をその局在を吟味しつつ追加しデータを蓄積する必要がある。そのデータをもとに,連鎖不平衡の状態を反映したパラメータを計算過程に組み込んだ血縁鑑定の確率的推定法について検討を行うこととなる。一方本年度の研究成果から,X染色体多型マーカーによる血縁関係の確率的評価の際,統計上,連鎖をあまり考慮する必要のないシステムを構築することも可能と考えたので,この点についても今後の研究課題としたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究打ち合わせのための旅費を45000円計上していたが,メール等による情報交換のみで計画を遂行できたため執行されなかった。 今年度の研究結果より,データの追加が必要であることが明らかになったので,試薬等を調達する必要があり,繰越分はそれに充当する予定である。
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