2014 Fiscal Year Research-status Report
X染色体多型マーカーの血縁鑑定における有用性の評価に関する研究
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25460874
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
青木 康博 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90202481)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | DNA多型 / X染色体 / short tandem repeat / アレル頻度 / 連鎖不平衡 / 集団調査 / 血縁鑑定 / 個人識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年に引き続きX染色体STRのポピュレーション・データの収集を行った。新たに140名(女性73名,男性67名)よりインフォームド・コンセントを得て試料採取・DNA抽出を行い中村らにより開発された18-plex kit (18座位を同時に増幅・型判定するシステム)により型判定を行い,計656名(女性296名,男性360名)のデータを得た。さらに長腕に存在し前記18座位の一部と近接する3座位(DXS6799, DXS10103, DXS10147),短腕に互いに近接して存在する3座位(DXS10076, DXS10077, DXS10078),およびセントロメアに存在する3座位(DXS10162, DXS10163, DXS10164)を解析対象に加え計27座位の型のデータを得た。データ数の増加により,女性においてハーディ・ワインバーグ平衡からの甚だしい逸脱を示す座位,あるいは男女間で頻度に有意な差がある座位は認められなくなった。 男性のデータにより隣接する座位間における連鎖不平衡の有無について検討したところ,DXS10076-DXS10077,DXS10077-DXS10078,DXS10163-DXS10164間,DXS7424-DXS101の4ペアで連鎖不平衡の存在が認められた。ポピュレーション・データを用いた検討では,linkage groupとされる座位間や, 物理的距離の非常に短い座位間,およびセントロメアの座位間など,連鎖不平衡の存在が予想されたにもかかわらず検出されない座位が存在した。また連鎖不平衡が認められた座位の一方を除外し,他の23座位を独立とみなしても,遺伝的距離の短い座位同士をハプロタイプとみなしても,特定個人の識別にかかわる遺伝的多型性指標値には大きな影響を与えないことは前年度に報告したとおりである。 一方,上記18座位のアリル頻度データを利用し,遺伝的距離による組み換え価を考慮したコンピュータ・シミュレーションにより父-娘,母-娘,全同胞,非血縁者のペアを発生させ,血縁鑑定を行ったところ,非血縁者では父-娘関係をほぼ確実に否定できることなどが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの検討においては,当初目標サンプル数では若干不足していることを示すデータが得られていたが,今年度新たに140サンプルを加え検討したところ,ポビュレーション・データとしてはほぼ満足の行く結果が得られた。また新たに検討対象とした9座位については,ほぼすべてのサンプルについて型判定を実施できており,連鎖不平衡に関する検討を進めることが可能であった。さらに血縁鑑定におけるX染色体STRの確率的評価法についても,コンピュータ・シミュレーションなどによりいくつかの知見を得ることができ,次年度以降のさらなる発展の基礎を築けたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
X染色体STRの特定個人の識別(同一人由来であることの証明)への利用については,常染色体STRとほぼ同様に扱って差し支えないものと考えられたが,実務的にはさらに検証を必要とする点があり,それを課題とする。一方,血縁鑑定への応用については,連鎖あるいは組み換え価の取り扱いについての検討を行い,当初目標とした尤度比等計算用ファイルパッケージ等の開発を試みる。
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