2014 Fiscal Year Research-status Report
慢性アルコール投与ラットにおける血管反応性―アルコール誘発性突然死の観点から―
Project/Area Number |
25460877
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
羽竹 勝彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40164842)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 利彩 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20347545)
森村 佳史 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (50305710)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | アルコール / ラット / 上腸間膜動脈 / 一酸化窒素 / 内皮由来過分極因子 / 等尺性張力 |
Outline of Annual Research Achievements |
Wistar系雄性ラット(10週齢)に10%エタノールを含んだ液体飼料(Lieber食)を10週間投与し,慢性アルコール摂取ラットを作製し,上腸間膜動脈を摘出し等尺性張力を測定し対照群と比較した。アルコール投与群は対照群と比較してアセチルコリンによる内皮依存性弛緩反応が増加していた。一方,一酸化窒素(NO)合成阻害剤下での弛緩反応はアルコール群で増加していた。Western blotによるeNOSの蛋白発現量およびカリウムチャネル阻害剤存在下での弛緩反応が2群の間で差がなかった。一方,NO合成阻害剤下での弛緩反応はアルコール群で増加していた。 このことから,アルコール群での弛緩反応の増加はNOを介した弛緩反応ではなく,内皮由来の過分極因子(EDHF)を介した反応の増加によることがわかった。 また,EDHFを介した反応の増加はカリウムチャネルagonistのレブクロマカリムの弛緩反応及びカルシウムイオノフォアA23187による弛緩反応は2群間で差がなかったことから,アルコール摂取による弛緩反応の増加は内皮細胞でのレセプターのレベルで生じていることが示唆された。また,電気刺激による神経由来の弛緩反応について2群間で比較したところ,アルコール投与群は対照群に比べ弛緩反応が有意に低下した。この弛緩反応はCalcitonine-gene-related-peptide(CGRP)阻害剤で完全に阻害されたことからCGRPを介していることが明らかになった。一方,CGRPagonistによる弛緩反応は2群間で差がなかったことから,アルコール摂取によるCGRPを介する弛緩反応の抑制は平滑筋レベルではなく神経末端レベルで生じていることが示唆された。 慢性のアルコール摂取は高血圧などを発症するが,今回の結果は血管の反応性の観点から弛緩反応が増加しており,むしろ血圧の上昇に対して予防的あるいはそれ以上の血圧上昇を防ぐ機能が生じていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画において慢性ラットの飼育が順調になされ、計画予定通りにラット上腸間膜動脈を用い等尺性張力の測定により、慢性アルコール投与ラットにおいてアセチルコリンによる内皮依存性弛緩反応が対照群に比べ増加しているという結果が得られた。さらにこの増加は一酸化窒素を介した反応ではなく、内皮由来の過分極因子を介した反応の増加であることが判明した。このことはeNOSのwestern blotの結果によっても両群間に発現量の差がないことから示唆された。さらに電気刺激による神経由来の弛緩反応が対照群に比べ低下しているという結果が得られた。この電気刺激による弛緩反応はCGRPを介しており、慢性アルコール投与はこの弛緩反応を神経末端レベルで抑制されることが示唆された。 まだeNOSおよびnNOSの免疫染色が十分に検討されていないが、染色における基礎的方法は検討されているので、今後データを増やすことで当初計画は達成される方向にある。
|
Strategy for Future Research Activity |
26年度に達成されなかった免疫染色のデータの集積とともに、今年度は慢性アルコール投与ラットにおいて収縮反応がどのように変化するかを検討する。さらに26年度に得られた慢性アルコール投与ラットからの摘出血管のアセチルコリンの弛緩反応の増加がin vitroのアルコール投与により抑制されるのかどうか、すなわち慢性にアルコール暴露された血管がアルコールに対する耐性が生じるのか検討する。
|