2014 Fiscal Year Research-status Report
葛根湯の粘膜免疫系での制御性T細胞誘導による抗アレルギー効果
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25460891
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
山本 武 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (70316181)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 食物アレルギー / 葛根湯 / 制御性T細胞 / 腸管粘膜免疫 / プエラリン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、食物アレルギーの患者数は急増しているが、疾患を治癒もしくは予防する薬物療法はいまだ存在しない。そこで、食物アレルギーの治療を目指し、食物アレルギー病態モデルマウスを用いて腸管粘膜免疫系に着目し治療薬の検討を行った。漢方薬である葛根湯は、食物アレルギー病態モデルマウスの腸管粘膜固有層において、制御性T細胞を誘導することにより、過剰に亢進したTh2型免疫応答を抑制し、かつマスト細胞の浸潤を抑制し、消化器症状の発症を抑制することを明らかにした。また、葛根湯の構成生薬及び含有成分を用いた治療効果の検討を行い、葛根湯による治療効果は、主に葛根の主成分であるプエラリンによって示されることを明らかにした。 アレルギー症状の発症には、症状を呈する組織や臓器へのマスト細胞の浸潤とその脱顆粒が深く関与することが知られている。これまでに、申請者は、食物アレルギー病態モデルマウスの腸管粘膜固有層において、マスト細胞が神経ペプチドCGRPを発現した神経と近接して増多することを明らかにしている。そこで、CGRPによる粘膜型マスト細胞の制御について検討を行い、CGRPがマスト細胞の脱顆粒を増強させることを明らかにした。さらに、食物アレルギー病態モデルマウスにおいて、CGRP受容体の阻害剤の投与によりアレルギー症状の発症が抑制されることから、マスト細胞の脱顆粒がCGRPによって制御され、その脱顆粒が食物アレルギーの発症に関与することを明らかにした。 また、漢方薬の含有成分を用いて、マスト細胞の脱顆粒を指標としたスクリーニングを行い、シコニン、クルクミン、アルカニンが脱顆粒を抑制することを明らかにした。さらに、シコニンは、カルシニューリン阻害剤として作用し、オーファン核内受容体のNr4aファミリーの発現の増加を抑制し、マスト細胞の脱顆粒を抑制することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
葛根湯による腸管粘膜への制御性T細胞の誘導機序を検討する目的で、当初の予定通り樹状細胞やナイーブT細胞への葛根湯の作用を検討したが、葛根湯による樹状細胞やT細胞への直接的な作用は検出されなかった。しかし、食物アレルギー病態モデルマウスを用いて葛根湯の構成生薬及び含有成分を用いた治療効果の検討を行い、葛根湯の構成生薬の葛根の主成分であるプエラリンが、レチノイン酸合成を介して制御性T細胞を誘導することより治療効果を示すことを見出した。現在、プエラリンのレチノイン酸合成を介した作用機序について詳細な検討を行っている。 また、腸管粘膜免疫系は、食物アレルギーの発症に関与することが報告されているが、複雑かつ精妙に制御されており、その制御機構の詳細は未だ十分には明らかになっていない。そこで、食物アレルギー病態モデルでの腸管粘膜免疫系の制御機構の検討として、腸管神経系による制御機構の検討を行い、腸管粘膜免疫系と腸管神経系は相互作用し、マスト細胞の脱顆粒が腸管神経によって制御されることを明らかにしている。 腸管粘膜免疫系の制御機構や葛根湯やその含有成分による効果を明らかにしており、ほぼ予定通り研究が進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
葛根湯による食物アレルギーの改善効果には、主にプエラリンによる腸管粘膜層への制御性T細胞の誘導が関与することを明らかにした。また、このプエラリンによる制御性T細胞の誘導にはレチノイン酸合成が関与することを明らかにしている。腸管における制御性T細胞の誘導には、レチノイン酸合成酵素を発現したCD103陽性樹状細胞の関与が報告されている。そこで、この樹状細胞の分化増殖へのプエラリンの関与を明らかにするために、骨髄細胞を用いて樹状細胞を分化誘導する各種条件下におけるプエラリンとレチノイン酸の効果を検討する。また、プエラリンが直接作用する標的細胞の探索も行い、プエラリンによる治療効果の詳細な機序を検討する。 制御性T細胞は免疫寛容を誘導しアレルギー疾患の治療に有効性が示唆されている。そこで、アレルギー症状を発症した食物アレルギー病態モデルを用いて、アレルギー発症後もプエラリンにより、制御性T細胞の誘導が可能かどうか、また、寛容誘導によりアレルギー症状の改善が可能かどうか検討を行う。 さらに、アレルギー性鼻炎モデルやアレルギー性皮膚炎モデルなど他のアレルギー疾患モデルマウスを用いて、プエラリンによる制御性T細胞の誘導が、他のアレルギー疾患にも有効であるか検討を行う。 以上により、葛根湯を含めた漢方薬によるアレルギー疾患の治療に繋がる研究を進める。
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Research Products
(7 results)