2014 Fiscal Year Research-status Report
偽アルドステロン症発症リスクの個体差に関する研究と予知のための検査キットの開発
Project/Area Number |
25460907
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
牧野 利明 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80326561)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 偽アルドステロン症 / 甘草 / 漢方薬 / 副作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
漢方薬が引き起こす副作用のうち頻度の高く重篤なものとして、甘草含有処方による偽アルドステロン症が知られている。その発症の原因物質は、甘草に含まれるグリチルリチン酸(GL)を経口摂取した後に肝機能不全時に血液中に表れるその代謝物である3モノグルクロニルグリチルレチン酸(3MGA)が強く示唆されている。本研究では、血中または尿中濃度を酵素抗体法を原理として定量する方法を開発し、血中また尿中3MGA と副作用発症との関連を実証するとともに、その発症リスク予知のための3MGA 簡易測定検査キットを開発を目的としている。 まずはじめに、偽アルドステロン症の発症の原因と考えられる3MGAを特異的に認識するモノクローナル抗体を開発し、それにより3MGAの濃度を測定するためのELISA系を開発した。その測定系は、GLや血液中の主代謝産物であるグリチルレチン酸(GA)とは交差反応しないことを確認した。ところが、Mrp2欠損ラット(EHBRs)にGAを投与した時に血液および尿中にあらわれる未知の代謝産物と交差反応している可能性が推測された。そこで、GAを投与したEHBRsの尿を逆相薄層クロマトグラフィーで展開し、抗3MGA抗体を用いたイースタンブロッティング法で検出を試みたところ、3MGAよりも極性の高い位置に抗3MGA抗体と反応する複数のスポットを認め、それらのほうが3MGAよりもスポットが大きかったことから、その単離を目指すこととした。 逆相オープンクロマトグラフィーで対象となるスポットを単離し、構造を決定したところ、イソフラボンであるダイゼインであった。これはエサ由来であることが推定された。ダイゼイン標品と3MGAモノクローナル抗体とは反応しなかった。このことから、目的の化合物は逆相クロマトグラフィーではダイゼインとピークが重なってしまい、この方法では単離出来ないことが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予想外の交差反応代謝物がヒト血清、尿中に存在することが推測されたために、モノクローナル抗体を用いた3MGA特異的なELISA法の開発は困難となっている。しかし、その交差反応代謝物は、3MGAと類似した骨格をもつ分子であることが容易に予想されるため、その分子も偽アルドステロン症の原因である11βヒドロキシステロイド脱水素酵素2(11βHSD2)を阻害する作用をもつ可能性が大いに期待される。本モノクローナル抗体は複数の11βHSD2阻害物質を同時に検出できる可能性があることから、その交差反応代謝物の化学構造を同定し、それらの11βHSD2阻害活性を評価し、最終的に偽アルドステロン症の発症の予防のための検査キットの開発を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、EHBRsで検出された抗3MGAモノクローナル抗体と交差反応を示した未知のGL代謝物を逆相クロマトグラフィーの前に順相シリカゲルで低極性物質を吸着除去した後に行い、単離、同定をめざす。その11βHSD2阻害活性をラット腎ホモジネートおよびスライスを用いて評価するほか、腎尿細管上皮細胞に発現するトランスポーターとの親和性を明らかにし、実際にそれらの化合物がヒト腎尿細管において11βHSD2阻害活性を示すかどうかを検討する。その結果、甘草による偽アルドステロン症発症における新規原因成分と発症メカニズムが解明される。
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Research Products
(2 results)