2014 Fiscal Year Research-status Report
新規フェルラ酸誘導体の脳虚血性嚥下反射障害に対する予防・改善効果に関する基礎研究
Project/Area Number |
25460910
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
岡崎 真理 城西大学, 薬学部, 教授 (50272901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 武史 城西大学, 薬学部, 教授 (20187040)
松崎 広和 城西大学, 薬学部, 助手 (80582238)
玄 美燕 城西大学, 薬学部, 助手 (50711751)
岩田 直洋 城西大学, 薬学部, 助手 (50552759)
日比野 康英 城西大学, 薬学部, 教授 (10189805)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フェルラ酸誘導体 / 抗酸化作用 / 抗アポトーシス作用 / 嚥下障害 / 脳虚血 |
Outline of Annual Research Achievements |
嚥下障害は、昨今の高齢社会の到来により社会的に深刻な負担をもたらしているにも関わらず、現在、適応を持つ医薬品は存在せず、有効な予防・治療法の開発ニーズが極めて高くなっている。フェルラ酸は、植物の細胞壁を構成するリグニンの分解産物であり、比較的強い抗酸化活性を有し、神経細胞保護作用を示す。本研究では、脳血管障害による脳障害およびこれに伴う嚥下障害の予防・改善に有効な化合物の開発を目的として、新規フェルラ酸誘導体の設計・合成および有効性評価を行ってきた。当研究グループは、平成25年度末までに、13種類のフェルラ酸誘導体を合成し、これら化合物の抗酸化活性および細胞保護効果を指標として候補化合物を探索し、FAよりも強い効果を示すFAD012を見出した。平成26年度は引き続き、FAD012の細胞保護効果のメカニズムを検討した。FAD012はフェルラ酸と同様に細胞毒性が低く、過酸化水素による細胞死に対してフェルラ酸よりも強い抑制効果を示した。FAD012は過酸化水素による細胞内活性酸素種の増加を濃度依存的に抑制するとともに、Erk1/2経路の活性化を介して抗アポトーシス因子であるBcl-2の発現を増加させ、酸化ストレスによるアポトーシスを抑制することが明らかになった。さらに、FAD012の嚥下反射機能予防・改善効果を、両側総頚動脈結紮によって作製した慢性脳循環障害による嚥下障害モデル動物を用いて検証した結果、FAD012は、フェルラ酸よりも低濃度で嚥下反射機能障害軽減効果を示すことが明らかになった。FAD012は、総頚動脈結紮時の脳血流量低下を顕著に抑制した。これはフェルラ酸には見られない作用であり、FAD012は虚血時の脳血流量を維持することによって脳障害を軽減し、加えて虚血による酸化ストレス障害を軽減することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、25年度におけるスクリーニングにおいて効力の強かったFAD012について、慢性脳循環障害による嚥下障害に対する予防・改善効果に関する定量的データを取得することを第一の目標としていたが、これについては予定通り達成でき、FAD012がフェルラ酸よりも強い障害軽減効果を有することを明らかにできた。また、FAD012が虚血時に脳血管を拡張し、血流を維持する作用を持つことを見出した。さらにFAD012の酸化ストレス障害やアポトーシス抑制メカニズムを生化学的・分子生物学的手法を用いて明らかにすることができた。これらのことから、本研究は当初の計画に沿って遂行されており、その過程で有益な知見を生み出していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、FAD012の障害予防・改善メカニズムを解明するために、虚血による脳組織、特に錐体外路系の酸化ストレス障害やアポトーシスの評価を生化学的・分子生物学的手法を用いて行う。錐体外路系障害の評価については、黒質・線条体のチロシン水酸化酵素の免疫染色およびHPLCによる組織中のドパミン含量の測定、さらに、嚥下反射のトリガー物質として重要なサブスタンスPの咽喉頭粘膜上皮(上喉頭神経および舌咽神経咽頭枝支配領域)における発現量、唾液中のサブスタンスP量についても測定を行い、嚥下障害患者において報告されている錐体外路系のドパミン産生量の低下および咽喉頭・気管の粘膜に分泌されるサブスタンスPの量の減少がFAD012によって予防・改善されるかについて明らかにする。また現在、新たに10個の新規誘導体の合成が完了しており、血管拡張能をスクリーニングの指標に加えつつ、新たな候補化合物の探索を継続して行っていく予定である。
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