2014 Fiscal Year Research-status Report
原発事故広域避難者のストレスに対する研究-自殺予防のための社会的ケアモデルの構築
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25460915
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
辻内 琢也 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (00367088)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ストレス / PTSD / 原発事故避難者 / 社会t的ケアモデル / 自殺予防 / 支援オーガナイザー / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、原発事故広域避難者を対象に、[A]大規模アンケート調査、[B]インタビュー調査、[C]ハーバード大学との海外連携、[D]民間支援団体を通したケアの実践フィールドワーク、の4手法を用いて、孤独死・自殺予防のための新たな「社会的ケア」モデルの構築を目指しているものである。平成26年(2014年)度の研究成果を報告する。 [A]震災3年目にあたる26年3月に行った埼玉県・東京都に避難中の福島県住民を対象にした大規模調査(3599世帯)の解析および結果発表を行った。外傷後ストレス障害(PTSD)症状の強さを示すIES-R(改訂出来事インパクト尺度)にて、合計平均31.75点、PTSDの可能性が示される25点以上の者の割合が59.0%であり、昨年と同等の極めて高いストレス状態が確認された。また、震災4年の平成27年(2015年)1-3月に、NHK仙台・福島放送局と共同で、福島県・宮城県・岩手県の被災者約5万5千世帯を対象にしたさらに大規模な調査を実施した。 [B]連携研究者・大学院生・学部学生らと共に、福島県内および埼玉県内在住の被災者へのインタビュー調査を実施し、質的分析結果を投稿論文にまとめている。 [C]昨年度リサーチフェローとして在外研究を行なった米国ハーバード大学難民トラウマ研究所(Harvard Program in Refugee Trauma;HPRT)のTelemedicine部長であるEugene F. Augusterfer氏に、早稲田大学が企画した大著『震災後に考える-東日本大震災と向き合う92の分析と提言』に論文を寄稿していただき、筆者が和訳文を作成した。また、英文論文を共同執筆で1本完成させ、現在投稿中である。 [D]震災支援ネットワーク埼玉(SSN)の支援活動に継続参加し、社会的ケアのSSN/WASEDAモデルを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画に示した、[A]大規模アンケート調査、[B]インタビュー調査、[C]ハーバード大学との海外連携、[D]民間支援団体を通したケアの実践フィールドワーク、すべての項目において進展が認められる。 今年度のもっとも大きな成果は、NHK仙台・福島放送局と共同して行なった5万5千世帯の超大規模調査であり、その調査結果がNHKスペシャル「東日本大震災4年;被災者1万人の声~復興はどこまで進んだのか」、クローズアップ現代「“帰りたい、帰れない”福島の避難者それぞれの選択」、ハートネットTV「福島・避難者アンケート」にて放映され、視聴率を換算すると全国1500万人以上に研究成果が伝えられたことになる。このほか、学術面においても、数件の論文を着実に投稿中である。 今年度作成した社会的ケアの「SSN/WASEDAモデル」は、ハーバード大学の世界のグローバル・メンタルヘルスに対応して作られた「Framework for mental health recovery model」を参照し、日本のローカルな地域におけるケアに対応させたものである。個別化・複雑化が進むニーズに対し、被災者の声を拾い上げた上で、支援団体や専門職団体と連携・協力を行ない、的確に社会資源につなげる調整を行なう「避難者支援オーガナイザー」の役割の提案である。本役割は、福島県や原発事故被災市町村が実施を開始している復興支援員の業務としても期待され、今後、埼玉県・東京都で実施されている復興支援員の活動を医学・心理学・福祉学をベースに学術的にサポートしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の第一の目標は、これまでに震災1年目、2年目、3年目、4年目と行なってきたすべての質的量的調査結果の総まとめである。そして、ふたつ目の目標は、これまでに収集した厖大なデータを多面的に解析し、避難者のおかれている複雑かつ多様な現状に対処していくための包括的な社会的ケアモデルを構築していくための、研究チームの結成である。現在のところ、行動医学・公衆衛生学・発達行動学・建築環境心理学・文化人類学・政治学・法律学、それぞれの専門研究者が本研究チームへの参加を開始しており、データから読み取れる問題群を整理し、次の研究プロジェクトの立ち上げの準備を行なっている。
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Causes of Carryover |
共同研究先のハーバード大学難民トラウマ研究所との日程の都合があわず、海外旅費を使用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの研究成果の海外における学会・講演発表等を積極的に行っていく予定である。
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Research Products
(12 results)