2013 Fiscal Year Research-status Report
胃における自然免疫応答が前癌病変発生を制御する機序の解明
Project/Area Number |
25460925
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅野 直喜 東北大学, 大学病院, 助教 (20526454)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | NOD1 / Sox2 / 胃粘膜萎縮 |
Research Abstract |
H. pyloriの感染によって生じる胃の前癌病変としては腸上皮化生と萎縮性胃炎が挙げられる。これらのうち、腸上皮化生の発生には腸の発生・分化に関与するホメオボックス遺伝子であるCdx2の発現が重要な役割を果たしていると考えられているが、本研究代表者らの以前の研究により、細胞質内に存在する自然免疫応答分子であるNOD1がその発現を制御している可能性が判明した。H. pyloriを長期感染させたNOD1ノックアウトマウスの胃において、腸上皮化生のみならず、胃粘膜萎縮も認められたことから、NOD1が腸上皮化生の進展を制御していると同時に、胃の萎縮性胃炎の発生にも携わっている可能性が考えられ、検討を進めた。 まず、in vitroでの検討のために、マウス正常胃粘膜上皮細胞であるGSM06にNOD1-shRNAを遺伝子導入して恒常的にNOD1の発現が低下している培養細胞株を樹立した。この細胞とcontrol vectorを導入したGSM06とにH. pyloriを感染させたところ、胃の発生・分化に関与しているSox2の発現がH. pylori感染により抑制され、NOD1の発現量が少ないGSM06ではその抑制がさらに顕著になることが確認された。加えて、NOD1の発現が低下している細胞株では正常細胞に比してプロトンポンプの遺伝子ATP4aの発現が低下していることも確認された。 現在、これらの現象がどのようなシグナル伝達経路を介しているのか、NOD1の下流分子であるRICKやTRAF3などが関与していると考え、現在検討を進めている。 上記in vitroの系で認めた結果をin vivoで確認するため、C57BL/6JマウスとNOD1KOマウスに麻酔した上で経口的にH.pyloriを感染させた。経口感染から12ヶ月後に胃を摘出し、胃粘膜萎縮の出現やその発現遺伝子等につき解析予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、東日本大震災後の改修工事が行われており、遂行可能な実験が限られているが、改修工事が開始する前にH.pyloriのマウスへの経口感染やNOD1shRNAを導入した安定細胞の株樹立等は行うことができた。現在は以前に採取したRNAを用いての検討や免疫組織化学を中心に検討を進めている。改修工事が終了次第、in vitroの感染実験やシグナル伝達系の解析を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivoではH.pyloriを経口感染したC57BL6/JマウスおよびNOD1KOマウスの胃を感染12ヶ月後に摘出し、胃粘膜萎縮の有無、発現遺伝子について免疫組織化学や抽出したRNAを用いた定量リアルタイムPCR等により解析する。また、in vitroでGSM06およびNOD1をノックダウンしたGSM06を用いてH.pylori感染実験を行うことで、NOD1がどのように胃粘膜萎縮を制御しているか、関与しているシグナル伝達系の解明を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
東日本大震災後の改修工事が始まり、現在、共同実験室が使用できない状態となったため、実験計画の見直しが必要となった。共同実験室でのみ遂行可能な実験は改修工事が終了次第行う予定である。 共同実験室改修工事により本年度遂行することができず、実購入の試薬は次年度購入予定である。平成26年度も抗体や電気泳動試薬等の試薬、牛血清や細胞培地等細胞培養に必要な培養液、マウスの資料等を購入していく予定である。
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