2014 Fiscal Year Research-status Report
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25460965
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Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
河村 由紀 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 室長 (10392391)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性腸疾患は近年著しい増加傾向にある若年発症の慢性疾患で、消化管局所の免疫応答異常を特徴とする。申請者はこれまでに炎症消化管における免疫細胞の細胞表面分子の発現異常と、その原因となるエピジェネティック変化を見出していおり、本研究ではエピゲノムの視点から炎症の重篤化機構の解明を目指している。前年度に引き続き、炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎、クローン病、および対照として正常大腸粘膜よりCD33陽性樹状細胞/マクロファージ、CD3陽性T細胞をそれぞれ分離し、申請者らが確立したスモールスケールクロマチン免疫沈降(ChIP)法により、ヒストンメチル化修飾(H3K4me3、H3K9me3、H3K27me3)を次世代シークエンサーを用いて網羅的に解析した。また同一症例の検体を用いてメチローム解析、serial analysis of gene expression (SAGE)-seq法によるトランスクリプトーム解析を施行した。本年度はこれまでに蓄積した各々のエピジェネティック修飾の網羅的プロファイル、遺伝子発現の網羅的プロファイルをバイオインフォマティックス手法を用いて統合解析した。その結果、潰瘍性大腸炎ではプロモータ領域においてH3K4me3またはH3K27me3修飾を受ける遺伝子数が顕著に増加していることを見出した。特にCD33陽性樹状細胞/マクロファージにおいて、H3K4me3とH3K27me3両方の修飾をプロモーター部に有する遺伝子数の増加が著明であった。これらの変化は遺伝子発現変化とは関連しなかったことから、潰瘍性大腸炎では特定の遺伝子の発現制御領域にエピゲノム異常が生じるというより、エピジェネティック修飾機構そのものが病的であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
個人差の大きい臨床検体を用いた網羅的解析で、バイオインフォマティックス手法を駆使して疾患に特徴的な変化を見出したことは、目覚ましい進歩である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から潰瘍性大腸炎の免疫細胞(T細胞、樹状細胞/マクロファージ)では、特定の遺伝子の発現制御領域にエピゲノム異常が生じるというより、エピジェネティック修飾機構そのものが病的であることが明らかになったため、潰瘍性大腸炎に特徴的なエピジェネティック修飾変化を引き起こす因子を探索する。エピジェネティック修飾関連遺伝子の発現を調べるともに、正常消化管組織より分離した粘膜固有層単核細胞(LPMC)に、炎症性メディエーター(サイトカイン、ケモカイン等)、炎症に伴う腸内細菌叢変化を反映する菌体成分・菌代謝物(LPS、酪酸等)等の過剰添加ないし除去(飢餓状態)培養を行い、疾患に特徴的な異常が再現されるか否かを検証する。
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Research Products
(2 results)