2013 Fiscal Year Research-status Report
非アルコール性脂肪肝炎におけるMIFの役割とその制御による治療応用
Project/Area Number |
25460968
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大川原 辰也 北海道大学, 薬学研究科(研究院), その他 (00374257)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 宏司 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60261294)
大西 俊介 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10443475)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | マクロファージ遊走阻止因子 / 非アルコール性脂肪肝炎 / 肝線維化 |
Research Abstract |
当該年度において、まずマウス非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルの作製を行った。今回は脂肪肝・肝炎・肝線維化の発症について検証するためにコリン・メチオニン欠損食(MCD食)を給仕し発症させる疾患モデルを用いた。給仕期間を延ばすほど病態は進行すると報告されているが、まず本研究でMCD食給仕マウスでは各マウス系統でMCD投与5及び8週間後に解析し著しい成長障害と体重減少を確認した。これはMCD食による脂肪成分の肝外分泌減少により体脂肪量が減ったことが考えられるが、発育自体が影響を受けていることも考えられた。他にNASHモデル評価項目について、肝/体重比について、C57B6マウスにMCDを給仕すると増大傾向がみられることが報告されているが本研究においてC57B6マウス(通常食群42.0, MCD食群65.4g/kg)と同様な結果は得られたがBalb/cマウスにおいて両群とも40g/kgとマウス系統の差がみられた。肝組織についてはMCD食給仕マウスは肉眼的には黄色調で組織学的には肝内に脂肪滴が多数確認された。MCD食投与5週後・8週後とも炎症細胞の浸潤や線維化は通常食マウスと差が見られなかった。肝組織浸潤の白血球等も群・系統間差を認めなかった。マクロファージ遊走阻止因子(MIF)の発現を免疫染色にて確認したが、通常マウス・MCD食マウスとも肝細胞に弱く発現しているが発現は部分的であり特に免疫細胞での発現は各群の5週後の時点では明らかな差は見られなかったが8週後の時点ではMCD食マウスで肝細胞でのMIF発現は高めの傾向は見られた。MCD食誘導NASHモデルマウスはその発症初期特に脂肪肝にMIFが強く関与していることは蛋白レベルでは明らかにならなかったが、遺伝子発現や全身のMIF発現などについては検討の余地がある。MIF活性阻害薬の投与やノックアウトマウスによる検証も予定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、NASHマウスモデルが既報の通りの経過で発病するかという検証に時間がかかったことと、さらに論文などの既報に見られないマウス系統でのNASHモデルの樹立を試みたため、それらを解析するために相当な時間を要した。具体的には既報によるとマウス系統がC57B6マウスによる発病の報告が多数みられるが、我々がMIFDNAワクチン投与によるMIF活性阻害の治療やMIFノックアウトマウスとして用いる研究の際に、その効果判定を評価できるマウス系統がBalb/cであるが、Balb/c系統を用いたMCD食誘導NSAHモデルマウスの報告が見当たらず、C57B6マウスと同様な発症を引き起こすかが不明だったため、これらのマウスを用いてマウス系統群間におけるMCD食給仕によるNASHモデルの発病を検証する実験を繰り返した。それにより時間的にMIFノックアウトマウス作成及び繁殖、そして野生型マウスとのNASH発症の比較検討を開始することが充分に行えなかった。ただしこのマウス系統によるNASH発症の比較検討の研究により、我々が今まで解析した手法や動物を用いてNASHを解析することが充分に可能であることも確認された。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、さらにin vivoつまりモデル動物試験におけるさらなるMIF発現やその活性調整による疾患の変化などの解析を進めていく。NASHモデルにおける様々な遺伝子発現、特に炎症メディエーター、代謝、酸化ストレス、癌関連遺伝子の発現を肝組織で解析する。MIF発現についても遺伝子、蛋白レベルについて肝組織を含め多種の組織サンプルで解析を進める。 MIF活性阻害剤の投与や我々が作成したMIFDNAワクチン投与によるNASHの変化をモデルマウスを用いて臨床所見・組織学的所見・炎症マーカー、代謝産物、細胞増殖因子等の発現を治療群・未治療群で比較検証する。 前年度遂行を開始する予定であったMIFノックアウトマウスを用いたNASHモデルの解析はMIFノックアウトマウス作成に時間を要し、その繁殖もやや容易ではないという課題もあるがNASHにおいてMIFが及ぼす作用が主体的か否かを明確に解明するためにはこの実験は必要であり、ノックアウトマウスの作製・繁殖、そしてその解析も進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
理由として、MIFノックアウトマウス作成を進める予定であったが作成と繁殖、疾患モデルでの検証にまで至らなかったのが一つ、またMIF活性阻害剤投与によるNASH病態変化の解析も遅れたため、計画通りに助成金を消化できなかった。未使用金額についてはMIFノックアウトマウスの作製および繁殖とMIFDNAワクチン治療マウスにおけるNASHの変化や機序の解析(下流遺伝子やタンパクなどの因子の解析)に充てる予定である。翌年度分として請求した助成金についてもMIF活性阻害を来たす低分子化合物を投与したNASH疾患モデルマウスの治療効果の検討とともにMIFノックアウトマウスを用いたNASHモデルの解析をさらに進めるために助成金を使用する計画である。またin vivo実験だけでは解明しずらい細胞内シグナルや蛋白・遺伝子発現についても翌年度分の助成金を用いin vitro実験を計画している。 未使用額のうち540,000円については、今年度のMIFノックアウトマウス作成に使用する。他の未使用額のうち91,800円については、ノックアウトマウスと対症群としている野生型マウスを購入することに充てる。さらに未使用額のうち54,000円についてはMIFDNAワクチン投与の際に用いる遺伝子導入平行ニードルに使用する。未使用額のうち49,345円についてはMIFノックアウトマウスのサンプルを解析する遺伝子工学キットに使用する。
|