2014 Fiscal Year Research-status Report
肝組織に存在する4種類のB型肝炎ウイルスRNA定量測定系の開発
Project/Area Number |
25461004
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
藤原 圭 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70635804)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新海 登 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 臨床研究医 (30543988)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | B型肝炎 / RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
B型肝炎ウイルス(HBV)感染は出生時もしくは小児期の感染により大部分が慢性キャリアとなり、肝硬変、肝癌に進展する疾患であり、また成人の急性感染では重篤な劇症肝炎を引き起こすこともある。現在のところ核酸アナログ製剤投与により肝臓内でのウイルス複製を抑制し、疾患の進展を抑えることが可能となっているが、何十年という長期にわたる内服治療が必要な状態で、いまだ根治的治療が確立されていない。我々は、HBVによる慢性肝疾患の臨床的研究やHBV複製メカニズム、HBV遺伝子変異、遺伝子型について過去に多数の検討を行った。本研究では、HBVが肝細胞内でウイルス複製や構造蛋白、非構造蛋白生成のために転写する4種類のmRNAをリアルタイムPCRで定量的に測定する新しい実験系を開発し、慢性肝炎から肝硬変への進行、発癌、さらには潜在性HBV感染といった臨床病態やウイルス複製機構との関連を検討する。本年度の研究では、設定したプライマー、プローブを用いて、RNA特異的なプライマーを用いた1ステップRT-PCR法や2ステップで逆転写(RT)を第一段階として用い、その後cDNAを使用しリアルタイムPCRで定量する手法の安定性、比較を進めている。設定したプライマーに対する1ステップRT-PCR法での最適化、感度について十分な検討が必要となっている。その際に異なるテクニックを用いた際の実験系の最適化や感度について比較のため検討し、今後、感度や定量性の高い実験系を用いることとなる。また、微量の検体に対する感度向上のための追加実験を行い、その後に臨床検体を用いてRNAの測定を行い、様々な臨床病態やウイルス複製メカニズム、遺伝子変異、遺伝子型の違いが転写、蛋白合成に関連する影響についてさらなる検討を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HBVは遺伝子変異が高頻度であり、安定したプライマーの設定が困難であるが、各種遺伝子解析ソフトを用いて確認の後に各領域にプライマー、タックマンプローブを設定した。その後肝組織および血液からRNA、DNAを効率よく抽出するメソッドを検討し、決定した。次に、まずはHBV DNA量が測定されている血液から核酸抽出を行い、DNAから1ステップリアルタイムRT-PCR法を用いて実験系の定量性を確認した。検出はされるものの、感度が今のところ今回の検出に必要と推定される核酸量に十分に達していないため、プライマー、プローブ濃度、塩基濃度、温度設定の調整を用いてこの方法による実験系の最適化を進めている。また2ステップでランダムプライマーを用いたRTを第一段階として用い、その後cDNAを使用しリアルタイムPCRで定量する手法と感度や定量性の比較を行っている。今回の実験系ではより高感度であることが重要となるため、上記リアルタイムPCRによる測定系の感度、安定性の検討とともに、抽出された核酸の濃縮による微量核酸検出向上や、2ステップで検出する際に第一段階で配列特異的なプライマーを用いた高温度でのRTとpre-amplificationを使用し検出感度の向上が得られるかについても検討を行っている。Pre-amplificationを用いた検出感度の向上については、潜在性HBV感染者における測定において重要になると思われる。また、今回の実験系の確立に必要なHBVを含む血液の採取、肝組織の採取を継続している。特に血液検体においては、血清HBV関連蛋白定量値の高い検体が当実験系を用いる際に有用と考えられ、各種血清マーカー値の異なる検体採取を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
定量実験系の感度、定量の安定性の確立が必要となる。そのために、繰り返し現在行っている実験系の最適化をはかることが必要となる。また、現在の慢性感染者を測定する場合であれば、定量的な検査方法で良いと考えるが、既往感染者、いわゆる潜在性HBV感染者に関する検査をする場合は、より定性に近い検出系を目標に、定量性ではなく、より高感度を中心に考えてゆく必要がある。そのためにもpre-amplificationを用いた2段階でのリアルタイムPCRによる実験系は有効となる可能性が高い。RNAやDNAの失活に関する点については、濃度を振分けた核酸分解酵素を用いて詳細な検討を行い、核酸分解酵素の試適濃度を決定し、コンタミネーションによる悪影響に十分注意しながら、実験を進める。実験系の確立の後に、すみやかにHBV感染慢性肝疾患患者臨床データと各領域におけるmRNA発現の患者検体を用いて検討を行ってゆく。治療への反応性、薬剤感受性、慢性肝疾患患者の病態と相関するmRNA定量値を解析し、各種mRNAの変化が臨床像へ影響を及ぼしているかを詳細に調査し、バイオマーカーとしての可能性を検討する。臨床的なデータベースの構築を行い、各mRNA定量データと臨床データベースの臨床病態、HBs抗原量、HBe抗原量、HBeセロコンバージョンの状態、HBcr抗原といった各種血清マーカー、HBV DNA量、 プレコア、コアプロモーター変異といったHBV遺伝子変異、薬剤感受性といかに相関するかを検討する。また、一人の患者における継時的な各領域mRNA値の変化が臨床病態、ウイルス学的状態に影響を与えてくるかについても検討が必要である。以上、定量実験系の感度、定量性を高め、当実験系の臨床的な意義について検討を行う。
|
Causes of Carryover |
平成26年後に購入する物品費、旅費が計画より減額となったためです。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の物品費、旅費として使用します。
|
Research Products
(6 results)
-
[Journal Article] ITPA genetic variants influence efficacy of PEG-IFN/RBV therapy in older patients infected with HCV genotype 1 and favourable IL28B type.2014
Author(s)
Matsuura K, Tanaka Y, Watanabe T, Fujiwara K, Orito E, Kurosaki M, Izumi N, Sakamoto N, Enomoto N, Yatsuhashi H, Kusakabe A, Shinkai N, Nojiri S, Joh T, Mizokami M.
-
Journal Title
J Viral Hepat.
Volume: 21
Pages: 466-474
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-