2014 Fiscal Year Research-status Report
脂肪肝炎における脂肪化肝細胞の免疫原性及び肝内浸潤制御性T細胞についての検討
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25461005
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
山口 寛二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50381950)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脂肪肝炎 / 獲得免疫 / PD-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪肝炎発症の背景に免疫老化による獲得免疫の攪乱が関与すると仮定し、マウス脂肪肝、脂肪肝炎モデルを作成後に肝内浸潤T細胞のFACS解析を行った。具体的にはB6マウス45匹を3群に分け、普通食、高脂肪食、高脂肪高コレステロール食を投与し、投与後8週間、16週間、24週間で各3匹ずつ、肝臓を還流処置で脱血後に処理して肝内浸潤T細胞、NKT細胞、クッパー細胞を単離しそれぞれのマーカー(CD3, CD4, CD8, NK1.1, CD1d, CD11c, F4/80)およびT細胞の制御性マーカーであるPD-1, CTLA4, LAG3, CD25/foxp3でFACS解析を行った。結果、老化及び脂肪化で肝内浸潤T細胞に発現する制御性マーカーの継続的な上昇が確認された。老化に伴うこれらの変化を脂肪化が助長していると考えられた。また、同時に末梢血、脾臓内のT細胞も単離し肝臓との所見を比較検討した。脾臓でも肝臓と同様の傾向が確認されたが肝臓ほど強い変化ではなかった。一方、末梢血ではほとんど変化がなく、肝内浸潤T細胞の変化を末梢血で予想することは困難であると結論した。次に各6匹の残ったマウスより血液、肝臓のサンプルを採取し解析を行った。肝臓よりmRNAを抽出し、リアルタイムPCRで炎症性サイトカイン、ケモカインについて遺伝子発現解析を行ったところ、炎症の程度に応じてPD-1, LAG3の免疫染色を施行したとこと肝内浸潤リンパ球の一部にPD-1陽性細胞が確認されたが、その局在に関しては各群で有意な差はなかった。次にCD4陽性、CD8陽性T細胞からそれぞれPD-1陰性、陽性細胞分画をソーテイングにより抽出し、mRNAを取り出してサイトカインの発現解析、72時間のCD3刺激後に細胞内サイトカインを染色しPD-1発現によりT細胞機能評価を行った。これらにより脂肪肝炎におけるT細胞に発現するPD-1の役割を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の達成目標である肝脂肪化と老化における肝内浸潤T細胞の制御性マーカーを経時的に追うことが出来た。すなわち24週間の高脂肪高コレステロール食によるマウス脂肪肝炎モデルに週に2回のペースでPD-1抗体を投与するモデルは作成済みで、末梢血、肝臓サンプル、内臓脂肪、筋肉の採取は完了している。現在は解析中で、論文作成を開始し始めている段階である。ただし、当初の予定と違い、脂肪肝炎における肝内浸潤CD8T細胞上に発現するPD-1だけでなく、CD4陽性T細胞にPD-1の発現が誘導される際に、細胞内サイトカイン染色でFoxp3が強く発現していることが判明した。PD-1抗体投与により脂肪肝炎は著明に改善されるが、この機序にCD4陽性PD-1陽性細胞にFoxp3の発現増加がどのように関与しているかを追加検討している。すなわち脂肪肝炎モデルにPD-1抗体を再度24週間投与し、肝内浸潤T細胞を単離、CD4陽性PD-1陽性Foxp3陽性細胞をソーティングしてmRNAを抽出し、各種サイトカインの発現解析を再検討しているため、予定よりも時間が必要であったが、それほど大きな遅れはきたしていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、今までのデータを集積し論文作成および学会発表を行う。論文作成の要点としては、脂肪肝炎および老化でT細胞の制御性マーカーが肝臓特異的に増加すること、その役割がCD4陽性T細胞と、CD8陽性T細胞で異なる可能性があること、PD-1シグナル阻害により肝機能が改善すること、この3点についてまとめる予定である。また、PD-1シグナル阻害は実際の臨床分野において悪性黒色腫治療で大きな副作用なく効果を発揮している。今後は他の癌腫においてもその適応が拡大される可能性があるため、ヒト脂肪肝炎に及ぼす影響についても検討が役立つと考えられる。そこで、ヒト臨床検体において脂肪肝炎とPD-1分子の発現動態を検討すべく、ヒト脂肪肝炎の肝生検組織から倫理委員会の了承を得たのちにmRNAを抽出し、cDNAを作成、PD-1関連遺伝子の発現解析を行い、臨床データとの関連を検討する予定である。現在は京都府立医科大学の倫理委員会に臨床研究計画書を作成し申請中の段階である。臨床計画実施の許可を待って、実際の臨床サンプルでの検討を行い、マウス脂肪肝炎での事象がヒトでどのようになっているかを比較検討する予定である。
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