2014 Fiscal Year Research-status Report
成体膵の恒常性の維持および膵癌形成におけるNotch/Hes1シグナルの機能解析
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25461022
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
児玉 裕三 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80378687)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 膵臓 / Hes1 / 前癌病変 / 膵癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 成体膵の組織幹細胞における Hes1 の機能解析: Hes1 ノックアウトマウスは胎生致死であるため、成体における Hes1 の機能解析は不可能であった。本研究では、膵特異的プロモーター Elastase1(Ela1) 下にタモキシフェン誘導型Creを発現する Ela1-CreERT2 マウスと Hes1 flox マウスとの交配により、膵特異的 Hes1 ノックアウトマウスを作成し、膵組織構築や形態、外分泌機能、内分泌機能について解析した。 2. 膵前癌病変(PanIN)の形成における Hes1 の機能解析: 申請者らは、Ela1-CreERT2マウスと、Cre誘導性に恒常活性化型変異Kras遺伝子を発現する LSL-KRasG12Dマウスとの交配 により、前癌病変mPanINが生じることを確認している。同マウスとHes1 flox マウスとの交配により、mPanIN形成におけるHes1の役割について検討した。 3. 誘導性膵癌マウスモデルの確立: 膵癌の形成におけるHes1の機能を解析するために、Ela1-CreERT2誘導性に恒常活性化型変異Kras遺伝子、および変異TP53遺伝子発現する Ela1-CreERT2;KrasG12D;TP53R172H マウスを作成した。同マウスにおいて各種の週齢においてタモキシフェンを投与し、膵癌の形成、およびHes1の発現について検討を行なった
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 成体膵の組織幹細胞における Hes1 の機能解析: 膵特異的プロモーター Elastase1(Ela1) 下にタモキシフェン誘導型Creを発現する Ela1-CreERT2 マウスと Hes1 flox マウスとの交配により、膵特異的 Hes1 ノックアウトマウスの作成は順調に進んでいる。同マウスにおける、形態形成の解析も進み一定の見解が得られている。 2. 膵前癌病変(PanIN)の形成における Hes1 の機能解析: Ela1-CreERT2;KrasG12D;Hes1f/f マウスの作成は順調であり、mPanIn の形成におけるHes1の機能が明らかになりつつ有る。 3. 誘導性膵癌マウスモデルの確立: Ela1-CreERT2;KrasG12D;TP53R172H マウスの作成は順調だが、現在までに膵癌の形成が確認されていない。そこで膵特異的プロモーターPdx1下に恒常活性化型変異Kras遺伝子、および変異TP53遺伝子発現する Pdx1-Cre;KrasG12D;TP53R172H マウスを作成した。同マウスにおいて、膵癌が短期間に高頻度に形成されることが確認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 成体膵の組織幹細胞における Hes1 の機能解析、2. 膵前癌病変(PanIN)の形成における Hes1 の機能解析、3. 膵癌の形成における Hes1 の機能解析を引き続き行なう。特に3. 膵癌の形成における Hes1 の機能解析においては、Pdx1-Cre;KrasG12D;TP53R172H マウスとHes1 flox マウスとの交配を行い、膵癌の形成の有無、増殖・分化マーカーの発現、組織学的異型度、浸潤・転移の有無などについて検討する。さらにin vitroにおいて、膵癌細胞のHes1遺伝子をCRISPR/Casシステムによりノックアウトし、Hes1の機能解析を行なう。 これらの検討により膵癌の形成におけるHes1の役割が明らかとなった場合、さらに、4. Hes1をターゲットとした新規治療開発を行なう。これまでに確立したPdx1-Cre;KrasG12D;TP53R172Hマウスを用い、Notchシグナル阻害剤、あるいはHes1阻害剤を投与し、膵癌の形成における影響、あるいは正常組織に与える影響について検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、マウス実験によるところが大きい。成体膵の組織幹細胞における Hes1 の機能解析、および膵前癌病変(PanIN)の形成における Hes1 の機能解析で使用するマウスの交配と飼育は平成25年度に大きく進み、平成26年度はこれらの飼育管理費を減少させることが出来た。また、平成26年度に主に行なった誘導性膵癌マウスモデルの確立においては、preliminaryな実験においてEla1-CreERT2;KrasG12D;TP53R172H マウスに膵癌の形成が乏しかった。そのため平成26年度においてはあえて交配を進めず、次年度の新たなマウスモデルに備えることとした。これらにより、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に予定していたEla1-CreERT2;KrasG12D;TP53R172H マウスの作成において、膵癌の形成は予想を下回るものであった。このため、新たにPdx1-Cre;KrasG12D;TP53R172Hマウスによる膵癌マウスモデルの確立を行なった。次年度は、本マウスモデルの繁殖により解析を大きく進めるとともに、Hes1-floxマウスとの交配によりHes1の機能解析を一気に進める予定である。次年度使用額はこのようなマウスの飼育管理費、あるいはこれらの解析に用いる標本作製費、抗体・試薬購入費に使用する予定である。
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