2014 Fiscal Year Research-status Report
遺伝性不整脈患者iPS細胞由来心筋細胞を用いた薬物誘発性QT延長症候群の病態解明
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25461051
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
丹羽 良子 名古屋大学, 環境医学研究所, 研究員 (00216467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神谷 香一郎 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (50194973)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝性不整脈 / iPS細胞 / 薬物誘発性 / QT延長症候群 / イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画3ヵ年で、主として第7番目のLQT症候群すなわちAndersen症候群の患者から樹立したiPS細胞を用い、その不整脈原生の機序とその治療法について検討する。すでに、Andersen症候群患者について、遺伝子変異の判明している3名(KCNJ2R218W、KCNJ2R67W、KCNJ2R218Q)についてiPS細胞から分化誘導した心筋細胞を用いて、その機序と薬剤を用いた治療法について検討した。 Andersen症候群は、心室不整脈、周期性四肢麻痺、骨格異常を三徴とする遺伝性疾患であり、KCN2遺伝子異常によりコードするKir2.1(内向き整流Kチャネル)に変異を生じ、IK1電流の減少が心電図U波と特徴的な二方向性の心室期外収縮をもたらす。機序としては、細胞内Ca濃度の局所的な上昇により異常な膜電位振動とそれによる遅延後脱分極が推定されているが、今日に至るまでそれを実証した報告はない。 我々は、MEA(多電極アレイ)を用いた細胞外電位測定とCa蛍光指示色素Fluo-4を用いた細胞内Ca動態解析により、世界に先駆けて細胞内Ca過負荷状態がAndersen症候群に伴う不整脈発生機序であることを示した。また抗不整脈薬フレカイニドが特異的にAndersen症候群由来の心室不整脈を抑制するのに対し、ほかのNaチャネル抑制剤ではこのような抗不整脈作用がないこと、その機序がNa/Ca交換機構の逆モードの抑制に基づくことを見出した。その成果の一部は、平成27年4月の日本循環器学会にて発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに研究計画に使用する細胞群である(1)健常者および遺伝性QT延長症候群(LQT7)患者からのiPS細胞樹立、(2)ヒトiPS細胞からの心筋誘導、についてはこれを達成することができ、通常の実験には順調に使用されて成果を上げている。(3)すなわち、これらの分化誘導心筋細胞に対してMEAを用いた細胞外電位記録により、Andersen症候群では遅延後脱分極(DAD)による自発興奮が生じ、カテコラミンにより増幅され、フレカイニドにて抑制されることが示された。(4)また、浜松医科大学の渡邊教授グループとの共同実験により、フレカイニドの抗不整脈作用はNa/Ca交換機構の逆モードの抑制に起因することが判明した。(5)更に、Ca蛍光指示色素Fluo-4を用いた細胞内Ca動態の解析実験により、Andersen症候群患者iPS細胞由来の分化心筋細胞では、細胞内における不規則なCa放出がみられ、フレカイニドによってこの不規則なCa放出が抑制されることを見出した。(3)患者由来iPS細胞を用いたイオン電流の測定に関しては、滋賀大学堀江教授グループとの共同実験を継続しているが、いまだ十分な成果を得られていない。その原因は、主としてヒトiPS細胞が脆弱で扱いが難しく安定した電流記録が得られないことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度の実験計画(1)健常者および遺伝性QT延長症候群(LQT7)患者からのiPS細胞の樹立、(2)ヒトiPS細胞からの心筋細胞誘導、(3)ヒト分化心筋細胞のMEAを用いた細胞外電位記録、(4)Ca蛍光指示色素Fluo-4を用いた細胞内Ca動態の解析、を引き続き遂行する。さらに、現在難航している(5)ヒトiPS細胞あるいは分化心筋細胞の活動電位、イオン電流記録、について実験手技的な問題を解決し、さらなる知見を得たい。
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Causes of Carryover |
他施設(滋賀大学)でのヒトiPS細胞を用いたイオン電流解析実験が現在難航しており、そちらへの細胞標本の提供が集中した結果、当施設での実験頻度が少なく、経費が前年度より少なく消費されて30万円程度次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
難航したiPS細胞のイオン電流実験の頻度を減らし、従来のMEA細胞外標本と細胞内Ca測定実験を重点的に集中して実施する予定である。
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Research Products
(3 results)