2013 Fiscal Year Research-status Report
大動脈解離の発症および中長期予後に関わる根本的因子の解明
Project/Area Number |
25461089
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
蒔田 真司 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (60306024)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大動脈解離 |
Research Abstract |
発症48時間以内に当院へ入院した大動脈解離で当科外来へ通院中またはその後精査入院した慢性期大動脈解離44例について血中TGFβ1濃度を測定した.大動脈解離発症から6ヶ月以内の患者および他の炎症性疾患を合併している例は対象から除外した.総TGFβ1濃度は、平均1.56±0.43 ng/mlで、測定感度以下の症例はなかった.また、腹部大動脈瘤症例26例では平均1.67±0.83 ng/mlであった.対象例として高度動脈硬化を有する閉塞性動脈硬化症患者25例で同様の測定を行い、平均値1.33±0.44 ng/mlを得た.現時点では症例数が少ないこともあり各群間の有意差は認められていないが、大動脈瘤疾患で高い傾向を示した.さらに、大動脈解離症例および腹部大動脈瘤症例の中には、総TGFβ1濃度が高度に上昇している例(2.00 ng/ml以上)が15%程度に見られ、これらは対照群の閉塞性動脈硬化症例では見られないレベルであった.TGFβ1の上昇が、大動脈疾患の発症や進展に何らかの関与を持つことが示唆される.一方、活性型TGFβ1濃度の測定は、潜在型TGF-β1を酸性化あるいはアルカリ性化による活性化処理を行わず、実際に活性化しているTGF-β1のみを測定することで行ったが、検出感度0.03 ng/mL以上に数値が上昇している例は確認されなかった.今後、TGFβ1濃度が高度に上昇または低値である大動脈疾患患者について臨床経過やCT所見の長期的変化の特徴などと照合し、本値の意義を明らかにしていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象例の初年度の目標数50例に対して44例(達成率は88%)でTGFβ1濃度の測定がなされている.
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Strategy for Future Research Activity |
1)TGFβ1濃度が高度に上昇または低値である大動脈疾患患者について臨床経過やCT所見の長期的変化の特徴などを詳細に調査して照合する.2)大動脈解離症例の発症に関わる外的要因として、発症時身体状況と気象要因を調査し、それらとの関連性を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
各種血中濃度測定に関して予定症例数に満たない部分があり、症例登録および測定を次年度に繰り越したため. 1997年5月以降に、発症48時間以内に当院へ入院した大動脈解離症例で、研究用の血液採取に承諾が得られた患者を研究・解析対象とする.【検体採取】定期CT検査時または診察時に全血で約15mlの血液採取を順次行う.10mlは全血で、残り5mlは血清分離の後に-80℃で凍結保存する.血清中の活性型TGF-β1および炎症性サイトカイン、高感度CRP等の測定を行う.FBN1関連遺伝子の解析に用いるため5ml血清分離後に検体を凍結保存する.【環境因子】発症時の気象要因や身体活動性などの外的因子を詳細に調査する.【対照としての動脈硬化症例の選定】動脈硬化進展度が高い例と考えられる閉塞性動脈硬化症の患者を対照群とし、同様の方法で血漿中のTGF-β1等の測定を行う.
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