2014 Fiscal Year Research-status Report
皮膚筋炎に伴う難治性急速進行性間質性肺炎における抗CADM-140抗体の役割
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25461151
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高田 俊範 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (40361919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂上 拓郎 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00444159)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 皮膚筋炎 / 間質性肺炎 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
筋症状に乏しい皮膚筋炎(ADM)は、しばしば致死的な間質性肺炎(ILD)を合併する。抗CADM-140抗体は、ADMに特異的にみられ、感染防御に関与するMDA5を認識する。本研究では、抗CADM-140/MDA5抗体がADM-ILDの病態にどのように関わっているかを明らかにするため、本抗体陽性ADM-ILD症例の血清中サイトカインの発現を調べることを目的とした。 2014年4月までに、当科においてADM-ILDと診断し治療されたうち、治療前の血清が保存されていた症例を対象とした。診療録から後ろ向きに、検査成績、治療内容、予後などの臨床情報を抽出した。保存されていた血清検体を用いて、ELISA法で抗CADM-140/MDA5抗体価を、またLuminex(R) Systemにより39種のサイトカイン濃度を測定した。 症例は13例、平均年齢53歳、女性5名で、4例は死亡していた。全例、パルス療法を含むステロイド薬と、シクロスポリンを含む一剤以上の免疫抑制薬で治療されていた。治療前の検査成績では、死亡例と生存例との間に有意な差はみられなかった。死亡群の抗CADM-140/MDA5抗体価は、生存群と比べ有意に高値を示した。スピアマンの順位相関係数を用いて抗CADM-140/MDA5抗体価と各種サイトカイン/成長因子の濃度との関連を調べたところ、13種のサイトカイン/成長因子で中等度以上(r>0.4)の相関がみられ、特にCX3CL1との間には強い相関(r=0.8897)が観察された。また、抗CADM-140/MDA5抗体価の高い二症例について、中等度以上の相関がみられたサイトカイン/成長因子の経時変化を観察したところ、免疫抑制治療により段階的に低下しているサイトカイン/成長因子がみられる一方、治療にもかかわらず増加し続けているものもみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は、サイトカインパネル解析により病態との関連が疑われるいくつかのサイトカインが検出され、抗CADM-140/MDA5抗体価との相関も観察された。研究二年度は、保存血清のある全症例のサイトカインパネル解析を行い、抗CADM-140/MDA5抗体価との相関を統計学的に検出した。これにより、13種のサイトカイン/成長因子で中等度以上(r>0.4)の相関がみられ、特にCX3CL1との間には強い相関(r=0.8897)があることが明らかになった。また、二症例ではあるが、相関がみられたサイトカイン/成長因子の経時的変化を観察することにより、サイトカイン/成長因子によっては病態との関連がより一層疑われた。これらの結果が得られたことから、研究二年目の目的はほぼ達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究二年度までの研究により、抗CADM-140/MDA5抗体価と相関のあるサイトカイン/成長因子が検出され、この内のいくつかは特にILDの進行に関与している可能性が疑われた。 研究最終年度は、経過観察症例を増やして各種サイトカイン/成長因子とILDの進行との関連をさらに明らかにする。本来ADM-ILDはそれほど頻度の高い疾患ではないが、2014年5月以降にも当施設では3例経験しており、うち2例は治療が奏功せず死亡している。これらの症例の肺病変の進展にどのようなサイトカイン/成長因子が関与しているかを明らかにするため、保存血清を確認してサイトカインパネル解析を継続する。 また、ADMに伴う間質性肺疾患以外にも、従来の免疫抑制治療に抵抗性の間質性肺疾患が存在する。たとえば、IPFの急性増悪は様々な治療に抵抗し、致死率は80%に達する。ARDSは、有効な薬物治療がなく致死率が30-40%にのぼる。またRA、シェーグレン症候群に伴う間質性肺炎にも、ステロイド抵抗性で致死的となる例がある。これらの疾患は、臨床像(急速な進行、すりガラス影、治療抵抗性)から、ADMに伴う間質性肺疾患と共通の病態(=同じサイトカインが関与)である可能性がある。この仮説を検証するため、基礎疾患を問わず急速進行性間質性肺炎、ARDS、およびIPFの急性増悪症例を対象に、保存されている血清でサイトカイン発現を確認する。
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Causes of Carryover |
研究二年度は、抗CADM-140/MDA5抗体価と相関のあるサイトカイン/成長因子の検出と、検出されたサイトカイン/成長因子とILD進行の関与の推定が目標であった。サイトカインパネル解析と統計学的解析により、13種のサイトカイン/成長因子で中等度以上(r>0.4)の相関がみられ、特にCX3CL1との間には強い相関(r=0.8897)があることが明らかになった。また、二症例ではあるが、相関がみられたサイトカイン/成長因子の経時的変化を観察することにより、サイトカイン/成長因子によっては病態との関連がより一層疑われた。ここまでで研究二年度の目的はほぼ達成できたため、少額ではあるが最終年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は、二年度に検出されたサイトカイン/成長因子の変化が致死例でどのように変化しているか、および同様の病態が疑われる他の間質性肺疾患でも観察されるかどうかを確認する。このような症例を対象としたサイトカイン測定のため、二年度から繰り越した金額を使用する。
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Research Products
(5 results)