2013 Fiscal Year Research-status Report
ターゲットキャプチャーシークエンスによる臨床肺がんゲノム診断の確立
Project/Area Number |
25461179
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
松本 慎吾 独立行政法人国立がん研究センター, 早期・探索臨床研究センター, 医員 (10392341)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肺がん / 遺伝子診断 / ターゲットキャプチャー / シークエンス / 融合遺伝子 |
Research Abstract |
ゲノムバイオマーカーに基づく分子標的治療は、難治がんである肺がんの予後改善に寄与し得る。そこで、適切かつ効率的な肺がん遺伝子診断の確立を目的にターゲットキャプチャーシークエンス法を用いた新たな肺がん遺伝子診断システムの開発を試みている。初年度は、肺がん細胞株由来のゲノムDNA を用いてターゲットキャプチャーシークエンス法による遺伝子解析を行い、微量サンプルからの検出可能性を検討した。また、肺がんの臨床検体を用いて本方法による検出系を確立した。 ① 肺がん細胞株ゲノムDNA での解析:RET, ALK, ROS1 の各融合遺伝子をそれぞれ有する肺がん細胞株(LC2/ad, H2228, HCC78)からゲノムDNA を抽出し、50-100ng のゲノムDNA を用いて、ターゲットキャプチャーパネルにより選択ゲノムDNA 領域(1.8Mb)を濃縮した。次世代シークエンサーで濃縮ゲノムDNA の塩基配列解読を行い、既知の遺伝子異常が検出可能であることを確認した。また、細胞株由来ゲノムDNA を健常人由来ゲノムDNA で希釈し、本方法での検出感度を検討したところ変異DNA:5%で検出可能であることがわかった。 ② 既知のドライバー変異陽性肺がん症例での解析:あらかじめ既知の融合遺伝子を有する肺がん症例15例の臨床サンプルを本方法で解析したところ、それぞれの融合遺伝子を正確に検出することが可能であった。 ③ 遺伝子情報が未知の肺がん症例での解:遺伝子情報が未知の肺がん症例40例で解析したところ、ROS1融合遺伝子、KRAS変異、ERBB2挿入変異を検出することが可能であった。 本方法は、肺がんで起こる遺伝子異常の正確な検出が可能であり、今後、さらなる精度向上により有用な肺がん遺伝子診断システムの確立が可能であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画通りに研究が遂行できている。 研究計画書では進行肺がんのホルマリン固定パラフィン包埋標本からのDNAを解析する予定にしていたが、現時点ではまだできていない。進行肺がんの生検試料が少量であり、DNA解析にまわせないのがその理由である。代わりに、肺がん手術標本からの微量DNAから解析することで、ホルマリン固定パラフィン包埋標本からの検出可能性について検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り研究を遂行する予定である。サンプル量の限界のため、当院における進行肺がんの臨床検体を用いた解析が不可能な場合、当院が事務局として行っている全国規模の肺がん遺伝子スクリーニングシステム(LC-SCRUM-Japan)で収集、解析された残余試料を用いて解析する予定である。本システムでは、その研究計画書の中に新たな遺伝子診断法の開発のために残余試料の解析を行う可能性が明文化されており、そのことについても患者同意の是非が確認されている。新たな研究プロトコールを作成し、所定の倫理審査に申請、承認を得た後、上記システムで患者同意の得られた残余試料のみを用いて本研究を継続することとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ターゲットキャプチャーシークエンスを行う過程で、カスタムキャプチャーパネルの変更が必要となったが、今年度の残額では購入できないため、次年度使用額として次年度の予算に計上することにした。 新たな遺伝子異常を解析する必要が生じたため、カスタムキャプチャーパネルの改訂に使用する予定である。
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