2014 Fiscal Year Research-status Report
メカノセンサー分子同定に基づく呼吸器疾患の病態解明
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25461188
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 理 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (60378073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 好規 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20270986)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | メカニカルストレス / 気道平滑筋 / ATP / 気管支喘息 / 肺線維芽細胞 / リモデリング / カルシウムイオン / 肺線維症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、メカニカルストレスが呼吸器系細胞の機能を制御する機構を明らかにし、メカニカルストレスの影響により引き起こされる呼吸器疾患の病態解明につなげることである。 前年度の研究内容を継続し、更に発展させることを目的とした。 培養ヒト気道平滑筋細胞に関する研究においては、伸展刺激によって細胞からATPが放出され、周囲に拡散する様子をリアルタイムイメージング(動画撮影)することに成功した。その継時変化を解析した結果、細胞からのATP放出は一過性であること、伸展強度依存性に放出が増強することが示された。 また、気道収縮により生じる内因性メカニカルストレスが、細胞外基質と相互作用を来し、気道平滑筋細胞のTGFβ受容体を活性化し、これが気道リモデリングにつながる刺激となりうるという学説を発表した。 培養ヒト肺線維芽細胞を用いた実験において、細胞伸展刺激が細胞内へのカルシウムイオン流入を誘導することを見出した。このカルシウムイオン流入は種々のカルシウムチャネル阻害剤では抑制されず、伸展活性型カルシウムチャネルの候補分子であるTRPV4やPiezo1の阻害剤、siRNA導入によっても抑制されなかった。これらの結果から、肺線維芽細胞に特異的な流入経路もしくは複合的なカルシウムイオン流入経路の存在が示唆された。 メカニカルストレスは気道平滑筋細胞や肺線維芽細胞を活性化させることから、気道や肺リモデリングに関して促進的に働くと示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)気道平滑筋細胞におけるATP放出に関する研究を行った。細胞伸展刺激によってATPが放出することを実証した。また、このATP放出機序の一端としてエクソサイト―シスが関与することを解明することができた。 (2)肺線維芽細胞の活性化におけるメカニカルストレスの影響に関する研究を行った。線維芽細胞には細胞伸展によって誘導されるカルシウムイオン流入経路が存在することを可視化することに成功した。また、繰り返しの細胞伸展刺激がATP放出を誘導することを実証することができた。一方、伸展刺激によるATP放出とカルシウムイオン流入には相互関係は見られなかった。 以上(1)(2)の研究成果から、メカニカルストレスが細胞活性化を介しての喘息や肺線維化など呼吸器病態形成に関与する可能性が示唆される。現在のところ、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、メカニカルストレスが肺線維芽細胞を活性化させ、線維化につながる機序について追究する。 気道平滑筋細胞がATPを放出する分子メカニズムを解明する。特に、細胞がメカニカルストレスを感知する機構「メカノセンサー」の同定を目標とする。
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Research Products
(8 results)