2014 Fiscal Year Research-status Report
気道平滑筋の遊走能と収縮能の制御に基づく喘息分子標的療法
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25461201
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
久米 裕昭 近畿大学, 医学部, 准教授 (50303631)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 気管支喘息 / β2アドレナリン受容体耐性化 / 気道過敏性亢進 / 気道平滑筋 / Rho-kinase / Ca2+チャネル / 細胞内Ca2+ 動態 / 細胞内Ca2+ 感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
モルモット気管平滑筋の切片を作製し、カルシウム蛍光色素である fura-2 で処理した後に浴槽内に固定して等尺性張力と細胞内 Ca2+ 濃度の指標である F340/F380 を同時に測定した。ムスカリン受容体刺激薬(メサコリン)収縮とそれに対する β2 アドレナリン受容体刺激薬(イソプロテレノール、ISO)の弛緩効果を記録し、同時に F340/F380 の変化を調べ、平滑筋の機械的な反応に対する細胞内 Ca2+ 動態、Ca2+ 感受性との関連性を分析した。 気道過敏性の亢進はメサコリンに対する反応性の亢進として現わされる。抗原刺激でマスト細胞から放出されるスフィンゴシン1リン酸、あるいは、炎症反応で傷害された上皮から放出される ATP を気管平滑筋に 15 分間曝露し洗い流した後、メサコリン収縮は約 30% 増加したが、細胞内 Ca2+ 濃度は増加しなかった。この結果は、気道過敏性の亢進には細胞内 Ca2+ に対する感受性の亢進が関与することを示している。 メサコリン収縮を ISO は著明に阻害し、抑制率は約 90% であった。喘息の炎症で生成されるリゾフォスファチジルコリン、あるいは活性化したマスト細胞から放出される組織傷害蛋白であるトリプターゼを 15 分間曝露した後では、ISO の弛緩作用は著明に低下し、抑制率は約 55% に減少したが、細胞内 Ca2+ 濃度は影響を受けなかった。一方、成長因子(TGF1, PEGF)を 15 分間曝露した後、ISO の弛緩作用は著明に低下したが、細胞内 Ca2+ 濃度は有意に上昇した。2 アドレナリン受容体の耐性化には、細胞内 Ca2+ 動態と、Ca2+ 感受性の両者が関与することを示している。 喘息の病態にかかわる収縮性における表現型の変化は細胞内 Ca2+ 動態、Ca2+ 感受性により影響を受け治療の標的となる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞内Ca2+濃度の推移を検索するために用いた蛍光色素であるFura-2のローディングに不具合が生じていたためその調整に長い時間を費やした。しかし、ようやく実験が軌道に乗るようになり順調に成果が得られるようになった。しかし、これにより今年度に実施する予定であった、培養ヒト気管平滑筋細胞を用いた細胞骨格、細胞増殖、細胞遊走の研究は来年度から開始する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
モルモット気管平滑筋にFura-2を負荷し、等尺性張力と細胞内Ca2+濃度の推移を同時測定し分析する実験は順調に進められるようになった。 今後は、培養ヒト気管支平滑筋細胞を用いて収縮性における表現型を変化させる可能性があるストレスファイバー形成を調べ、気道リモデリングの発生の機序およびその回避について研究する。喘息の基本病態である好酸球性気道炎症に関与する化学物質を曝露した後の細胞骨格再重合に与える影響、その機序について検索し、気道リモデリングの発症を明らかにする。そして、ステロイド薬、β2アドレナリン受容体刺激薬などの治療薬によるストレスファイバー形成の抑制とその機序について検索する。これらに基づいて、この疾患の管理・治療に重要な役割をはたして気道リモデリングの治療法を探求する。さらに、気道平滑筋細胞の増殖、遊走能の変化の面からも気道リモデリングの成立機序、回避について研究を進める。
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Causes of Carryover |
Fura-2を用いた実験は、測定装置、実験試薬などは以前に準備されていたものを用いておこなったのでそれほど多くの支出を必要としなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
培養ヒト気管支平滑筋を用いた実験にかかわる諸費用に支出が見込まれる。細胞の購入、継代のための試薬、蛍光デジタルシステム施行にかかわる備品、および細胞増殖、細胞遊走検索のための消耗品、などを準備して研究を進める。
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Research Products
(9 results)