2014 Fiscal Year Research-status Report
一酸化窒素合成酵素完全欠損マウスを用いた下気道線毛運動機序の解明
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25461203
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
川波 由紀子 産業医科大学, 医学部, 助教 (60369072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城戸 貴志 産業医科大学, 医学部, 助教 (30389465)
矢寺 和博 産業医科大学, 医学部, 准教授 (40341515)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 線毛 / NO / NOS / 一酸化窒素 / 原発性線毛運動機能不全症 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性下気道疾患における線毛運動異常については、病態は不明な点が多く、また治療法は確立されていない。線毛運動における一酸化窒素(nitric oxide; NO)、NO合成酵素(NO synthase; NOS)の役割も不明な点が多いが、これまでの報告からは重要な役割を果たしている可能性が高い事が示唆されている。本研究は、研究協力者の筒井らが世界で初めて作成したNOS 完全欠損マウスと3種類(n, i, e)のNOSシングルノックアウトマウスを用い、線毛運動能の評価とNO及びNOSを介した線毛運動機序の解明を行うことにより、原発性線毛運動機能不全症(Primary ciliary dyskinesia; PCD)をはじめとした慢性下気道疾患における線毛運動異常の病態解明と治療戦略を検討する事を目的とする。 我々は、8-12週齢の雄のC57BL6Jマウス(野生型)と各NOSのシングルノックアウトマウス、NOS完全欠損マウスを実験に使用し、まずは非曝露の状態で評価し、次にリポ多糖(LPS)腹腔内投与前および投与24時間後に実験を行った。気管の線毛運動振幅数/秒(CBF)を顕微鏡下に高速ビデオカメラを用いて、線毛構造を電子顕微鏡を用いて評価した。 非曝露の状態では、CBFは野生型マウスと、各NOSシングルノックアウトマウス、NOS完全欠損マウスの間で差は認めなかった。しかし、LPS投与24時間後には、CBFは野生型においれ有意に低下した。さらに重要なことに、その低下の程度は、野生型マウスに比しNOS完全欠損マウスではさらに有意に大きかった。NO donorを投与すると、LPS腹腔内投与後のNOS完全欠損マウスにおける線毛運動機能低下は改善した。各NOSシングルノックアウトと野生型のマウスではLPS曝露による有意な差はCBFにおいて見られなかった。電子顕微鏡で評価した線毛構造異常は、野生型とNOS完全欠損マウスで明らかな差は認めなかった。 以上より、NO/NOSsが線毛機能において保護的な役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
NOSシングルノックアウトマウス及びNO完全欠損マウスが感染を起こしたことより、約半年間程度マウスの産生が中止され、約半年間程度の研究の遅れを生じている。また、マウスの出産状況もやや不安定な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のようにLPSの腹腔内投与による各NOSシングルノックアウトマウス、NOS完全欠損マウスへのCBFの評価は終了した。 次に行うべきことの一つはNOやNOS、cGMPなどを測定して、NOを介した線毛運動の機序を評価することである。 また、腹腔内投与のみでなく、気管内投与の影響を検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
マウスが感染を起こしたことにより、約半年間の研究中断を余儀なくされ、現在約半年間の研究の遅れが生じていると考えている。また、マウスの出産も不安定な状態である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の様に約半年間の研究の遅れはあるものの、線毛運動の測定等は順調に進んでいる。今後は、NOや各種NOS、cGMP、cAMPの測定等を行い、NO/NOSを介した線毛運動の機序の解明を行いたいと考えている。さらに、現在はLPSの腹腔内モデルを用いて検討しているが、LPSや粉じん、各種細菌等の気管内注入モデルでも検討を行いたいと考えている。
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Research Products
(2 results)