2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒト腎臓由来iPS細胞の細胞記憶を利用した腎臓構成細胞への特異的分化誘導法の確立
Project/Area Number |
25461208
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高瀬 敦 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60265684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菱川 慶一 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (50255460)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腎系統特異的分化誘導法 / 腎臓由来iPS細胞 / エピジェネティックス / HDAC阻害剤 / iPS細胞移植 / 腎臓再生 / 包括的DNAメチル化解析 |
Research Abstract |
申請者らは独自に樹立した3種類のヒト腎上皮細胞由来、近位尿細管細胞由来、メサンギウム細胞由来のiPS細胞が正しくiPS化(初期化)されているかを検討した。ALP染色において、いずれの3種類の腎臓由来iPS細胞は線維芽由来iPS細胞と比較して大きな相違はなく染色されていた。しかし、未分化マーカー(Oct3/4、Nanog)の発現では最も腎上皮細胞由来iPS細胞が線維芽由来iPS細胞と近似した未分化能を有していた。 その腎上皮細胞由来iPS細胞をSCIDマウス腹膜下へ細胞移植したところ、線維芽由来iPS細胞同様にテラトーマの形成を認め、初期化を検証できた。 未分化状態における腎上皮細胞由来iPS細胞および線維芽細胞由来iPS細胞において、その包括的DNAメチル化解析で比較検討を行った結果、相違を認めた。腎臓特異的なメチル化プロファイルの解析を施行中である。 各iPS細胞の分化誘導研究において、誘導剤としてエピジェネティックス制御薬、特異的腎臓誘導刺激剤を使用した。エピジェネティックス制御薬は分化誘導を促進するHDAC阻害剤(Trichostatin A)を用い、また特異的腎臓誘導刺激剤としてActivin A、CHIR99021、BMP7などを用いて、線維芽由来iPS細胞と腎上皮細胞由来iPS細胞の誘導を試みた。両分化系iPS細胞はいずれも腎臓発生マーカー(WT-1、Pax-2、Sall-1)や腎臓分化マーカー(AQP-1、Nephrin)の発現増加を認め、誘導期間によっては腎上皮細胞由来iPS細胞が優位に腎臓マーカーを高発現しているものがあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
樹立した3種類のヒト腎上皮細胞由来、近位尿細管細胞由来、メサンギウム細胞由来のiPS細胞において未分化マーカーの検証をしたところ、正しくiPS化(初期化)されてないものもあり、iPS細胞の樹立を再度行い、時間を要した。 現状において最も適した腎上皮細胞由来iPS細胞を用いて特異的腎臓誘導を試みたが、誘導剤の量や誘導時期、誘導期間などにより分化に差異を認めた。未だ腎系統特異的分化に最適な誘導法を検討中であり時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト腎上皮細胞由来iPS細胞を使った腎系統特異的分化誘導法を確立するため、使用している誘導刺激剤での最適条件を検討する。最適条件の評価法としては腎臓発生・分化マーカーなどの発現をwestern blot、real time PCRなどで検出、線維芽由来iPS細胞と比較しながら時間経過と共に最適化条件を決定する。決定した最適化条件下においてメチル化プロファイルを未分化状態と比較解析することにより、腎系統への分化を規定する遺伝子群を同定する。同定した遺伝子群をsiRNAやレトロウイルスシステムで強制的にON、OFFすることにより、ヒト腎上皮細胞由来iPS細胞の腎系統へ分化誘導法の機序を解明する。 次にin vivoへの応用として、処理した分化系iPS細胞を腹膜皮下、腎被膜下へ移植し、組織学的に腎系統への分化が促進されるかを評価する。in vitro内での分化誘導と違い、in vivo応用での誘導剤の量や誘導時期、誘導期間などの最適条件を検討する必要がある。最適条件は各分化系iPS細胞移植により得られた腫瘤について、組織学的な評価(病理組織、免疫染色)および腫瘤から抽出した蛋白、RNAサンプルを用いて、腎臓発生・分化マーカーの発現をwestern blot、real time PCRなどで検出する。線維芽由来iPS細胞と比較して最適化条件を決定する。更により腎臓再生に向けて、細胞移植した組織に対して誘導剤の追加投与なども検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
独自で樹立した腎臓由来iPS細胞の未分化能の確認にて、一部のiPS細胞で未分化能が弱く、Reprogrammingがうまくいっていない細胞があった。再度いくつかのiPS細胞を樹立したので研究が停滞した。それに伴い、分化誘導研究も遅れ、予定していた特異的腎臓誘導刺激剤、HDAC阻害剤などの高価な試薬購入が少なくすみ、当該年度の助成金が残った。 次年度は分化誘導研究が主要な研究となり、特異的腎臓誘導刺激剤、HDAC阻害剤などの高価な試薬を多く使用しなくてはならない。また、in vivoへの応用としてSCIDマウスへの細胞移植、組織的な腎臓再生への分化誘導研究も行うため、研究費は多く掛かり、予定していた研究費と繰り越した研究費にて対応していく予定である。
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