2014 Fiscal Year Research-status Report
腹膜線維化における酸化ストレス依存的Wntシグナル伝達制御機構の解明
Project/Area Number |
25461263
|
Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
佐々木 環 川崎医科大学, 医学部, 教授 (30187124)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 壮八 川崎医科大学, 医学部, 講師 (00319948)
春名 克祐 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40341094)
佐藤 稔 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70449891)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 腹膜線維化 / 酸化ストレス / Wnt/β-cateninシグナル / klotho / CTGF / 中皮細胞EMT |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】腹膜中皮の線維化は,腹膜機能低下の規定因子であり,中皮細胞形質変換 (EMT) は,線維化初期過程において重要な役割を果たしている。EMT及び組織線維化にはWntシグナル活性化が関与することが示されている。主として腎遠位尿細管で産生される抗老化蛋白klothoはWnt活性抑制作用を有することから,「Klotho蛋白は腹膜線維化過程において,Wntシグナル系抑制によりEMTを抑制し,線維化抑制に働き,腹膜保護作用を発揮する」との仮説を立て検証した。【方法】Klotho過剰発現マウス(Klotho-Tg)及びWnt制御下にβ-galactosidase遺伝子を発現するレポーターマウス(Wnt-LacZ)を用いた。長期留置ポートを皮下に埋設し,連日高糖濃度の透析液を注入し,腹膜線維化を惹起するモデルを作成した。線維化過程でのWntシグナル系活性化とKlotho蛋白の腹膜線維化に対する効果を検討した。【結果】注入28日後に再生腹膜中皮にWnt活性化(LacZ染色)と中皮細胞EMT(α-SMA発現増加)を認めた。さらに癒着を伴う腹膜線維化の進行及び腹膜組織におけるCTGF,fibronectin等の遺伝子発現増加を認めた。一方Klotho-Tg腹膜線維化モデルでは,腹膜組織におけるWnt活性化が抑制され,EMTの進行,線維化が改善された。【結論】腹膜線維化にはWntシグナル活性化が関与する。Klotho蛋白はWntシグナル活性化を抑制し,中皮細胞形質変換,線維化を抑制し腹膜保護作用を示す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概ね順調に計画を遂行している。動物モデルの観察期間の関係により,in vitro実験がやや遅れているが,挽回可能なレベルと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
<In vitro実験> ラット及びヒト腹膜中皮細胞を使用し,活性酸素存在下と非存在下において,Wnt刺激を行い遺伝子発現の変化をマイクロアレイにて網羅的に解析する。特に細胞周期関連遺伝子のうちG2/M期への誘導遺伝子の発現を検討する。また,G2/M期へ誘導された細胞において,線維形成性サイトカインである間葉系細胞増殖促進因子のトランスフォーミング増殖因子beta (TGF-β),結合組織成長因子 (CTGF) の発現を検討する。さらに,高糖濃度刺激においてWntの下流に存在するβ-catenin及びβ-catenin標的遺伝子の発現量を蛋白レベル,mRNAレベルで検討する。 <In vivo実験> Klotho過剰発現マウス(Klotho-Tg)及びWnt制御下にβ-galactosidase遺伝子を発現するレポーターマウス(Wnt-LacZ)を用いて,長期留置ポートを皮下に埋設し,連日高糖濃度の透析液を注入し,腹膜線維化を惹起するモデルを作成し,腹膜線維化進展には,Wnt/β-cateninシグナル活性化が関与している可能性を証明した。現在,Wnt阻害薬(ICG001,pyrvinium pamoate)を使用して,腹膜線維化の抑制実験を検討中である。さらに酸化ストレスの亢進する内皮型一酸化窒素産生酵素 (eNOS) 欠損マウス,NF-E2-related factor 2 (Nrf2) 欠損マウスを用い,これまでの実験結果を参考に, Wntシグナル伝達系,G2/M期細胞周期調節の変化と腹膜線維化の関連について検討する。
|
Causes of Carryover |
in vitro解析,特にマイクロアレイを使用した実験などの進行状況が,影響したと推察している。概ね計画に沿って実験を進めている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度額と合わせて,in vitro実験費用として使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)