2014 Fiscal Year Research-status Report
人工制限酵素による内在性TDP-43遺伝子改変と筋萎縮性側索硬化症モデルへの応用
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25461271
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
佐藤 俊哉 北里大学, 医学部, 教授 (90359703)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ALS / TDP-43 / 疾患モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度までにTDP-43 C末領域の部分欠損マウス8系統の樹立と基本的特性の確認を終了したが、平成26年度に表現型の詳細を確認していたところ、予期し得なかった興味深い結果が得られた。前回までの結果では、TDP-43 C末領域の約半分程度を欠損させると、TDP-43の機能は完全に失われると予測されていたが、C末領域の後半部分の欠損(蛋白間相互作用に重要なQ/N領域の半分を欠損)、且つ変異に伴う余剰アミノ酸の付加が最小(本例では7アミノ酸)となる場合は、部分的な機能喪失を示すことが明らかとなった。この結果は、ホモ欠損個体が着床期ではなく出生直前まで生存すること、さらに脳におけるTbc1d1 mRNA発現の低下を認めることから確認された。この変異はZM87ヘテロ個体に認められたもので、8週齢の脳では殆ど変異蛋白が確認できなかったのだが、胎生期の脳では、野生型に比して少ないものの比較的明瞭なバンドして変異蛋白が確認できた。この理由は明確ではないが、変異蛋白の品質管理の受け方が、週齢により異なっている可能性がある。また本結果は、C末領域の変異の程度により機能喪失のレベルが変化することを示す点で重要である。ZM87ヘテロ個体では凝集体形成は認められなかったが、変異蛋白の機能喪失によりTDP-43 mRNAが上昇することは確認済みである。まだ推測の域は脱しないが、変異の入れ方を変えることにより、mRNAの上昇とともに、凝集体形成を示すモデルが作成できる可能性がある。このような可能性を追求するとともに、TDP-43 C末領域の機能マッピングをおこなうため、本年度はCRISPR/Casシステムの導入も進めた。TDP-43 C末領域を標的として、マウス受精卵にマイクロインジェクションおこない、胚盤胞で解析したところ、約40%の頻度で改変個体が得られることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TDP-43 C末領域の部分欠損マウス8系統を樹立し、全系統に関して、ホモ個体の生存性と死亡時期、変異蛋白の局在性、オートレギュレーション機構との関連性の解析を終了することができ、当初の予定までは完了することができた。しかし平成26年11月、新潟大学より北里大学に異動することが決まり、個体での維持管理を一旦中止せざるを得なくなったため、論文投稿を含めて今後の研究に関しては、遅れが生じる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
異動先の北里大学にて、動物実験を開始する準備を進めるとともに、新しい解析系として質量分析技術の導入を開始する。これはTDP-43 C末領域の部分欠損が、機能の部分喪失につながることが判明したためである。TDP-43は多くの機能を有しているが、それはC末領域と相互作用する蛋白の組み合わせで決まる可能性があり、結合蛋白の網羅的解析からは,核内でのスプライシング,細胞質内での翻訳との強い関連性が指摘されている(Freibaum et al. J Proteome Res 2010 9: 1104-20)。Tbc1d1 mRNA量が、TDP-43の残存活性を示すことは確認できたが、その分子機構の詳細を調べるためには、質量分析技術の導入により結合蛋白レベルでの変化を同定する必要があると考えている。 また新しい遺伝子改変技術であるCRISPR/Casシステムに関しては、極めて効率が高い技術であることが確認されたため、動物実験の準備が整い次第、早急にマイクロインジェクションを開始する予定である。
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Causes of Carryover |
平成25年度に動物実験施設の大規模改修工事、平成26年度には北里大学への異動があり、動物個体での維持管理が難しいことから、凍結サンプルを用いた生化学的解析を中心に進めたため、研究費の使用が少なくなった。また今年度に購入を予定していたインジェクション装置(フェムトジェット、927千円)に関しては、北里大学に導入済みであったため、購入を取りやめた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新潟大学でおこなっていた研究を継続し、再現性を確保するため、前任地で使用していたリアルタイムPCR装置(Takara、1,850千円)を導入する予定である。また質量分析技術の導入のため、新しく研究分担者を追加する(平成27年4月に申請、600千円)。それ以外では、遺伝子改変マウスの作成および維持管理に必須な費用(体外受精、胚培養、マウス飼育費)として計200千円。遺伝子改変マウスの同定に必要な費用(DNA抽出、PCR関連、ミスマッチ変異を同定するCEL-1解析、ダイレクトシークエンス)として計150千円。日本神経学会学術大会、日本分子生物学会年会への参加費として100千円。論文投稿に必要な費用として200千円。残額は、病理および生化学的解析に必要な予算に充当する。
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Research Products
(5 results)