2014 Fiscal Year Research-status Report
HTLV-1関連脊髄症で同定した制御性T細胞由来異常T細胞の病原性に関する研究
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25461293
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
佐藤 知雄 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30387063)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | HTLV-1 / Tax / 制御性T細胞 / HTLV-1関連脊髄症 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、免疫疾患の病態形成において「制御性T細胞(Treg)の可塑性」の重要性が注目されている。これは一部のTregが置かれた環境によりFoxp3発現や抑制機能を失い,他のヘルパーT細胞へ "分化転換"することを意味するが、この「Tregの可塑性」が生じるメカニズムについては、いまだ不明な点が多い。HTLV-1関連脊髄症(HAM)は、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)感染者の一部に発症する脊髄の慢性炎症性疾患であるが、最近、我々はHAM患者においてHTLV-1の機能分子Taxの作用によってTregが可塑的に変化したTh1様細胞が脊髄病変部に異常集積していることを発見した。そこで本研究では、Foxp3を発現するTregだけにHTLV-1 Taxを発現させた“Treg特異的Tax発現マウス”を作製し、HAM患者において見出されたTreg由来異常T細胞の発生機構や病原性について個体レベルで検討することを目的とした。 昨年度、作製したマウスのうち、すべてのFoxp3発現細胞でTaxを発現するマウスは生後6週以内に死亡すること、また一部のFoxp3発現細胞でTaxを発現するマウスは増悪と寛解を繰り返す尾の潰瘍や耳介の皮膚炎といった慢性炎症像を呈することを報告した。今年度は、この後者のマウスを用いて免疫学的解析および病理学的解析を主に実施した。その結果、“Treg特異的Tax発現マウス”の脾細胞を培養すると、コントロールマウスでは認められない炎症性サイトカインの産生亢進が認められた。また病理学的には、潰瘍部の非特異的な炎症像の他に、神経周囲の浮腫や線維化が認められた。以上のことから、本来Tregとして免疫を制御する働きを有するFoxp3発現細胞がTaxを発現することによって、個体レベルで炎症病態を惹起するような病原性が発揮されることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来Tregとして免疫を制御する働きを有するFoxp3発現細胞がTaxを発現することによって、細胞レベルの異常のみならず、個体レベルで病原性を発揮することが明らかとなった。また、本マウスにEAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)モデルを適用して、我々の想定しているHAMの病態モデル(IFNγ-CXCL10-CXCR3 positive feedback loop)をin vivoで再現する予備実験を実施し、方向性を決めることが出来た。一方で、予定していた“Treg特異的Tax発現マウス”のTreg細胞の評価がまだ実施できていないため、現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は次の2つの方向性で本研究を進めることとする。 1)“Treg特異的Tax発現マウス”におけるTreg細胞の評価 当該マウスのTregがIFN-γを産生するような炎症性の異常T細胞に変化しているか、またTregとしての形質を保持しているか等の評価を実施する。当該マウスのFoxp3発現細胞はTax遺伝子を発現すると同時にRFP(赤色蛍光タンパク)も発現する。そのため、当初の予定では「Treg由来Tax発現T細胞」の表現型を明らかにするために、RFP陽性細胞を単離する予定であったが、予想に反して脾細胞中にRFP陽性細胞を認めなかった。したがって、その対応策として、RFP陽性細胞の代わりにCD4+CD25+ cellsを単離し、その表現型を解析するという計画へ変更する。 2)“Treg特異的Tax発現マウス”へEAEモデルの適用 当該マウスにEAEを誘導し、Treg由来の異常T細胞を脊髄へ侵入させることによって、我々が想定するHAMの病態モデルがin vivoで再現できるか否かを検証する。評価はEAEの臨床症状スコアの経時的変化、マウス脊髄の病理組織検査および免疫組織染色によって行う。試験的に、“Treg特異的Tax発現マウス”とコントロールマウスを用いてEAEモデル作製を実施した。その結果、コントロールマウスがEAEを発症した半分の量の抗原刺激であるにも関わらずTax発現マウスは5日後に死亡した。そのため、まず“Treg特異的Tax発現マウス”が死亡しないEAEモデル作製条件を決定し、同じ条件で刺激したコントロールマウスと上記の評価法を用いて比較する方針とする。
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[Journal Article] The E3 ligase synoviolin controls body weight and mitochondrial biogenesis through negative regulation of PGC-1β.2015
Author(s)
Fujita H, Yagishita N, Aratani S, Saito-Fujita T, Morota S, Yamano Y, Hansson MJ, Inazu M, Kokuba H, Sudo K, Sato E, Kawahara KI, Nakajima F, Hasegawa D, Higuchi I, Sato T, Araya N, Usui C, Nishioka K, Nakatani Y, Maruyama I, Usui M, Hara N, Uchino H, Elmer E, Nishioka K, Nakajima T.
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Journal Title
EMBO J
Volume: 34(8)
Pages: 1042-1055
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Mogamulizumab, an anti-CCR4 antibody, targets human T-lymphotropic virus type 1-infected CD8+ and CD4+ T cells to treat associated myelopathy.2015
Author(s)
Yamauchi J, Coler-Reilly A, Sato T, Araya N, Yagishita N, Ando H, Kunitomo Y, Takahashi K, Tanaka Y, Shibagaki Y, Nishioka K, Nakajima T, Hasegawa Y, Utsunomiya A, Kimura K, Yamano Y.
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Journal Title
J Infect Dis
Volume: 211(2)
Pages: 238-248
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] HLVL-1 induces a Th1-like state in CD4+CCR4+ T cells.2014
Author(s)
Araya N, Sato T, Ando H, Tomaru U, Yoshida M, Coler-Reilly A, Yagishita N, Yamauchi J, Hasegawa A, Kannagi M, Hasegawa Y, Takahashi K, Kunitomo Y, Tanaka Y, Nakajima T, Nishioka K, Utsunomiya A, Jacobson S, Yamano Y.
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Journal Title
J Clin Invest
Volume: 124(8)
Pages: 3431-3442
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] HTLV-1によるHTLV-1関連脊髄症(HAM)病原性T細胞の発生機構の解析.2014
Author(s)
新谷奈津美, 佐藤知雄, 安藤仁, 外丸詩野, Ariella Coler-Reilly, 八木下尚子, 山内淳司, 長谷川温彦, 神奈木真理, 田中勇悦, 宇都宮與, 山野嘉久.
Organizer
第1回日本HTLV-1学会学術集会
Place of Presentation
東京都(港区)〔東京大学医科学研究所〕
Year and Date
2014-08-22 – 2014-08-24
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[Presentation] HTLV-1関連脊髄症(HAM)患者登録システム「HAMねっと」の患者満足度調査.2014
Author(s)
八木下尚子, 有福厚孝, 菊池崇之, 木村未祐奈, 佐藤健太郎, 石川美穂, 鈴木弘子, 小池美佳子, 齊藤祐美, 新谷奈津美, 佐藤知雄, 木村美也子, 高田礼子, 山野嘉久.
Organizer
第1回日本HTLV-1学会学術集会
Place of Presentation
東京都(港区)〔東京大学医科学研究所〕
Year and Date
2014-08-22 – 2014-08-24
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