2014 Fiscal Year Research-status Report
多発性硬化症の寛解維持を担う多能的制御性T細胞の誘導と自己免疫ワクチンへの適応
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25461301
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
林 幼偉 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所免疫研究部, 併任研究員 (80392439)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 多発性硬化症 / 制御性T細胞 / 脳炎惹起性ペプチド / ペプチドワクチン / 抗原特異性 / 寛解維持 / ペプチド優位性 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経症状の再発・寛解を特徴とする多発性硬化症(MS)の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)において長期の寛解維持には、CD4+CD25+制御性T細胞(Treg)の中でCD69CD103共陽性群(=DP-Treg)が高値で維持されること、脳炎惹起性ペプチドのヒエラルキーの中で最も優位性が高いペプチド(=最優位ペプチド)で感作することが重要であるということをこれまでの研究で明らかにした。 本研究では、DP-Tregが炎症性T細胞の惹起以降に増加し維持されるという誘導機構と、DP-Tregが炎症性T細胞と性質を共有するhybrid Tregでありながら安定して適材適所で制御能を発揮できるという作用機構とを解明すること、誘導条件の解析を通じて自己免疫ワクチンの適正化の可能性を探求することを目標とした。すなわち(A) DP-Tregの性質を規定する要因と機構;(B) DP-Tregの誘導を規定する因子と機構;(C) ペプチドワクチンへの応用の3つの観点から解明することとした。 本年度は昨年度に感作ペプチド特異的MHC class II dextramerの入手により抗原特異性の評価が可能になったことから、(A)に関連して、最優位ペプチドの感作では抗原特異性の高い細胞が惹起できその多くをDP-Tregが占めること、さらにEAEの寛解維持では炎症性細胞から制御性細胞への抗原特異性のシフトが維持されることが判明した。(C)に関連して、ペプチド寛容では抗原特異的な抑制効果しか得られないが最優位ペプチド感作ではEAEが発症しない条件であってもDP-Tregの誘導により抗原非特異的な抑制効果が得られること、さらにその抑制効果は感作ペプチドのN末端とC末端の配列の長さに依存することを確認した。(B)に関連してmicroarrayの解析によりいくつかの遺伝子の関与を突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では想定していなかったペプチド特異的MHC class II dextramerの入手は可能になったことから抗原特異性の評価と検証を目的とした追加実験を経時的に行うことにしたため、時間的にも費用的にも他の実験に充てる余裕がなく予定より遅れてはいるが、今年度に施行する予定だった実験の一部は前倒しで施行しており、大幅な遅れではない。 ただし抗原特異性を介することで感作ペプチドの優位性とDP-Treg誘導能との相関がより明確になり、さらにEAEの臨床経過に関連して炎症性細胞と制御性細胞の間で抗原特異性のシフトが生じることが判明しており、当初の計画に比べ一貫性のある質の高いデータになったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
DP-Tregが他のサブセットに比して炎症性T細胞と性質を共有するhybrid Tregを最も多く含みながら中枢神経系で安定した抑制作用を発揮できるという機構に関して、抗原特異性の高さを介した継続的な刺激が関与する可能性が考えられる。刺激条件の違いによるTregの安定性を比較する実験を追加する。 解析途中ではあるが、Microarrayの結果からはTregの組織特異的な誘導に関与する可能性のある遺伝子が同定できており、この解析により組織特異的ペプチドワクチンの条件を探求したい。 先送りになった実験については費用の問題と合わせて優先順位を設け、できるだけ研究の本筋に重点をおいて施行することにする。
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Causes of Carryover |
残額が試薬等の物品購入額に満たないため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の繰り越して試薬等の購入に充てる
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Research Products
(3 results)