2014 Fiscal Year Research-status Report
自己貪食空胞性ミオパチーにおけるオートファジー分子機構の病態関与の解明
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25461323
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
杉江 和馬 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (60347549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西野 一三 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, その他部局等, その他 (00332388)
上野 聡 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40184949)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オートファジー / ライソゾーム / Danon病 / 自己貪食空胞 / 自己貪食空胞性ミオパチー |
Outline of Annual Research Achievements |
「自己貪食空胞性ミオパチー(AVM)」は病理学的に極めて特徴的な自己貪食空胞を有する稀少な筋疾患で、根治療法はない。発症機序として、生体防御の機構であるオートファジーの関与が疑われるが、依然原因不明である。本疾患の空胞には、1)1次性ライソソーム異常によるDanon病を代表とする筋鞘膜の性質をもつ自己貪食空胞(AVSF)、2)2次性ライソソーム異常による縁取り空胞(RV)、がある。平成25年度は、1次性ライソソーム異常によるAVMについて、国内実態調査結果を用いて、臨床情報の整理と把握を行った。平成26年度は、昨年度に見出した新規のDanon病の女性患者の生検筋を用いて、筋病理学的および生化学的解析を行い、原因蛋白であるLAMP-2の発現低下を確認した。de novo変異である女性患者は本邦では初めての症例であり、世界的にも数例のみである。本患者の病態機序についてより詳細に解析を行った。Danon病の発症は、女性では30代であることを私たちは明らかにしているが、本例は非典型的な早期発症例で、既に心臓MRIでの心筋の線維化と肥大、WPW症候群という不整脈を呈することを明らかにした。本例では肥大型心筋症は明らかで、軽度の知的機能低下がみられ、ミオパチーは認めなかった。 さらに、1次性ライソソーム異常によるDanon病については、我々が行った本邦初の国内実態調査の結果と現在把握している臨床情報を踏まえて、診断基準の基盤となる病理学的所見として、リソソーム・エンドソーム経路およびオートファジー機構に関与する物質の局在・機能について、昨年度に引き続き、より詳細に筋病理学的検討を行った。今後は、Danon病モデルマウスとDMRVモデルマウスの筋組織を用いて、同様にリソソーム・エンドソーム経路およびオートファジー機構に関与する物質の局在・機能について筋病理学的検討を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで把握していた自己貪食空胞性ミオパチー患者の筋病理学的解析に加えて、希少疾患であるDanon病の家族歴のない新規の女性患者を見出し、本患者の病態解析も順調に進んでいる。さらに、これまでの患者の生検筋を用いて、より詳細な病理学的および生化学的解析も加えて行うことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
自己貪食空胞性ミオパチー患者の臨床情報から、疾患概念を確固たるものにすべく、引き続き、共通する臨床病態の解析を行い、併せて個々の臨床病型の特徴を見出す。 患者とモデルマウスの筋組織の病理学的的解析として、オートファジーの場である自己貪食空胞の微細構造の形態学的検討を行う。また、自己貪食空胞性ミオパチー患者の生検筋での凝集蛋白の病理学的解析、各種蛋白の糖化およびリン酸化機構について病理学的解析を行う。さらに、自己貪食空胞性ミオパチーの病態の全容解明として、上記結果をもとに、骨格筋での蛋白分解システムとしてのライソソーム・エンドソーム経路におけるオートファジー分子機構の解明を行う。本病態の改善に向けて治療へ結びつく分子病態の発見を目指す。
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Causes of Carryover |
免疫組織化学染色用の複数の1次抗体を、海外輸入で購入計画を立てていたが、納入が計画通りに進まず、年度内に納入困難になり、止むを得ず、次年度繰越とさせていただいた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入予定であったライソソーム関連1次抗体を用いて、改めて自己貪食空胞の特徴を見出すべく病理学的解析を行っていく予定である。そして、これまでの解析結果と併せて、自己貪食空胞におけるライソソーム関連蛋白の発現に関して検討する。
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