2013 Fiscal Year Research-status Report
p27によるマクロファージ増殖制御の糖尿病・動脈硬化における生理学的意義の解明
Project/Area Number |
25461361
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
瀬ノ口 隆文 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (00530320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 剛 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (20398192)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マクロファージ増殖 / インスリン抵抗性 / 動脈硬化症 |
Research Abstract |
スカベンジャー受容体のプロモーター制御下にサイクリン依存性キナーゼ阻害因子p27kipを発現するMφ特異的増殖抑制マウス(mac-p27Tg)とapoE欠損マウスとを交配し、apoE欠損×mac-p27Tgマウスを得た。16週齢の大動脈弁輪部切片の平均プラーク面積は、apoE欠損×mac-p27Tg群で有意に減少していた。Iba1陽性のMφはapoE欠損×mac-p27Tgで少なく、Ki67陽性の割合も低かった。病変部におけるCD68のmRNA発現はapoE欠損×mac-p27Tg群で有意に減少した。また炎症性サイトカイン(MCP-1、IL-1β)のmRNA発現もapoE欠損×mac-p27Tg群で減少傾向を認めた。これらの検討よりMφ増殖抑制によりapoE欠損マウスの動脈硬化病変部におけるMφ数は減少し、病変形成及び病変部の炎症活性が抑制された。一方、mac-p27Tgマウスに高脂肪食負荷を行い、マクロファージ増殖抑制による耐糖能への影響を検討した。高脂肪食負荷後の対象群とmac-p27Tg群間で随時血糖、体重に有意差は認めなかったが、ipGTTでは対象群と比しmac-p27Tg群で負荷後60分、90分、120分の血糖値が有意に低く耐糖能の改善を認めた。ipITTではmac-p27Tg群で負荷後60分、120分の血糖値が有意に低値であった。脂肪組織におけるCD68のmRNA発現はmac-p27Tg群で減少し、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6)のmRNA発現も低下傾向であった。血清中の炎症性サイトカイン(TNF-α)もmac-p27Tg群で有意に低値であった。これらの結果より、マクロファージ増殖抑制によって、高脂肪食負荷による全身の炎症活性およびインスリン抵抗性の改善を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マクロファージ特異的human p27kipトランスジェニックマウス(mac-p27TG)を作成した。動脈硬化病変形成に対するマクロファージ増殖の検討を行うために、動脈硬化モデルマウスであるApo E欠損マウスとの交配を行い。動脈硬化病変の発症・進展におけるマクロファージ増殖の影響を検討した。また、mac-p27TGマウスに高脂肪食負荷を行い、耐糖能への影響を検討するなど、in vivoにおける検討はある程度軌道に乗っている。しかしながら、結果の十分な解析を行うほどの遺伝子改変マウスの個体数が得られておらず、引き続き個体数の確保を続けながら解析を進めてゆく。 浸潤マクロファージの増殖の病態生理学的意義を検討するに当たり、基盤となるマクロファージp27kip発現の生理的意義や、浸潤マクロファージ増殖の生理的意義に関する検討、およびp27kip発現調節に関する基礎的検討が十分に進んでおらず、当該年度の達成度としては、「やや遅れている」と判断している。in vitroの検討が十分に行えていない理由については、遺伝子改変マウスの繁殖状況により、マウスの解析の時間の調整が困難であったこと、疾患モデルマウスとの交配、高脂肪食負荷などを同時に行っていることから、これらの解析の時期が続き、In vivoでのデータの収集解析を優先して行ったことにある。また、より精密な検討を行う目的で、Flow cytemetoryを用いた細胞増殖の評価や、レーザーマイクロダイセクションを用いた組織mRNA発現の検討、また、組織浸潤マクロファージの単利など、新しい実験的手技を取り入れてきたが、本期間中に十分な解析を行うには至らず、次年度以降の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
In vivoの検討においては、個体数を十分に確保し、動脈硬化、糖代謝の両面で科学的解析に足る結果を収集することを継続する。また、いずれの現象においても、p27の過剰発現による表現型を野生型のマウスの骨髄移植によってキャンセルできるかの検討により、p27によるマクロファージ増殖制御の病態生理学的意義が明らかとなることから、この実験を重点に置き遂行する。In vitroの実験においては、糖尿病、動脈硬化それぞれの病態におけるマクロファージ増殖誘導因子の解明、マクロファージ増殖抑制因子および浸潤マクロファージ増殖の生理的意義の追及を目的とし行う。大学院生を含む研究員の確保による研究体制の拡充を図り、並行して行っている動脈硬化、糖代謝の解析の効率を上げる。また本年度取り入れた新規の解析方法については高い精度で解析を行えるよう技術的修練を重ね、来年度以降の資料の解析に滞りがないよう準備をおこなう。 以上の点を含め、本研究遂行するにあたっての課題として、①マクロファージ増殖抑制因子および浸潤マクロファージ増殖の生理的意義の追及、②遺伝子改変マウスの個体の確保、表現型の再現性の確認、③遺伝子改変マウスの複数ラインでの表現型の確保があげられる。特に③については現状では未だ着手しておらず、現象の確からしさの検討の点からも優先度を上げ厳冬を行う予定としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
In vivoの実験については、遺伝子改変マウス、病態モデルマウスを得て表現型の確認を行っているが、結果の十分な解析を行うほどの個体数が得られておらず、解析に要する物品の使用が予定を下回った。またマウスでの検討を優先し、予定のIn vitroの実験系が起動していないことから、生化学的解析にかかわる物品の使用が予定を下回った。 当初、本年度に予定していたIn vitroの実験系を本格的に稼働する。Flow cytemetoryを用いた細胞増殖の評価や、レーザーマイクロダイセクションを用いた組織mRNA発現の検討にはチューブ、プレパラートなどの専用の器具や抗体、プライマー、試薬などの購入が必要である。また、組織浸潤マクロファージの単利を行い、mRNA、タンパク質発現の検討などなど生化学的検討を行うに当たり、必要な物品の購入に充てる。また、飼育マウスの増加に伴い、飼育スペース、餌(特殊食含む)の必要量も増えることから、これらの管理費にも充てる。
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