2013 Fiscal Year Research-status Report
亜鉛トランスポーター制御による2型糖尿病治療法の開発
Project/Area Number |
25461364
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
藤谷 与士夫 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30433783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福中 彩子 順天堂大学, 医学部, 研究員 (60586402)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 糖尿病の病態 / 亜鉛トランスポーター / 糖尿病治療 |
Research Abstract |
Zinc transporter 8をコードするSLC30A8遺伝子は、2型糖尿病の疾患感受性遺伝子のひとつとして報告された。その機能を明らかにすべく、膵β細胞においてZnT8を欠損する遺伝子改変マウスを作製した。我々が作製したZnT8欠損マウスは、コントロールマウスに比較して糖負荷試験の際に経度な耐糖能異常を示し、抹消血中のインスリン濃度は低値を示した。その一方で、単離膵島からのグルコース応答性のインスリン分泌は、ZnT8欠損マウスの方が約2倍程度高値を示した。この理由を追及したところ、ZnT8欠損マウスにおいては、肝臓におけるインスリン分解がコントロールマウスよりも亢進していることを見出した。 インスリン分泌に際して、インスリンとともに亜鉛イオンが膵臓から肝臓に向かって流れる。肝臓におけるインスリン分解を亜鉛イオンが抑制するメカニズムとして、亜鉛イオンがインスリンーインスリン受容体複合体のクラスリン依存性の細胞内移行を抑制することを見出した。これまで、インスリン受容体の細胞内移行はクラスリンに依存した経路、およびカベオリン依存性の経路の2つのメカニズムが知られている。そこで、クラスリン依存性の細胞内移行、カベオリン依存性の細胞内移行それぞれに対する阻害薬を用いた検討を行ったところ、亜鉛イオンがインスリン受容体のクラスリン依存性の細胞内移行を主に抑制することが明らかとなった。これまでのZnT8欠損マウスに関する生理学データ、そのメカニズムの詳細をまとめてJCI誌に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、亜鉛トランスポーターがどのように2型糖尿病の発症にかかわっているかの分子メカニズムを明らかにし、それをtargetとして、新たな糖尿病治療戦略を提案することにある。これまでの研究で、膵臓から肝臓へとながれる亜鉛イオンが肝臓でのインスリン分解を抑制し、全身でのインスリン作用を保持することを明らかにした。これは亜鉛の生体における新たな役割を提唱するとともに、あらたな糖尿病発症メカニズムと治療のシーズを提唱したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
SLC30A8/ZnT8が2型糖尿病の疾患感受性を高める理由のひとつとして、これまでに、膵β細胞からインスリンと同時に共分泌される亜鉛イオンが減少することにより、肝臓でのインスリン分解が亢進することを見出した。本年度は、ZnT8の働きにより、インスリン分泌顆粒内の亜鉛イオンが高濃度に存在することが、ヒトIAPP/amylinの凝集を防いでいる可能性について検討を加える。この可能性を検証するために、ZnT8を膵β細胞で欠損し、さらに膵β細胞においてヒトIAPPを過剰発現するマウスを作製する。この可能性が検証されれば、ヒトにおいてSLC30A8/ZnT8が2型糖尿病の疾患感受性を高める新たなメカニズムを提唱することとなる。
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