2013 Fiscal Year Research-status Report
エストロゲンの非遺伝子作用を担うアロマターゼの翻訳後二段階調節機構
Project/Area Number |
25461398
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
原田 信広 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (00189705)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アロマターゼ / エストロゲン / 非遺伝子作用 / 翻訳後修飾 / カルモジュリン依存性キナーゼ / カルシニューリン / リン酸化 / 脱リン酸化 |
Research Abstract |
エストロゲンには核内受容体を介する遺伝子作用と膜受容体を介する非遺伝子作用が報告されている。エストロゲンの遺伝子作用については多くの研究によりその詳細な機構が解明されつつあるが、エストロゲンの非遺伝子作用に関しては、短時間の生理反応であり、エストロゲン生成・刺激に関わる調節機構は不明である。急速なエストロゲン供給は、アロマターゼ遺伝子の転写誘導によるエストロゲン合成能の増加では時間的に無理がある。本研究は、こうしたエストロゲンの速やかな合成調節を可能にするアロマターゼ活性の活性化・不活性機構に焦点を当てて、アロマターゼの翻訳後調節について、タンパク質修飾の実態の解析、さらに翻訳後修飾と活性調節の関係を細胞培養レベル及び in vitro再構成系での解析を目指す。 平成25年度の研究では、アロマターゼ遺伝子(野性型及びFLAG/Mycタグ付加型)を安定導入した胎盤由来JEG3細胞及び神経細胞由来N38細胞株を作成し、細胞内アロマターゼの酵素活性及びタンパク質量に対するリン酸化・脱リン酸化酵素による制御を確認した。その結果、アロマターゼはリン酸化により二相性に調節されていること、すなわちリン酸化10-20分で急激に活性を消失していき、それに続いて1-2時間で酵素タンパク質の分解が進むことが明らかになった。この反応には細胞質の存在が必要であり、細胞内カルシウムシグナル伝達に依存したカルモジュリン依存性キナーゼIIとカルシニューリン がアロマターゼの活性及びタンパク質分解速度に大きく関与していることが明らかになった。実際にリン酸化キナーゼの精製標品を用いて精製アロマターゼをin vitroでリン酸 化させ、LC/MS/MS分析によりアロマターゼのリン酸化部位を部分的に同定したが複数個所のリン酸化部位が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの実験で、先ず、アロマターゼの翻訳後修飾の解析に必要なタグ(FLAG及びMyc) 付加あるいはタグ不付加(野生型)のアロマターゼを強制発現した胎盤由来及び神経細胞由来培養細胞株を作成している。これらの細胞株を用いて、リン酸化・脱リン酸化によるアロマターゼ活性の10-20分オーダーの迅速な調節、そしてその後の1-2時間オーダーのアロマターゼタンパク質の安定性・分解課程の調整という二段階の翻訳後調節を明らかにする事が出来た。また特異的阻害剤やRNA干渉阻害などの実験手法でこうした調節に関与する主要なリン酸化・脱リン酸化酵素としてカルモジュリン依存性キナーゼとカルシニューリンを同定した。またリン酸化部位をLC/MS/MSで部分的に同定し、現在、部位特異的変異を入れてこれらのリン酸化部位の機能を調べている。これらの成果は当初、研究計画に挙げていた1-5の項目を達成したことを意味する。これまでの研究でアロマターゼのリン酸化と活性低下・タンパク質分解促進との間を繋ぐ機構の解析を手がける取っ掛かりが出来た状態であり、達成度を大雑把に評価すると80%程度かと推察する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、リン酸化によるアロマターゼの活性低下については、部位特異的変異導入を用いて解析を進めていく予定である。またリン酸化によるアロマターゼの安定性低下・分解亢進については、現在までの研究で小胞体内のタンパク分解系及び細胞質・プロテアソーム系の関与を示すようなデータが得られている。研究計画に示したTwo-Hybrid酵母スクリーニング系、それが適応困難な場合にはクロスリンカーを使用した精製系を用いて、リン酸化とこうした分解経路の間に関与するリン酸化アロマターゼの認識酵素系、分解系までの移動に関わる酵素系などについて同定し、詳細な分解機構を明らかにしていく予定である。またこうした翻訳後修飾によるアロマターゼ活性の調節によるエストロゲンの非遺伝子作用については、特に視床下部神経細胞由来のN38株を用いて、種々の神経伝達物質と細胞内情報伝達シグナル、さらに神経内分泌学的行動解析を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学内での科研費の当該年度分の使用(注文)期限が1月で締め切られるので研究補助員の2月以降の人件費として確保していた。 現在、研究遂行に必要な試薬を節約して使用中であり、使用可能になり次第、研究計画に必要な試薬を随時購入予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Hypothalamic inhibition of socio-sexual behaviour by increasing neuroestrogen synthesis2014
Author(s)
Ubuka, T., Haraguchi, S., Tobari, Y., Narihiro, M., Ishikawa, K., Hayashi, T., Harada, N., & Tsutsui, K.
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Journal Title
Nature Commun.
Volume: 5
Pages: 3061
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Brain endogenous estrogen levels determine responses to estrogen replacement therapy via regulation of BACE1 and NEP in female Alzheimer’s transgenic mice2013
Author(s)
Li, R., He, P., Cui, J., Staufenbiel, M., Harada, N., & Shen, Y.
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Journal Title
Mol. Neurobiol.
Volume: 47
Pages: 857-867
DOI
Peer Reviewed
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