2013 Fiscal Year Research-status Report
炎症性貧血におけるヘプシジン-フェロポルチン制御機構の解明とその臨床応用
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25461452
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中沢 宗健 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00535958)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 炎症性貧血 / ヘプシジン / リウマチ / IL-6 / TNFα / トシリズマブ |
Research Abstract |
ヘプシジンは鉄代謝の負の制御因子として慢性炎症性貧血に関与する。IL-6がヘプシジンを介してキャッスルマン病(MCD)における炎症性貧血に直接的に関与することを証明した(Soken-Nakazawa JS, et al.Blood 2010;116:3627-3634)。一方、関節リウマチ(RA)はIL-6, TNFα,IL-1など複数の炎症性サイトカインの機能亢進が認められる。多彩なサイトカインが生体内においてどのようにヘプシジンの発現を調節して、RA貧血に関与するかについて全く解明されていない。本年度は、93名RA患者にTCZ、抗TNFα抗体(TNFi)治療前後におけるヘプシジン‐25を含む鉄代謝マーカーとTNFα、IL-6を含む複数のサイトカインを経時的に測定・解析し、臨床病態の関連を検討した。結果: 1.血清ヘプシジン値はFerritin、CRP、疾患活動性(DAS28)と正相関を示したが、IL-6値とは有意な相関を示さなかった。2.血清ヘプシジン値が治療前から高値であり、サイトカイン阻害治療によりヘプシジンが早期に低下し、その後貧血と関節・全身炎症症状は徐々に改善した。TCZとTNFi両者とも有効であったが、TCZはTNFiよりさらに有効であった。3.培養実験においても、IL-6+TNFα+IL-1刺激におけるPLC/PEF/5細胞のヘプシジン産生は、TCZで完全に抑制したが、TNFiでは抑制しなかった。考察:RA患者に対するTCZ治療により血清中ヘプシジンが低下し、ヘモグロビンの正常化が見られたことによって、IL-6がヘプシジンの産生亢進によるRA貧血に直接的に関与することを明らかにした。一方、TNFi治療ではヘモグロビンとヘプシジンを正常化させることは困難であり、in vitro の実験でもTNF-αによるヘプシジン産生の誘導を示されなかったことから、TNF-αは直接にヘプシジンを介してRA貧血に関与しないことを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの検討により、キャッスルマン病(MCD)患者と同様に、RA患者血中にヘプシジンの発現を増強または抑制する因子が複数存在することが確認した。本年度の研究により、次年度以降の研究をサポートする重要なデータが取得した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果より、血清ヘプシジン値は、RA患者の疾患活動性・鉄代謝と密接に関連し、関節リウマチに伴う慢性炎症性貧血の病生理学において役割を果たしている可能性があると分かった。今後IL-6、TNF-α、BMPなど複数のサイトカイン刺激後による異なるヘプシジンの発現機序をシグナル伝達、転写レベルで解析する。
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Research Products
(6 results)