2015 Fiscal Year Research-status Report
IL-21シグナル遮断を利用した急性GVHDに対する新規治療戦略の開発
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25461459
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
翁 家国 自治医科大学, 医学部, 講師 (20398514)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | IL-21 / GVHD / リンパ球混合反応 / IFN-g |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスの実験系で、骨髄移植後にIL-21のシグナルを遮断すると,リンパ球の分化に欠損が生じ、炎症性サイトカインの産生が低下しGVHDが減弱することを報告した。ヒトの同種免疫反応においてもIL-21シグナルがGVHDの増悪因子として働くのかin vitroの実験系での確認を計画した。ヒト末梢血単核球を用いたリンパ球混合反応は同種免疫反応をin vitroで再現する古典的な手法である。(リンパ球混合反応)ボランティアの末梢血から比重遠心法で単核球分画を得た。Stimulatorに30Gy照射後、Responderと混和する。培養72時間後に3H-thymidineを添加し96時間後にResponderの増殖を定量した。同様に96時間後の培養上清のIFN-gとIL-21の産生量をELISAで測定した。この実験で同種免疫反応におけるIFN-gとIL-21の関わりが明らかになる。 (結果) 自家の反応系(A+A:陰性コントロール)では3H-thymidineの取り込みが386±202cpmであるのに対して同種免疫反応(A+B)では1199±240cpmと有意に高値であった(p<0.001)。このとき、炎症性サイトカインの代表であるIFN-gを測定すると、自家の反応系では27±14 pg/mlである一方、同種免疫反応では1254±728 pg/mlと明らかに高値であった(p=0.009)。しかしIFN-gと同様の変化をすると期待 されたIL-21については自家反応系で32.4±2.2 pg/ml、同種免疫反応では34.0±2.2pg/mlと両者に有意な差がないことが判明した(p=0.1)。 (意義) 当初、IL-21は同種免疫反応の増悪因子と仮定していた。in vitroの実験系では同種免疫反応でIFN-gの増加は確認できたが、IL-21の増加はなくその関与は否定的である可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
(1)マウスモデルにおいてIL-21シグナルは移植後GVHDを悪化させることは間違いないと思われる。この知見をヒトに応用するためにはヒトでも同様の現象が観察される必要がある。IL-21が同種免疫反応の促進因子であることを明らかにするには、造血幹細胞移植後、およびGVHD発症前後の実際の患者血清IL-21濃度の測定が直接的な証明になると考えられる。
(2)予備的な検証として健常ボランティアの末梢血単核球を用いたリンパ球混合反応でも同様の事象が観察されると予想した。すなわち、リンパ球混合反応で同種免疫反応はコントロール(自家反応系)に比べてIFN-gとIL-21が共に上昇すると仮説した。更に、同種免疫反応系でIFN-gとIL-21の中和抗体はリンパ球の増殖反応と炎症性サイトカインの産生を抑制すると仮説した。しかし、最初の検証実験の結果ではIFN-gは同種免疫反応後に明らかに上昇するものの、IL-21は上昇しないことが判明した。この結果では実際の臨床患者のサンプルを解析する意義に乏しいと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
(背景)同種造血幹細胞移植は再発・難治性造血器腫瘍に対して最も有効な治療であるが、その成否はGVHDの制御の上に成り立つ。HLA適合同胞からの移植が最も安全で成功率が高いがドナーが見つかる可能性はおよそ3割である。代替移植法の一つとして血縁者間HLA半合致移植が研究されている。拒絶と重症GVHDを予防するためin vivo T cell depletionが必要である。現在ATG/Alemtuzumab/PT-CYの3剤が用いられるがその優劣は不明である。ヒトを対象にこれらの薬剤の効果を直接比較することは困難である。そこでヒト化マウスGVHDモデルをHLA半合致移植に見立てて3つの薬剤のGVHDに及ぼす効果を検証する実験を計画した。(研究目的)ヒト化マウスGVHDモデルを用いてATG、Alemtuzumab、PT-CYの3剤による免疫抑制効果を比較検証する。(方法)ヒト化マウスGVHDの作成。NOGマウスに2.5Gy照射後ヒト末梢血単核球5x106個を移植しGVHD様の病態を作成し以下の5群で観察する。1.コントロール:2.5Gyのみ 2.GVHD群:2.5Gy+5x106MNC 3.ATG投与群:GVHD +ATG 5mg/kg, -4, -3day, ip 4.Alemtuzumab投与群:GVHD+Alemtuzumab 0.25mg/kg, -4, -3day, ip 5.PT-CY投与群:GVHD+CY 50mg/kg, +3, +4day, ip
① 生存率とGVHDクリニカルスコアの観察:週2回生存率と体重、活動性、皮膚、毛並み、姿勢 ②GVHD標的臓器における病理組織の観察:肝臓、消化管、皮膚、肺の病理(HE, humanCD45, CD4, CD8)
以上の観察から3種の免疫抑制療法のうちどの方法が最も有効であるかが明らかになる
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Causes of Carryover |
2015年度は病棟業務と外来診療、及び学生教育が多忙で研究に十分な時間を充てることが困難であった。2016年4月より病棟業務が軽減され主たる職務が外来診療と大学院生の指導となるため実験の再開が可能となる。期間を延長して実験に取り組みたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ヒト化マウスGVHDモデルを用いてATG、Alemtuzumab、PT-CYの3剤による免疫抑制効果を比較検証する。更に、マウス白血病モデルを用いてGVL効果に及ぼす影響も併せて検証する。実験動物として高額なNOGマウスを使用する。末梢血単核球を健常ボランティアを募る。謝金として一定額を支払う予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] A low-dose cytarabine, aclarubicin and granulocyte colony-stimulating factor priming regimen versus a daunorubicin plus cytarabine regimen as induction therapy for older patients with acute myeloid leukemia: A propensity score analysis.2016
Author(s)
Minakata D, Fujiwara S, Ito S, Mashima K, Umino K, Nakano H, Kawasaki Y, Sugimoto M, Yamasaki R, Yamamoto C, Ashizawa M, Hatano K, Okazuka K, Sato K, Oh I, Ohmine K, Suzuki T, Muroi K, Kanda Y.
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Journal Title
Leuk Res.
Volume: 42
Pages: 82-87
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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