2014 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫疾患における腸管自然免疫を介したTリンパ球機能スペクトラムの制御
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25461488
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
清水 潤 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (30509964)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腸内細菌メタゲノミクス / Th17細胞 / ベーチェット病 / 炎症性腸疾患 / 再発性多発軟骨炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年目覚ましく発展している腸内細菌メタゲノム解析データが、ヒトリンパ球機能と相関しているという仮説のもとに、健常人および自己免疫疾患患者(ベーチェット病、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、再発性多発軟骨炎等)におけるそれぞれのパラメータを収集および解析するものである。 次年度のメタゲノムおよびリンパ球解析の研究実績の概要は以下の通りである。初年度後半の倫理審査委員会の承諾を待って、サンプルの収集を開始した。便サンプルに関しては、健常者10検体、ベーチェット病患者10検体、炎症性腸疾患(クローン病)1検体を収集し、随時解析を実施している。炎症性腸疾患患者1名に関しては、組織検体も収集している。解析に関しては、16S rRNA遺伝子による菌ゲノムをオープンソフトのQIIMEにて菌叢解析とα多様性解析を、健常人は全員、ベーチェット病患者においては5名まで終了させている。現在引き続きその解析を継続するとともにβ多様性解析方法の確立を試みている。解析結果によって対象疾患の拡張も図る。 ヒトリンパ球機能解析は、現在健常者にてプロトコールの最終チェックを実施している。解析項目は、メモリーT細胞を用いSTAT蛋白およびTh17細胞関連遺伝子発現の動向観察が適当と判断した。ただし本研究目的に合致していることとは考えているが、個体差および経時変化が大きく研究プロトコールが最終的なものにはなっていない。さらに準備的な研究及び発表論文への反応を参考に、リンパ球機能解析を開始する予定である。ただし本研究の論文発表に関しては、もちろん結果いかんによるものの、現在解析中の便メタゲノム解析のみでも可能であると推察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の反省点として、臨床試験倫理審査の準備不足により試料収集の開始に遅れが生じたことを挙げた。本年度は試料収集に着眼を置いたため、その遅れは穴埋めされたものと判断している。すなわち、健常人およびベーチェット病患者においては試料収集が研究の予定収集数に達することができた。現在、フリーソフトQIIMEにより解析を実施中であり、再解析を含めてバリデーションを同時に施行している。仮に所見が得られた場合には(健常人とベーチェット病の間での有意差の存在)には、我々の検討した範囲では論文報告可能なレベルになるものと推察している。またその結果によっては、膠原病を中心とした他疾患の試料収集の検討も開始する。さらにはβ多様性解析のためにバーコードを用いたゲノム抽出も開始しているが、現時点では解析に至っていない。論文には反映したいと考えている。 リンパ球機能解析については、最終的なプロトコールの微調整を実施している段階である。しかし、健常人および患者の選定および同意取得はすでに終了しており、実施に大きな障害はない。微調整を要する理由の一つとして免疫学でのリンパ球機能概念の大きな変動が挙げられる。すなわち、次世代シークエンサー等を用いたいわゆるビッグデータによってTh1/Th2概念の見直しが進められているためである。我々には興味深い多数の新規知見が発表されつつある。それらのデータを加味してほぼ観察分子や培養時間等の設定を終了したので、新年度より解析を開始する予定である。 現在我々のリンパ球機能解析方法の結果につき新たに論文化し投稿中である。可能であればこの論文に対する反応もプロトコールに反映させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点での重点項目は、リンパ球機能解析プロトコールの決定にある。最善のプロトコール選択のために重要な点は、最新情報の収集にあると考えている。この収集におおよそ一年間を費やすこととなったが、現在でも判断が困難な点も多い。しかしながらリンパ球培養プロトコールで、未決定の部分は2か所まで絞り込むことが可能であった。最終年度は早々にリンパ球機能解析を開始する予定である。 また次に述べる、新しい観点から研究を拡張する。最近の大腸癌の研究において、メタゲノム解析(菌種および遺伝子機能解析)は便潜血検査と相関することが報告された(Mol Syst Biol. 2014 Nov 28;10:766. doi: 10.15252/msb.20145645.)。本邦の研究にて便潜血がベーチェット病患者の予後に影響を及ぼすことが報告されている(26年度厚労省班会議報告書)。そこで今までに得られた試料より便中ヘモグロビンの観察を開始する予定である。腸内細菌、リンパ球機能が便潜血に与える影響という新しい視点が、新規のBD病態解明および検査方法に結びつく可能性を考えている。
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Causes of Carryover |
本年度のバーコード使用メタゲノム解析およびリンパ球機能解析の遅れによる。本年度も研究の正確性を期するためやむを得ないものと考えている。いずれも研究組織内での実施可能な実験であり、研究費の使用調整は容易である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述のごとくメタゲノム解析/リンパ球機能解析ともに、研究組織内にて完結している測定方法を確立しているため、次年度の解析数を増加させることで対処する。可能であれば、解析のバリデーションも増加させる。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Pax7 Gene Induction Rapidly Regulates Myocyte Homeostasis in Human Induced Pluripotent Stem (iPS) Cells.2014
Author(s)
Misawa H, Saito A, Shimizu J, Iinuma M, Shiratsuchi T, Fujiwara N, Takai K, Arimitsu N, Ueda Y, Wakisaka S, Suzuki T, Beppu M, Suzuki N.
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Journal Title
St. Marianna Medical Journal.
Volume: 5
Pages: 59-67
Peer Reviewed / Open Access
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