2013 Fiscal Year Research-status Report
生物毒や毒性物質に対するマスト細胞による生体防御調節機構の解明
Project/Area Number |
25461498
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
赤星 光輝 九州大学, 大学病院, 助教 (40391841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有信 洋二郎 九州大学, 大学病院, 助教 (90467928)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マスト細胞 / 生物毒 / 強皮症 |
Research Abstract |
マスト細胞の生物毒に対する生体防御の役割を明らかにする目的で、2種類のクモ毒およびフグ毒(テトロドトキシン)投与時の野生型マウス(C57BL/6J)とKit遺伝子変異をもつマスト細胞欠損マウス(C57BL/6-KitW-sh/W-sh)での生体反応(体温変化や致死性)の比較を行った。2種のクモ毒ではいずれも野生型マウスとマスト細胞欠損マウスの間には明らかな生体反応の差は認められなかったが、フグ毒投与によりマスト細胞欠損マウスは野生型マウスに比べ有意に高い致死性を示した。またフグ毒投与下での胃内マスト細胞の脱顆粒も認められた。 次に野生型とKit遺伝子変異マウスとの間のフグ毒に対する反応性の違いがマスト細胞自体に関連するものかどうかを明らかにするため、マスト細胞移入マウス(野生型マウス由来の培養マスト細胞を移入したマスト細胞欠損マウス)におけるフグ毒への反応性を比較したところマスト細胞欠損マウスとの明らかな差は認められず、フグ毒に対する生体防御におけるマスト細胞自体の明らかな関与を示唆する結果は得られなかった。 さらに野生型マウスにおけるフグ毒の毒性減弱効果が、マスト細胞由来のプロテアーゼを介した機序によるものかどうかを確かめるため、マスト細胞特異的プロテアーゼ欠損/不活化マウスにおけるフグ毒に対する反応性を野生型と比較したが、両者の間でも明らかな差は認められなかった。 以上、今回の我々の解析により、①クモ毒の一部に対してはマスト細胞の生体防御の働きは示されず、また、②Kit遺伝子変異マウスは、マスト細胞非依存的にフグ毒に対する抵抗性・防御反応が低下している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予想していたようなポジティブな結果は得られなかったが、科研費申請時に研究計画・方法(概要)に示した平成25年度分の内容はおおむね実行できたと思われるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで未解析の生物毒を数種類用いてマスト細胞の防御反応の有無を検討したが、その中ではマスト細胞が防御的に働いている結果を示唆するデータは得られなかった。そのため、本実験系を用いた解析はこれ以上の発展性が望めないと判断し、平行して平成26年度から行う予定としていた「強皮症の病態形成における生理活性物質およびマスト細胞の意義」という内容で今後の研究を進めていきたいと考えている。 具体的には、まず九州大学病院でフォロー中の強皮症患者で同意の得られたものについて血中エンドセリン-1をはじめとした種々の生理活性物質濃度、また血清トリプターゼ値や生検皮膚組織中のマスト細胞数などと臨床病態との比較を行いマスト細胞およびマスト細胞によって調節を受ける生理活性物質の病態への関与を検討する予定である。また平行して強皮症/肺線維症モデルマウス(Tsk マウス/ブレオマイシン誘導モデルマウス)を用いて、ヒトと同様の解析を行う予定である。これら強皮症患者やモデルマウスを用いた解析により、マスト細胞によって調節を受ける生理活性物質を介した強皮症の病態形成メカニズムの解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
臨床研究の行うに際しての当院での倫理委員会での審査に時間を要し、ヒト臨床検体を用いた研究開始に遅れが生じた。現在、主にヒト臨床検体のサンプル収集および今後の生化学的解析のための予備実験を行っており、まとまった解析のための生化学的試薬等の購入を先送りにしていたため次年度使用額が生じた。 今後、収集したヒト臨床検体のサンプルを用いて血清中の生理活性物質(エンドセリン-1ほか)を測定するためのELISAキット等、生化学的試薬を購入する。また、強皮症モデルマウス(Tskマウス/ブレオマイシン誘導モデルマウス)を用いた解析も行う予定であり、マウス購入費にも充てる予定である。
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Research Products
(1 results)