2014 Fiscal Year Research-status Report
単純ヘルペスウイルスの母子感染に関わる遺伝子変異と宿主因子の解明
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25461508
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大黒 徹 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (80291409)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | HSV |
Outline of Annual Research Achievements |
HSV母子感染の2つの症例で、児由来ウイルスはある遺伝子に特定の変異があることを見出したので、マウスでの感染実験で両ウイルス株の病原性の比較を行った。 臨床分離されたHSV-2のリン酸化酵素をコードする遺伝子にフレームシフトを引き起こす変異(G96A fsX5、 W30X、 A142P fsX25、 Y162V fsX141)を有する株と、アミノ酸置換(V165M、V175M、D231Y、Y384C)を有する株を網羅的塩基配列解析の結果見いだした。それらの内、フレームシフトの株(G96A fsX5、A142P fsX25、Y162V fsX141)と、アミノ酸置換のV165Mの病原性をマウス皮膚病変モデルで検討した。マウスBALB/c 8週令の側腹部を除毛後、注射針による擦過傷に各濃度のHSV-2(500,000, 100,000, 10,000 PFU / 5uL)を感染させ、病変の進行を観察した。いずれのウイルス株も10,000 PFU では殆ど病変を生じさせなかった。しかしながら、100,000 PFU 以上のウイルス量を感染させた場合では、リン酸化酵素の変異株(G96A fsX5を3株、 A142P fsX25を1株、Y162V fsX141を1株)の3種類のフレームシフトの株はいずれも変異のない株に比べて病原性が有意に低下していた。一方でアミノ酸置換のあった1株(V165M)は病原性低下が認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HSV母子感染の2つの症例で、児由来ウイルスはある遺伝子に特定の変異があることを見出したので、マウスでの感染実験で両ウイルス株の病原性の比較を行い、有意な差異を見いだす事ができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで母子双方から分離したウイルスの性状を比較解析することにより、児由来ウイルスの方が肝癌由来HepG2細胞での増殖がよいことと、39℃でのVero細胞における増殖性とHepG2細胞での増殖性に相関がみられることを明らかにしてきた。さらに、児由来ウイルスはある遺伝子に欠損があることを明らかにした。また、この遺伝子について児由来の遺伝子型と母体由来の遺伝子型を発現させる細胞系において、発現量に違いの見られる宿主蛋白質をいくつか同定することに成功した。これらの知見から、例えば、HSV-2は当該宿主蛋白質の発現量に影響を及ぼすことによって自らの増殖を制御していることが考えられる。本研究の最終目的は母子感染におけるHSVの病原性発現機構を明らかにすることである。
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Causes of Carryover |
組織標本のブロック作製、薄切切片、染色、ならびにプロテオーム解析を外注しており、支払い請求金額が確定するまで、予算の執行に余裕をもたせていた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年が本研究計画の最終年度となるため、英論文校閲費、論文投稿費、学会発表等で支出する予定である。
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Research Products
(7 results)