2013 Fiscal Year Research-status Report
海外から持ち込まれる多剤耐性菌の感染制御体制の構築
Project/Area Number |
25461522
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
水野 泰孝 東京医科大学, 医学部, 准教授 (80287292)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 哲哉 東京医科大学, 医学部, 教授 (10256688)
山口 哲央 東京医科大学, 医学部, 兼任助教 (10408239)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 輸入感染症 / 多剤耐性菌 / 渡航関連感染症 / サーベイランス / 医療関連感染対策 / 国際情報交換 / インド / 南東アジア |
Research Abstract |
海外に6か月以上滞在し、帰国した渡航者を対象に便検体を採取し、ESBL産生菌をはじめとする多剤耐性菌の検出状況を調査した。対象は90名であり、ESBL産生菌の検出は40例(44.4%)であった。菌種は肺炎桿菌3例以外大腸菌であったが、Amp-C型産生菌も1例認められた。検出率が高かったのはアジア地域(33名中21名)で、最も低かったのはアフリカ地域(32名中9名)であった。ここまでの研究成果については、平成25年6月に開催れた日本感染症学会学術講演会、ならびに同年9月に開催された米国化学療法学会において口演発表を行った。また、特に多剤耐性菌の検出率が高かったインドへ渡航し、現地医療機関の視察と在留邦人がよく利用する医療機関や、ショッピングモールなどでの環境調査を実施した。 地域別の多剤耐性菌保有状況がある程度把握できたところで、これから海外長期滞在を予定している渡航者に対して、渡航前の検体の採取を開始した。本調査の目的は、海外渡航による多剤耐性菌の危険因子を評価するための対照群を確保すると同時に、一般健常人における多剤耐性菌の保菌状況として評価するところにもある。平成26年4月現在までのところ、本学学生で海外短期留学をする予定がある者、国際協力機構職員で本研究の主旨に賛同いただけた者を中心に83検体の採取が行われており、帰国後の検体提出を待機している状況である。平成25年度早期に確保できた検体も存在するため、既に渡航前後をペアとした約20検体の確保ができている。平成26年度は引き続き、帰国後の検体確保に取り組み、海外渡航による多剤耐性菌の獲得状況について考察する予定である。 培養によって検出されたESBL産生菌を中心とする多剤耐性菌に関しては、遺伝子学的な系統解析を行い、特定のクローンと関連した菌株であるのかどうかを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初の計画において、平成25年度は海外帰国後患者および健常人における多剤耐性菌検出状況調査、渡航前におけるコントロール群としての検出状況調査を行うことであった。 実際のところ、海外から帰国した渡航者の多剤耐性菌保有状況について、短期渡航者と長期渡航者それぞれについて調査を行い、地域別の相違に関する結果を得ることができた。しかし本結果は、以前より多剤耐性菌を保有していた者が含まれている可能性もあり、今回の渡航先で感染したかどうかは明確ではない。従って渡航前の検体採取を同時進行で行っている。 以上より、初年度は当初の予定通り、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、海外渡航前に検体を採取し登録した被験者(特に6か月以上滞在を予定している海外長期赴任者)が一時帰国する可能性がある時期になるので、渡航前と帰国後との検体をペアで分析することが可能となる。各地域ごとの系統解析も同時に進め、世界的な多剤耐性菌の遺伝子学的分布状況を明確にすることを目的として研究を遂行する予定である。 また、多剤耐性菌検出頻度が最も高かったインドにおいて環境調査を行ったところ、NDM産生菌が複数箇所で検出されたため、海外長期滞在者の現地におけるリスク因子の解析を目的として、アジア地域を中心としたフィールド調査も併せて行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた菌株の系統解析の実施が該当年度内に十分できず、必要とすべき試薬等の購入を行っていなかったことが主な理由である。 平成26年度は主に遺伝子解析を中心とした研究を遂行することと、現地における情報収集、検体採取、学会発表等に使用する計画である。
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