2015 Fiscal Year Research-status Report
NDM-1産生大腸菌敗血症モデルを用いたCa-EDTAの併用効果に関する研究
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25461523
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
吉住 あゆみ 東邦大学, 医学部, 非常勤研究生 (20602444)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニューデリーメタロベータラクタマーゼ / Ca-EDTA |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、病原細菌の薬剤耐性化が問題となっており、その中でもニューデリーメタロベータラクタマーゼ(NDM)産生菌の伝搬は全世界に及んでいる。我が国でもインド渡航者からのNDM産生多剤耐性菌が検出されておりその伝搬のスピードは著しい。本酵素の産生菌の最大の問題点は既存のβラクタム系抗菌薬のほとんどを分解する多剤耐性菌であること、現在治療に用いられているコリスチンやチゲサイクリンなどにも耐性化が見られるという点である。これらの菌による感染症が起きた場合、治療に難渋することが予想される。そのため本研究では抗菌薬の殺菌性に注目するだけでなく、NDM-1自体の活性を阻害することによる新たな治療法を提案することを目的とした。研究代表者はこれまでにCa-EDTAおよびカルバペネム抗菌薬のIn-Virtoでの併用効果についての検討を行い、抗菌薬単剤の場合と比較し、Ca-EDTA併用条件下では大幅な改善が認められたことを明らかにした。(imipenem 512mg/L, imipenem/Ca-EDTA 2mg/L)。さらにNDM-1産生菌によるマウス敗血症モデル系を確立し、このモデルを用いてCa-EDTAとカルバペネム系抗菌薬の併用効果を血中、肝臓内生菌数を指標に検討した。その結果、抗菌薬単剤投与群に比べて併用群では有意差を持って生菌数が10倍減少していた。これらの結果は、2013年にJournal of Infection and Chemotherapyに掲載された。さらに併用療法における生存率への影響を検討した結果、肺感染症モデルにおいて、感染後120時間後にカルバペネム単剤投与群においては生存率は0%であったのに対し、併用群では30%のマウスで生存が確認された。今後さらなる生存率の向上を目的として異なるマウスでの検討等を含め、各種マウスモデルの確立を行っていく予定である。またNDMのアイソザイムやその他のメタロベータラクタマーゼに関してもCa-EDTAがどのような影響を示していくかについても検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
NDMの各種アイソザイムを用いての実験を計画していたが、菌株の入手等に時間がかかっており、研究が遅れたため、未使用額が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに確認されているNDMのアイソザイムについて、Ca-EDTAがどのように効果を示すかを本研究で確立したマウスモデルを用いて各アイソザイム発現株間での併用効果について検討を行う。またアイソザイム間で差が見られた場合には酵素学的にどのような違いがあるのかについても検討する。またその他のメタロベータラクタマーゼについても同様の検討を行う。NDM-1産生株を用いた実験については、さらなる生存率の向上を目的として異なるマウスでの検討等を含め、各種マウスモデルの確立を行う予定である。さらには感染によっておきると考えられるサイトカインストームが併用治療によってどのような経時的変化を示すのかを検討していく。Ca-EDTAはNDM-1産生菌のNDM-1に直接作用し、活性を阻害するが、実際どのように両薬剤がNDM-1産生菌の菌体内に取り込まれているのかは不明である。菌種によっては取り込み量の違いによる併用効果に差がみられる可能性もある。そこで各種NDM-1産生菌のCa-EDTAとイミペネムの取り込みに関与するトランスポーター、外膜タンパクの発現量の違いを解析し、併用効果との相互関係を確認することを考えている。
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Causes of Carryover |
平成27年度研究実施計画のうち、NDMの各種アイソザイムを用いての実験を計画していたが、アイソザイムが発現している菌株の入手等に時間を要し研究が遅れたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に計画を予定していた動物実験、サイトカイン測定等に必要な消耗品試薬等、新たな解析費、学会参加旅費、論文投稿費等に充てる予定である。
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