2014 Fiscal Year Research-status Report
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25461552
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小林 弘典 島根大学, 医学部, 助教 (70397868)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ピボキシル基 / ピバロイルカルニチン / カルニチン / 急性脳症 / 低血糖 / タンデムマス / アシルカルニチン分析 / 薬剤性カルニチン欠乏症 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.薬剤性カルニチン欠乏症の臨床情報収集 前年度はこれまでのピボキシル基を含む抗菌薬内服が確認され、同時に遊離カルニチン低下を認めた22例のまとめを行った。本年度も引き続き症例の集積を継続した。3例の新規症例が見られた。発症年齢は1歳5ヶ月(症例1)、1歳7ヶ月(症例2)、3歳9ヶ月(症例3)であった。前年度に報告した内容と矛盾せず、1歳台発症の症例1,2については基礎疾患を認めず、3歳台の症例3ではミオパチーを有し、胃瘻栄養中であるなどの低カルニチン血症をきたしうる背景を有していたが、本症例のVPA内服は見られなかった。発症形態は全例において低血糖をともなう急性脳症として発症した。ピボキシル基を含む抗菌薬の内服期間は症例1では直前の2ヶ月間で35日間の内服歴があった。症例2は直前の3ヶ月間で断続的に15日間、直前1ヶ月に限れば4日間のみの内服であった。症例3は7日間の内服歴があった。 今回新たに診断された3例のうち、症例2はこれまで診断された22例を含めてもピボキシル基を含む抗菌薬の内服期間が短い。海外では全身性カルニチン欠乏症患者におけるピボキシル基を含む抗菌薬による急性脳症の発症が報告されている。本症例にgDNAついて全エクソン-イントロン領域を含む遺伝子解析を行ったが明らかな異常は認めなかった。本症例についてはさらに分子遺伝学的な検討を続ける予定である。 2.遺伝背景の有無による薬剤性カルニチン欠乏症発症リスクの検討 昨年に続きin vitro probe assayによる培養皮膚線維芽細胞内外のアシルカルニチン濃度を測定するための検討を継続した。今年度の検討では細胞内アシルカルニチン、遊離カルニチン濃度の定量が一定にならず、検討方法の改良が必要であることが明らかになった。今後、抽出方法を変更して実験系の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)ピボキシル基を含む薬剤性カルニチン欠乏症については前年度の22例の集積に加え3例の追加症例を診断した。 2)新たな症例の中に非常に短い内服期間にも関わらず著明なカルニチン欠乏を伴う症例を見いだした。これまでに診断された症例と異なる抗菌薬内服歴などから遺伝的背景も疑われるため精査を行っている。 3)in vitro probe assayによる培養皮膚線維芽細胞内外のアシルカルニチン濃度を測定することで細胞膜上のカルニチントランスポーター(OCTN2)の輸送能を評価しようと試みたが、細胞内遊離カルニチンおよびアシルカルニチンの分離が困難であり、さらなる検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)症例の集積については今後も検討を続ける。 2)ピボキシル基を含む薬剤としてシベレスタットナトリウムもあげる事ができる。本薬剤はNICUやICUでも使用される事がある。次年度では本剤による底カルニチン症例についても症例の集積を行いたい。 3)今年度に診断した症例のうち、何らかの遺伝的背景が疑われた例については引き続き検討を行う。 4)当初予定していたin vitro probe assayを用いた遺伝的リスク因子の解析を行う事が困難であると予想されるが、まずは正確な機能評価を行うための実験系を再構築する。
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Causes of Carryover |
予定していた海外での発表等、研究成果の発表がなくなったため、使用金額が予定額よりも少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は使用していたLC-MS/MSの更新が必要になったために、本研究費からも一部を使用した。次年度は最終年であり、研究成果の発表、論文発表の機会を増やす予定である。
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