2013 Fiscal Year Research-status Report
クロマチン免疫沈降・シークエンス法による変異GATA1標的シス・エレメントの検索
Project/Area Number |
25461579
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
土岐 力 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50195731)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ダウン症候群 / 白血病 / GATA1 |
Research Abstract |
ダウン症・新生児の5~10%は前白血病(TAM)を発症し、その約30%は死に至る。また、寛解例の約20%は白血病 (ML-DS)を発症する。TAMとML-DSのほぼ全例にGATA1遺伝子変異(GATA1s)がみとめられる。本研究の目的は、GATA1s の標的遺伝子を検索し、TAM, ML-DSの発症メカニズムを解明することである。具体的には以下の三点に焦点を絞って研究を行なう。1. 変異GATA1を用いたシス・エレメントと標的遺伝子の同定。2. GATA1sの発現量の変化が標的遺伝子の発現に与える影響の検討。3. TAM発症に関わるGATA1ドメインの検索。 平成25年度の目標は、始めの二点を進めることである。第一の目標(前述)については、GATA1s発現レトロウィルス発現ベクターの作製をすること。そして作製したベクターをML-DS由来細胞株KPAM1に導入することである。25年度はこの段階の作業を完了した。また、変異体を導入した場合と野性型を導入した場合で増殖速度に大きな違いがあることを見出した。次の段階は、クロマチン免疫沈降法で変異体の認識するDNA領域を解析することである。導入後、DNAと核タンパク複合体の共有結合処理は今後の研究に大きく影響を与えることから、現在条件出し実験を行っている。また次世代シークエンサー解析の精度を上げるための予備実験も行っている。 第二の目標(前述)は、発現誘導型ベクターを作製することである。ベクターの作成は成功し、一過性遺伝子導入で発現誘導がかかることを確認した。 また、この研究を進めている過程で我々は、新規のGATA1変異を同定した。この変異も白血病発症に関わっている可能性があれば、今後の研究に進展がみとめられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究に進展に関わる新規GATA1変異を発見し、その検索も進めたことが影響している。 我々はTAM、 ML-DSと ダウン症を伴わない急性巨核芽球性白血病(non-DS AMKL) の変異を比較するために次世代シーケンサーを用いたターゲットシークエンスを試みた。その結果、ML-DSは、TAMにコヒーシン複合体関連遺伝子、エピジェネティック制御因子およびシグナル伝達系分子の変異が蓄積することによって発症すること、non-DS AMKLにみられる CBFA2T3/GLIS2や OTT/MALなどのキメラ遺伝子はML-DSには観察されないことなどを見出した。この結果は、 ML-DSとnon-DS AMKLの発生には異なるメカニズムが関わっている可能性を示すものであった。しかし、non-DS AMKL 19例中 1例にTAM、 ML-DSでは報告されたことがない新規のGATA1変異を検出した。しかしこの変異体の欠失領域の一部はGATA1sにみられる欠失領域と重複することが分かった。このことは、本研究の第三の目標である「TAM発症に関わるGATA1ドメインの検索」にとても重要な知見を与える可能性が高いことから、この変異体の機能解析などを進めた。その結果、この変異体はGATA1sと同様にML-DS細胞株の異常増殖を制御できないことが明らかになった。また、この症例ではnon-DS AMKLには稀でだが ML-DSには高頻度にみられるJAK3変異があることも示された。これらの知見は26年度以降の本研究の発展に重要であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一目標は予定通り、クロマチン免疫沈降と次世代シーケンサーを用いて、野性型および変異体GATA1の標的遺伝子の検索を進める。第二目標である発現誘導型ベクターを用いた変異体GATA1の発現量が与える影響をみる研究は、モノクローン化ではなく導入細胞全体を用いた実験を進める。一方で、我々は変異体GATA1の発現量に影響を与える様々な変異があることを既に発表している(Blood 2010)。この解析結果を変異導入法に反映させることにより、発現量の異なる細胞株を作成する準備を開始した。これには CRISPRと呼ばれる遺伝子改変技術を用い、GATA1遺伝子に組み換えを導入し変異体GATA1の発現量をモニターしつつ、その表現型を解析する予定である。現在すでに、CRISPRベクターを入手し、遺伝子改変の準備を始めている。また、今回新たに発見した変異体については、論文を作成中であり、この変異体を用いて、第三の目的「TAM 発症に関わるGATA1 ドメインの検索」を達成すべく研究を進める。
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