2014 Fiscal Year Research-status Report
インスリン様成長因子が神経芽腫細胞の生存・増殖に果たす役割の解明
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25461590
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
駒田 美弘 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80186791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 秀実 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60525327)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経芽腫 / インスリン様増殖因子 / インスリン / アポトーシス細胞死 / オートクライン機構 / 細胞回転 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神経芽腫細胞におけるインスリン様増殖因子(IGF)受容体、およびインスリン受容体を介したシグナルの細胞内伝達機構を解析し、神経芽腫細胞において、生存・増殖機構として機能しているか否かを明らかにすることを目的としている。 神経芽腫細胞は、IGFとインスリンへの生存・増殖依存性から3つのグループ、これらの生存・増殖因子を必要としない無血清培地で生存・増殖可能なグループ(グループ1)、IGF・インスリンを含む無血清培地にて生存・増殖可能なグループ(グループ2)、牛胎児血清の存在下においてのみ生存・増殖可能なグループ(グループ3)に分けられることを明らかになった。さらに、これらの3つのグループ間に、IGF受容体、インスリン受容体の発現強度に差はなかった。さらに、IGF/インスリンの添加により、いずれのグループにおいても、細胞増殖の亢進が認められ、IGF/インスリンの受容体結合を阻害するPicropodophyllin添加により、IGF/インスリンによる増殖は阻害されるとともに、カスパーゼ3の活性化、PARPの断片化が認められ、アポトーシス細胞死が誘導されるとともに、G2/M期での細胞回転のブロックが認められた。また、グループ1の神経芽腫細胞においては、無血清培養に抗IGF1/2中和抗体を添加することにより細胞増殖が有意に抑制され、オートクライン機構が機能していると考えられた。 以上の結果より、3つのグループ間においてその依存度には差異が認められるものの、いずれのグループにおいても、IGF/インスリンを介したシグナルが細胞の生存・増殖に強い影響を及ぼしていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度においては、IGF・インスリンへの生存・増殖依存性により3つのグループに分類される神経芽腫において、その依存性の各グループ間での相違点を当初の予定とおりIGF・インスリンの受容体結合阻害剤を用いて詳細に検討し、明らかにすることができた。さらに、グループ1におけるオートクラインの存在も証明し、神経芽腫における生存・増殖機構としての意義を確認することができた。また、IGF・インスリンによる生存・増殖シグナルの欠如によって、G2/M期での細胞回転のブロックを伴うアポトーシス細胞死が誘導されることを解明することができた。以上より、研究はおおむね順調に進展していると自己評価した。 また、IGF・インスリンの各受容体を介した細胞内シグナル伝達機構に関して、3つのグループ間で差異が認められる可能性については、極めて興味ある研究課題であると確認ができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25、26年度の研究結果により、神経芽腫細胞は、IGFとインスリンへの生存・増殖依存性から3つのグループに分類され、3つのグループすべてにおいて、IGF/インスリンを介したシグナルが神経芽腫細胞の生存・増殖に強い影響を及ぼしていることが明らかとなった。しかし同時に、その依存度には、差異が認められることが示唆された。今後の研究課題としては、IGF受容体、インスリン受容体を介した細胞内シグナル伝達におけるグループ間の相違点を明らかにしたいと考えている。 (研究計画1)神経芽腫細胞におけるPI3K/AKT系、MAPK系の活性化:IGF/インスリン刺激によAKT/ERKのリン酸化をウエスタンブロット法により解析する。また、IGF/インスリンの受容体への結合を阻害すること(Picropodophyllin添加)による影響も合わせて検討する。 (研究計画2)PI3K/AKT系、MAPK系の阻害による神経芽腫細胞の増殖への影響:IGF/インスリンを含む培養系にAKT/ERK阻害剤を添加し、その増殖抑制効果をWST法を用いて検討する。
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