2013 Fiscal Year Research-status Report
免疫プロテアソームの機能異常による自己炎症病態の分子基盤解明
Project/Area Number |
25461595
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
北村 明子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (10448318)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自己炎症症候群 |
Research Abstract |
自己炎症症候群は、自然免疫系を制御する分子群の遺伝子異常により自然免疫系が過剰に活性化することが病態であると考えられている。我々は、発熱、結節性紅斑、脂肪萎縮などを特徴とする新規自己炎症症候群 (JASL)を見いだし、免疫プロテアソームの構成分子の一つであるPSMB8の遺伝子異常を同定した。この発見は、免疫プロテアソームの機能破綻が自己炎症病態に関与するという新たな視点をもたらしたが、その分子機構は明らかにされていない。 以上の背景から、本研究では、JASL罹患者と同変異を持つノックインマウスおよびトランスジェニックマウスを樹立し、炎症を誘導する主要な分子を明らかにするとともに、PSMB8の遺伝子変異が免疫プロテアソームの機能を低下させる分子メカニズムを明らかにすることを目指している。本研究の成功により、炎症を誘導する分子群およびタンパク分解機構の障害に起因する自己炎症応答の分子基盤が明らかになることが期待でき、ヒト炎症病態の研究分野に大きなインパクトをもたらしうると考えられる。 当該年度は、(1) PSMB8の遺伝子変異により自己炎症応答が誘導される分子機構を個体レベルで検討するために、JASL罹患者と同変異を持つノックインマウスおよびトランスジェニックマウスを樹立した。(2) PSMB8の遺伝子変異により免疫プロテアソームの活性が低下する分子機構を解明するために、JASL罹患者由来のBリンパ球を用いて、免疫プロテアソームの分子集合が阻害されることを確認した。現在、レトロウイルスベクターを用いて、JASL罹患者由来のBリンパ球に野生型PSMB8を高発現する細胞を作製している。(3) JASLの症状の特徴である脂肪萎縮とPSMB8の関連性を解明するために、脂肪細胞の分化を調節するPSMB8の上流のシグナルの同定を目指した。その結果、PSMB8のプロモーター領域を決定し、その領域に結合する転写調節因子を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、交付申請書に記載した研究計画に従い、(1) JASL罹患者と同じPsmb8遺伝子変異を持つノックインマウスおよびMHCクラスIIプロモーター下に変異Psmb8を高発現するトランスジェニックマウスを樹立した。現在、樹立した遺伝子改変マウスを用いて、JASL罹患者と同様の自己炎症応答および脂肪萎縮病態を来すか否かについて検討している。(2) JASL罹患者由来のBリンパ球を用いて、グリセロール密度勾配法によりプロテアソーム分画を分離し、PSMB8の遺伝子変異によって免疫プロテアソームの分子集合が阻害されることを確認した。現在、レトロウイルスベクターを用いて、JASL罹患者由来のBリンパ球に野生型PSMB8を高発現する細胞を作製しており、樹立されれば同様の解析を行う。(3) 脂肪細胞の分化を調節するPsmb8の発現に必要なプロモーター領域を決定し、その領域に結合するPsmb8の転写調節因子を同定することに成功した。 以上のことから、当初の計画通りに研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に樹立した2系統のPsmb8遺伝子改変マウスについて、自己炎症応答および脂肪萎縮病態の有無を検討する。 (1) 経時的に免疫担当細胞の数、血清中の各種サイトカイン、抗体価を測定し、炎症応答の有無を検討する。さらに、脾臓細胞を分離し、フローサイトメーターを用いてTリンパ球、Bリンパ球、樹状細胞、マクロファージの活性化マーカーについて検討する。また、それぞれの細胞を抗CD3抗体(Tリンパ球に対して)、LPS(Bリンパ球、樹状細胞に対して)で刺激して、その増殖能、サイトカイン産生能をコントロール細胞と比較する。 (2) IL-6あるいはIL-1beta;などの各種サイトカイン遺伝子欠損マウスと交配することにより、炎症誘導に関与するどの経路が活性化しているかを解明する。 (3) マウスの体重を経時的に測定し、動物用CTを用いて脂肪量を測定する。 (4) 高脂肪食を与えて脂肪蓄積の程度をコントロールマウスと比較検討する。
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