2014 Fiscal Year Research-status Report
後天性凝固異常症における凝固機能評価と抑制メカニズムの解明
Project/Area Number |
25461605
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
松本 智子 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (80642678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野上 恵嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50326328)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 後天性凝固異常症 / 凝固因子 / インヒビター / 凝固機能評価 / 抑制メカニズム / 抗リン脂質抗体 / 活性化プロテインC / 活性化プロテインC抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
後天性凝固異常症は、突然発症する特定の凝固因子に対する抑制物質(インヒビター)による出血性疾患で無症候から重篤な出血まで症状は多様性を示す。後天性血友病A(AHA)、後天性第V因子インヒビター(AFVi)と後天性VWD(AVWD)の各種疾患について、①抑制メカニズムの解明②汎用性の高い診断方法の確立③AHAにおける抗体産生抑制状態の治療効果について検討する。昨年度は、①AFViの抑制メカニズムの解析として、出血症状有群と無群で比較し、有群ではPTの凝固波形解析(CWA)で有意に低下、抗体認識部位はL鎖、無群はH鎖でかつ抗凝固作用をもつ活性化プロテインC(APC)に対して抵抗性を示す。これらの抑制メカニズムの差異を示すことが症状の多様性の原因の一つであることを報告した(JTH 2014)。本年度は血栓症を示す抗リン脂質抗体症候群(APS)とAHAのAPTTによるCWAパラメータがAHAとAPSは凝固時間では共に延長し鑑別が困難だがAPSでは最大凝固速度や最大凝固加速度などのパラメータが有意に高値を示すことよりCWAが有用であることを証明した。②の診断方法の確立について、Thrombin(Th)とPlasmin(Plm)の産生能をリアルタイムかつ包括的に凝固線溶能を評価できるTh/Plm generation test(T/P-G)における凝固と線溶の相互関連性を明らかにした。また後天性VWDの評価方法に有用な自動凝固分析装置を用いてVWFの活性であるリストセチンコファクター測定について凝固波形を用いた原理で測定する方法について報告した(IJH 2014)。③AHAにおける抗体産生抑制の治療効果およびAVWDについてはまだ検討できていない。さらにこれらの病態把握や止血効果を確認するための凝固機能評価、インヒビター抑制メカニズムの解明は必要であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、①血栓を示す抗リン脂質抗体症候群(APS)と重篤な出血症状をきたす後天性血友病A(AHA)の汎用性の高い方法による鑑別法について凝固波形解析(CWA)を用いた凝固時間では共に延長し鑑別が困難だが最大凝固速度や最大凝固加速度などのパラメータが有意に高値を示す。その原因の一つが活性化プロテインC(APC)に対する抵抗性を認めるのではないかと仮説をたて、Thrombin generation(TGT)を用いて評価し、その仮説を証明したので急ぎ論文報告を目指す。②AHAにおける抗体産生抑制の治療効果についてTGT、Thronbin/plasmin generationおよびCWAを用いた包括的な凝固機能評価における検証が必要である。後天性VWDの診断に有用は③VWF活性測定について自動凝固分析装置を用いたインヒビター力価を評価するための方法を検討しなければならないが、現段階で当初の計画より、遅れが生じてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
血栓を示す抗リン脂質抗体症候群(APS)と重篤な出血症状をきたす後天性血友病A(AHA)の汎用性の高い新たな鑑別方法について論文を作成する。AHAにおける抗体産生抑制の治療効果について、①in vitroでインヒビター血漿に各種バイパス止血治療製剤や他の治療製剤を添加したモデル血漿を作成する。②①で作成したモデル血漿をTGTあるいはThronbin/plasmin generationを用いて評価する。③CWAを用いてフィブリン形成過程における凝固機能を評価する。これらの包括的な凝固機能評価法における検証が必要である。後天性VWDの診断に有用な④VWF活性測定について自動凝固分析装置を用いたインヒビター力価を評価するための方法を検討する必要がある。
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