2013 Fiscal Year Research-status Report
膜性増殖性糸球体腎炎におけるメサンギウム細胞内シグナルの病態生理学的意義の解明
Project/Area Number |
25461617
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鶴見 晴子 東京大学, 医学部附属病院, その他 (20632269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張田 豊 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (10451866)
服部 元史 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (50192274)
栗原 秀剛 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80311976)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腎臓 / 糸球体腎炎 / メサンギウム細胞 / 細胞骨格 / 細胞接着 |
Research Abstract |
本研究は膜性増殖性腎炎(MPGN)におけるメサンギウム細胞の形態や運動性、増殖能を制御する分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。H25年度は、補体等の各種刺激におけるメサンギウム細胞の分子レベルでの変化を網羅的に解析し、それらの変化がメサンギウム細胞の形態を制御するかどうかについて培養細胞を用いて解析した。 1. MPGNにおけるメサンギウムの形態変化の分子的検討 メサンギウム細胞の細胞形態制御する因子の機能解析を行い、F-アクチンを架橋し束化するEPLIN (epithelial protein lost in neoplasm)がメサンギウム細胞のメサンギウム突起に強く集積し、接着斑蛋白質Paxillinと結合しPDGFの刺激下で離れることを見いだした。EPLINの発現を抑制するとメサンギウム細胞の接着斑が消失し、細胞の運動性が亢進すること、またEPLINの発現がIgA腎症やMPGNなどのメサンギウム増殖性腎炎患者の糸球体およびラットの糸球体腎炎モデルで低下していることから腎炎発症の背景にメサンギウム細胞の接着斑や細胞骨格の変化があることが示され、その結果を論文発表した(Tsurumi H.et al. Kidney International Apr. 2, 2014 Epub ahead of print)。 また、メサンギウム細胞における接着斑蛋白質複合体について検討したところ、今までに報告のない複数の分子の特徴的な局在を見いだし、現在それら分子群の機能解析を行っている。 2. 補体によるメサンギウム細胞シグナルの網羅的解析 補体やPDGFといった刺激に伴うメサンギウム細胞の網羅的シグナル伝達解析について、予備実験を行っている。メサンギウム細胞の機能に影響を与える因子の同定を期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書に記載した25年度の計画は(1)のMPGNにおけるメサンギウム細胞の形態変化の分子的検討、および(2)補体によるメサンギウム細胞内シグナルの網羅的解析である。(1)に関して、候補となる細胞骨格蛋白質についてその局在と特異性を検討した。このうち、細胞間接着蛋白質である分子Aが糸球体においてメサンギウム細胞の接着部位に特徴的な局在を示したため、ヒト培養メサンギウム細胞において局在の詳細とその機能解析を進めている。解析の結果、メサンギウム細胞の細胞骨格と密接な関わりがあることが判明し、現在投稿準備中である。また、この分子以外の細胞骨格蛋白質についても局在と発現性を検討した。解析の方法として、特殊な二次抗体を用いてHybridizationを行うことで組織や細胞内におけるネイティブな状態の蛋白質間の相互作用を高感度に検出できるDuolink in situ PLA法(Proximity Ligation Assay)という新たな手法を用い、細胞内の異なる分子の結合を組織切片上あるいは培養細胞上で定量的に検出することに成功し、今後もこの手法を用いる予定である。 (2)については、まずヒト培養メサンギウム細胞にC3aを作用させ、変化が起こる最小量や時間を条件検討中である。変化の解析は、免疫染色およびリン酸化の程度などで検討する。条件がそろい次第、実際に補体を反応させた前後で変化する蛋白質やmRNAを検出する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き補体によるメサンギウム細胞の網羅的解析を行う。その中で、候補の蛋白質に関して補体作用によりどのようにメサンギウム細胞の変化に関わるか検討し、その機能を解析する。 H25の研究は予定通り進行しており、H26年度も計画書にそって進める。 H26年度の計画としては、(2)補体等によるメサンギウム細胞シグナルの網羅的解析、(3)メサンギウム細胞の形態・機能変化に対する補体作用の解析、および(4)In vivoでのMPGN病態の再現と新たなMPGNモデルの作成である。 このうち、(2)に関しては現在補体やPDGFといった刺激に伴うメサンギウム細胞の網羅的シグナル伝達解析について、予備実験を行っており、メサンギウム細胞の機能に影響を与える因子を同定する、その際の課題としては作用させる刺激因子の選定と細胞変化の評価であり、因子としてはC3aおよびPDGFを検討している。また、細胞変化の評価については今まで用いてきた様々な骨格蛋白質やメサンギウム細胞に特有の接着因子などを用いて行う。その後、DNAマイクロアレイおよびプロテオミクスの手法を用いた網羅的解析に移行する。また、網羅的に検出した分子に関し機能解析をする目的で、新たに見出される可能性のある分子についてin situ PLA (Proximity Ligation Assay)法を用い、細胞内での異なる分子の結合とその局在を細胞上で定量化する予定である。また、H25年度に見いだした因子群や(2)で同定した新たな分子群についてどのようにメサンギウムの細胞形態に影響するかを検討する(3)。(1)~(3)で認められる変化が直接MPGNの病理像を引き起こすのに十分かどうか検証するため、in vivoでの遺伝子導入を行うことを検討しており(4)、これについてはH26年度から27年度にかけて行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
補体によるメサンギウム細胞内シグナルの網羅的解析について、当該年度に準備する予定であったが、MPGNにおけるメサンギウム細胞の形態変化に関与する可能性のある候補蛋白質の解析を先に進めたため、網羅的解析に必要な予算を次年度に持ち越すこととなった。 現在補体やPDGFといった刺激に伴うメサンギウム細胞の網羅的シグナル伝達解析について、予備実験を行っており、メサンギウム細胞の機能に影響を与える因子を同定する、その際の課題としては作用させる刺激因子の選定と細胞変化の評価であり、因子としてはC3aおよびPDGFを検討している。また、細胞変化の評価については今まで用いてきた様々な骨格蛋白質やメサンギウム細胞に特有の接着因子などを用いて行う。その後、DNAマイクロアレイおよびプロテオミクスの手法を用いた網羅的解析に移行する。このような解析の費用に充てる予定である。
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[Journal Article] Epithelial protein lost in neoplasm modulates platelet-derived growth factor-mediated adhesion and motility of mesangial cells.2014
Author(s)
Tsurumi H, Harita Y, Kurihara H, Kosako H, Hayashi K, Matsunaga A, Kajiho Y, Kanda S, Miura K, Sekine T, Oka A, Ishizuka K, Horita S, Hattori M, Hattori S, Igarashi T.
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Journal Title
Kidney International
Volume: Apr. 2 Epub ahead of print
Pages: 01-10
DOI
Peer Reviewed
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