2013 Fiscal Year Research-status Report
川崎病血管炎の炎症増悪因子としてのマンノース結合蛋白質に関する実験病理学的研究
Project/Area Number |
25461628
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
浜岡 建城 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60189602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 明宏 京都府立医科大学, 医学部, 研究員 (50313854)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | mannose binding lectin / 川崎病 / 川崎病動物モデル |
Research Abstract |
マンノース結合蛋白質(Mannose binding lectin : MBL)は, 微生物の細胞壁を構成する複合糖質などを認識して補体経路を活性化することで知られる自然免疫応答に関わる血漿蛋白質である。これまで臨床遺伝学的研究から、報告間で結論は必ずしも一致しないものの、MBLの遺伝子多型と川崎病、特にその冠動脈後遺症リスクに相関が見られることが異なる複数の研究グループにより指摘されてきた。これらの臨床的知見を踏まえて代表者らは、川崎病発症の分子機序におけるMBLの役割を明らかにすることを目標に本研究を計画した。 25年度の研究では、川崎病動物モデル(Candida albicanswater solublefraction(CAWS)誘導性川崎病様マウス血管炎)において、血管炎部位に、MBLおよび補体成分が沈着していることを見いだした。これは、代表者らのこれまでの予備的データを裏付けるとともに、マウス川崎病様血管炎の発症に補体経路、とくにレクチン経路の活性化が関わることを示唆する。 一方、レクチンブロットとproteomicsを併用した生化学的解析から、組織におけるMBLの主要な内在性標的蛋白質としてコアヒストン(H4, H3, H2A, H2B)を同定し、さらにin vitro系において実際に精製ヒストンがMBL-依存的にレクチン経路を活性化するとの結果を得た。 前述のMBL遺伝子多型と川崎病との関連性を考え合わせると、本研究の結果は川崎病血管炎の発症機序の少なくとも一部に、感染刺激等を契機とする、MBLを介したレクチン経路依存的な炎症反応が関与する可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
川崎病の発症機序におけるmannose binding lectin(MBL)の役割を明らかにすべく、25年度は、川崎病動物モデルとして知られるカンジダ細胞壁成分(CAWS)誘導性血管炎マウスを用いて、生化学的、病理学的解析を行い、現在までに以下の知見を得た。 1) 同モデルマウスにおいて血管炎好発部位にMBL-AおよびMBL-Cの沈着を認めた。ただし、MBL-Aが内膜、外膜に瀰漫性に沈着するのに対して、MBL-Cは主に大動脈弁基部内膜側に限局して沈着していた。2) MBLの沈着部位に一致して内膜および外膜に補体成分の高度の沈着が認められた。少量の補体成分は対照群マウス大動脈起始部の外膜側や心筋組織においても検出された。3) 蛋白質化学的解析から、MBLはHistonesと相互作用し、少なくともin vitroの実験系ではレクチン経路を活性化することが明らかとなった。4) MBLの沈着部位はIgMの沈着部位と良く一致しており、血管炎部位における補体経路活性化のすくなくとも一部には、両者が協同的に関与している可能性も示唆された。 レクチン経路の活性化は、MBLなどのコレクチンと複合体を作るMBL-associated serine proteinase (MASP)-1および-2によって開始する。ゆえにMASP阻害ペプチドの投与による炎症抑制について検討を試みた。同阻害ペプチドのMASP阻害作用はin vitro系でのみ評価されており、これまで同ペプチドをin vivoで使用した研究例はない。ゆえに、そのin vivoにおけるその有効性、有効投与量、至適な投与プロトコールなどについて検討している。なお、レクチン染色による組織の糖鎖構造変化の解析は26度に持ち越す。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、in vivoにおけるMASP阻害ペプチドの有効性に関する基礎的検討および当初より計画していたMASPとprotease-activated receptor 4 (PAR4)に関する実験を中心に進める。また25年度に実施できなかった各種レクチンによる大動脈組織の糖鎖の構造変化に関する解析を行う。 一方で、25年度の研究の過程で、予備的なデータではあるがMBLはhistone以外にも好中球などに存在するいくつかの細胞内蛋白質と相互作用することを見いだしているため、可能であれば、これらの標的蛋白質の同定および補体活性化能について生化学的手法を用いて解析することも計画している。好中球細胞質蛋白質は、内皮傷害との関連が指摘されているNeutrophil extracellular traps (NET)との関連があることから、NET形成とMBLの関連性に関する実験も上記の実験の進捗状況を見ながら26年度以降、順次進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一部の実験の進捗状況の遅れによる計画の一部再調整により、当初予定していた各種レクチンによる組織化学的解析が実施出来なかったことに伴い、未使用額が生じた。 同実験は26年度中に実施予定であり、本年度未使用額については、必要な各種標識レクチンの購入にあてる。
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