QT延長症候群に対するω-3多価不飽和脂肪酸の抗不整脈作用の検討

2014 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 25461633
• Research Institution: Tokyo Women's Medical University
• Principal Investigator: 古谷 道子 東京女子医科大学, 医学部, 研究生 (40398805)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 羽山 恵美子 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (00349698) ; 中西 敏雄 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (90120013)
• Project Period (FY): 2013-04-01 – 2016-03-31
• Keywords: QT延長症候群 / 多価不飽和脂肪酸 / EPA/AA比

Outline of Annual Research Achievements

QT延長症候群（LQTS）は、心電図上著明なQT延長を認め、心室性不整脈による失神発作や突然死を高率に生ずる疾患である。主たる疾患遺伝子として心筋のK+チャネル、Na+チャネルをコードする遺伝子が報告されている。発作や突然死を予防するために、投薬治療がおこなわれているが、約2割の患者において発作の予防が未だできていない。近年、ω-3系-多価不飽和脂肪酸（PUFA）が心保護効果のための重要な要素であることが報告されており、ω-3系PUFAの心筋チャネルに対する抗不整脈作用の可能性が示唆されている。本研究では、LQTSの主たる成因蛋白である心筋のK+チャネル、Na+チャネルに対する、ω-3系PUFAの抗不整脈作用への関与を明らかし、LQTSの新しい発症予防法や治療法の創出につなげることを目的とする。
昨年に引き続き、LQTS患者およびLQTS疑いの患者について血液中の脂肪酸４分画検査を行い、ω-3系PUFA(EPA)とω-6系PUFA(AA)の濃度比(EPA/AA比)等を算出した。対象者合計205名では、EPA、AA、DHA、およびジホモ-γ-リノレン酸の平均±SDの血清レベルは、それぞれ22.6±17.4、93.4±33.3、57.1±32.4、25.3±10.5μg/mlであった。EPA/AA比は、0.24±0.15であり、DHA/AAが0.60±0.22であった。一般日本人のEPA/AA比0.6と比べると低値を認めている。さらに失神発作の有無等の臨床症状との比較検討を行っている。
ω-3系PUFA(EPA)のHERGチャネル、hH1チャネルへの影響を検討するための電気生理学的解析については、HERG、hH1各チャネルのstable細胞を用いて実験系確立を行っている。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

ω-3系PUFA(EPA)のHERGチャネル、hH1チャネルへの影響についての研究では、HERGチャネル、hH1チャネルのstable細胞を用いて、電気生理学的解析を行う実験系の確立を行っている。パッチクランプを行う実験環境の問題で、少し時間がかかっているが、おおむね順調である。
患者血清中のω-3系PUFAとω-6系PUFAの比の測定と表現型についての研究では、対象者合計205名について血液中の脂肪酸4分画検査を行い、その表現型との比較検討を実施中であり、順調に進展している。

Strategy for Future Research Activity

27年度も引き続き、ω-3系PUFA(EPA)のHERGチャネル、hH1チャネルへの影響についての研究では、HERGチャネル、hH1チャネルの発現細胞を用いて、ω-3系PUFA(EPA)によるその発現電流の変化や細胞内での発現分布の変化等の解析を行う予定である。患者血清中のω-3系PUFAとω-6系PUFAの比の測定と表現型についての研究では、得られたデータを用いて、臨床症状との関連性について解析する予定である。