2013 Fiscal Year Research-status Report
新生児低酸素性虚血性脳症の予防に向けた胎児治療戦略に関する基礎的研究
Project/Area Number |
25461641
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
亀井 良政 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (00251265)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 低酸素虚血性脳症 / 脳室周囲白質軟化症 / オリゴデンドロサイト / 脳低温療法 |
Research Abstract |
本年度は、低温による、オリゴデンドロサイトの低酸素虚血負荷からの保護効果について、ラットPVLモデル及びラットオリゴデンドロサイト初代培養系を用いて検証を行った。ラットPVLモデルにおいて、低酸素虚血負荷中に低温にすることにより、オリゴデンドロサイトの細胞死を抑制し、MBP (myelin basic protein) の発現が維持されることが確認され、特にMBP exon2を含むisoformが低酸素虚血負荷により減少し、低温により維持されることが新たに解明された。また、オリゴデンドロサイトとDRG (dorsal root ganglion) neuron の共培養系を用いて、in vitroで両者が接触を開始する際に、MBP exon2を含む21.5kDa リン酸化isoformが最初に発現することが示唆され、このisoformは低酸素無糖負荷により減少し、低温により維持されることが明らかとなった。 これらの結果により、低温はオリゴデンドロサイトを、低酸素虚血負荷から細胞死抑制だけでなく、ニューロンと接触し髄鞘化を開始する能力の維持にも関与することが示唆された。この現象に対する分子機構のひとつとして、オリゴデンドロサイトの生存や分化に重要とされている、extracellular signal-regulated kinase 1/2 (ERK1/2) の関与について検証した。その結果、ERK1/2リン酸化はin vivo, in vitro両者において、低酸素虚血負荷で減少し、低温により維持されることが明らかとなった。U0126を添加しERK1/2リン酸化を阻害すると、低温による細胞死抑制作用は減弱し、オリゴデンドロサイトとニューロンの接触開始が阻害され、リン酸化MBP 21.5kDaが減少した。よって、ERK1/2は、低温によるオリゴデンドロサイト保護効果に関与していると考えらえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低温による、オリゴデンドロサイトの低酸素虚血負荷からの保護効果について、in vivo・in vitroともに検証に適した実験系を確立した。MBP exon2を含むisoformの重要性や、ERK1/2リン酸化が細胞死抑制とニューロンとの接触開始能力の維持に寄与しているといった、新たな知見が得られており、低温のオリゴデンドロサイト保護効果について、その機序についての解明が進みつつあると言える。また、これらの結果に関する論文は、既に学術誌に受理されている。
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Strategy for Future Research Activity |
低温のオリゴデンドロサイトに対する作用について、その分子機構をより詳細に検討する。これまでの結果から、低温はMBPの発現に大きく影響し、低酸素虚血負荷からの髄鞘化能の保護に関与している可能性が考えられることから、MBPの転写制御に関わる因子について、検討を開始している。候補となる因子が明らかとなれば、低温の代替となる、オリゴデンドロサイト保護効果を有する薬剤の開発に貢献する可能性がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた動物実験が、予想していたより少ない動物数で完了し、既に投稿した論文が受理されたため 低温のオリゴデンドロサイトに対する作用について、その分子機構をより詳細に検討し、さらに低温の代替となる、オリゴデンドロサイト保護効果を有する薬剤の検索を行う必要がある。このために、次年度は当初予定したよりも多くの動物実験を行う必要が生じ、動物の購入のための資金として使用する予定である。
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