2014 Fiscal Year Research-status Report
低酸素が心臓形態形成期の胎児心血行動態に及ぼす影響について
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25461650
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
桃井 伸緒 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (10285033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青柳 良倫 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (30509469)
金井 祐二 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (60448628)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 胎児 / 心血行動態 / 低酸素 / フェニトイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、心臓形態形成期にあたる妊娠初期の胎仔が低酸素に対して示す心血行動態を、小動物用超音波高感度イメージングシステムにて母体内で観察し、低酸素プローブ等を用いて組織学的にも検討することを目的としている。平成26年度は、母体へのフェニトイン投与を用いて胎仔徐脈を誘発し、胎児心血行動態の観察を行った。フェニトインを妊娠在胎日齢11.5の母体マウスに投与し、イメージングシステムを用いて胎仔心血行動態を観察した。フェニトインが胎仔徐脈を引き起こすことは、摘出心筋を用いたin vitro実験で示され、胎仔心筋細胞のHERG チャネル電流(IKr)の阻害が機序として推測されているが、in vivoでの観察は本研究が初めてとなる。フェニトインの投与量を50mg/kg、75mg/kg、100mg/kgとして胎仔の薬剤投与前後の心拍数を評価したところ、75mg/kg以上を投与した妊娠マウスの胎仔が徐脈に陥ることが判明した。75mg/kg投与12時間後の観察では、心停止に陥っている胎仔も観察され、拍動が見られた胎仔に限って平均心拍数を検討しても、投与前175拍/分から、投与後54拍/分に低下していた。このときの母体フェニトイン血中濃度は22micro g/mLであり、臨床上用いられる10~20micro g/mLをわずかに上回る程度であった。現在、徐脈に伴い低酸素に陥った心臓形態形成期の胎仔が、どのような心血行動態をとるのかを、小動物用超音波高感度イメージングシステム、および組織低酸素マーカーpimonidazole hydrochlorideを用いた組織学的検討を元に研究中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画段階では、母体マウスを低酸素換気下に置き、胎仔の低酸素環境を作成する予定であったが、小動物用超音波高感度イメージングシステムによる心血行動態測定法の伝授、および組織低酸素マーカーの免疫染色法の確立に時間を要したため、これをスキップし、臨床上の重要性が高いと考えられるフェニトインの作用を優先して研究した。In vivoの観察で、臨床上用いられる血中濃度付近で、胎仔徐脈が引き起こされるという新しい知見が得られたが、妊娠マウスに対する至適投与量の決定に時間を要し、在胎日齢による差異や胎児内血流再分布の評価までは至っていない。また、組織低酸素マーカーの免疫染色についても対照群との差が明確ではなく、染色法の調整を行う必要があった。
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Strategy for Future Research Activity |
母体心血行動態を変化させずに、胎仔徐脈を引き起こすフェニトインの至適投与量が決定したので、この実験系を用いて心臓形態形成期にあたる妊娠初期の胎仔が低酸素に対して示す心血行動態を評価していく。組織低酸素マーカーの免疫染色について染色法の調整を行い、組織学的な検討を加えていくが、不十分な可能性があり、組織低酸素を表すサイトカインやマイクロRNAを用いた評価も追加検討する。これらの評価法が確立した後に、IKrチャネル阻害薬であるニフェカラントまたはソタロールを用いた確認評価を行い、同様のチャネル阻害作用があり、臨床で用いられることが多い抗菌剤や抗てんかん薬の胎仔に対する作用を確認する。
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Causes of Carryover |
小動物用超音波高感度イメージングシステムによる心血行動態測定法および組織低酸素マーカーの免疫染色法の確立に時間を要したため、平成26年度はフェニトイン投与による評価に留まったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
フェニトインを用いた胎仔低酸素の評価が確立後、予定している薬剤について順次、実験を行っていく。また、組織評価について、サイトカインやマイクロRNAを用いた評価も予定しており、次年度使用額をこれに充てる。
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