2014 Fiscal Year Research-status Report
新生児仮死の脳保護機構に関する研究:脳グリコーゲン代謝を基盤とした治療法の検討
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25461652
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
杉江 秀夫 常葉大学, 保健医療学部, 教授 (60119980)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 新生児仮死 / 嫌気性解糖 / グリコーゲン / 脳型ホスホリラーゼ / 脳エネルギー代謝 / アストロサイト / 脳性まひ / 痙性両麻痺 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳におけるグリコーゲンの役割については未だ十分には解明されていない。しかしながらグリコーゲンは嫌気解糖における重要な基質であり、脳、特に新生児期の未熟児脳においては低酸素状態の緊急エネルギー産生機構としてその役割が重要であると推定される。 本研究では新生児仮死児において、同程度の新生児仮死を経験した児において、正常発達するものと重篤な神経後遺症を残す2群があることに注目した。特にグリコーゲン分解の第一段階で作用する脳型グリコーゲンホスホリラーゼ(PYGB)に着目し、2群における差異が無いかどうかを遺伝子レベルで検討するものである。特にPYGB遺伝子の多型あるいは変異が周生期仮死に起因する脳障害の予後とどのように関連しているのか、さらに関連があればその病態は何か、さらにPYGBの活性化因子であるビタミンB6(ピリドキサールリン酸)による治療が可能かどうかを検討している。本研究では初期検索結果として、神経予後が不良な群において、ある一定のgenotypeの特徴が見出されている。今後の課題は十分な統計学的検討が可能なだけの症例数を確保することである。昨年度東京女子医科大学小児科を共同研究施設として倫理委員会の承認を得た。その結果現在症例のリクルートは25例に達している。今年度はされに症例数を増やすことを目標に、少なくとも正常群と後遺症群でそれぞれ20例以上を予定している。また周生期の患者データ(血液生化学検査も含む)のデータベースを構築し、最終的に多角的な多変量解析による予後決定因子とPYGB遺伝子との関連を明らかにしてゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の精度の観点から、正常発達群・後遺症群について非常に厳密なinclusion criteriaを設定した。この条件を満たした症例のリクルートは、厳密さのため症例収集が一次停滞したが、研究協力施設を追加したことで改善した。その結果一定のinclusion criteriaを満たす症例は現在25例収集できている。今後さらに症例数を蓄積し、2群におけるPYGB遺伝子の差異についてより統計的な意義付けのできるデータ解析を目指している。初期段階での検討結果では、神経後遺症を残した群でPYGB多型にある一定の傾向が認められている。さらに周生期データと遺伝子多型との関連性についても研究を進めてゆく基盤は整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
PYGB遺伝子発現の差異が新生児仮死児発症時の脳代謝病態にどのように影響しているのか、もし関連があるのであれば生化学的にグリコーゲンホスホリラーゼ活性を直接的に活性化させるビタミンB6(ピリドキサールリン酸)の投与により、脳保護の作用強化により神経予後の改善に寄与できるかどうかを解明することが本研究のゴールである。 同程度の新生児仮死でありながら神経予後の良いものと悪いものがある原因として本研究の仮説が証明できれば、今後治療計画の準備、治療効果の実証のための多施設共同での臨床試験への準備などを検討ができる。
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Causes of Carryover |
平成26年度は代表研究者が9月1日付けで異動することになったため(自治医科大学から常葉大学へ)、異動前後に研究計画の実施に少なからず影響が出た。このため平成26年度は研究施設の追加、症例の蓄積を主眼として行ったため、経費の執行がわずかであった。しかしながら厳格な条件設定での症例収集は今年度順調に増加し、3年計画の研究計画には大きな影響は無いと考えられる。今後は唾液からのDNA抽出、PYGB遺伝子の解析、症例の集積の継続を行ってゆく予定である。以上のような理由のため今年度の支出実績は少なかったため次年度の繰越が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度はさらに症例のリクルートが進む予定で、遺伝子関連経費の増加が予想され、解析用の消耗品への支出に当てる。また最終年度であり臨床検査データを含めた膨大なデータについて、遺伝子解析結果との統計学的処理が必要である。得られた研究結果については①学会、研究会発表、②研究論文の執筆、③「グリコーゲン代謝異常」のWeb公開の準備、④研究計画の進展によっては治療への可能性について多施設臨床研究への準備、などへの支出を予定しており、当該年度からの次年度への繰越金を充当して研究の完成を目指す。
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Remarks |
上記タイトルで本学サーバー内に研究成果の公開を準備している。
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Research Products
(14 results)
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[Presentation] 当院における副腎白質ジストロフィー6例の臨床的検討2014
Author(s)
宮内彰彦1, 門田行史, 池田尚広, 川原勇太, 長嶋雅子, 小坂仁, 杉江秀夫, 森本哲, 渡辺浩史, 下泉秀夫, 下澤伸行, 山形崇倫
Organizer
第56回日本小児神経学会学術集会
Place of Presentation
浜松市
Year and Date
2014-05-29 – 2014-05-31
Invited
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