2014 Fiscal Year Research-status Report
脳内炎症と低酸素が惹起する脳室周囲白質軟化症におけるエピゲノム変化の分子病態解析
Project/Area Number |
25461660
|
Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
細川 昌則 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 病理学部, 所長兼部長 (00127135)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 陽一 香川大学, 医学部, 講師 (30372113) [Withdrawn]
榎戸 靖 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 病理学部, 室長 (90263326)
島田 厚良 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 病理学部, 室長兼部長(病院) (50311444)
河内 全 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 病理学部, 研究員(主任) (70322485)
岸 宗一郎 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 病理学部, リサーチレジデント (60595833)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 脳室周囲白質軟化症 / オリゴデンドロサイト / 母体炎症 / 実験モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の脳室周囲白質軟化症(PVL)の発症機構の研究を行い以下の成果を得た。 1)脳室周囲白質軟化症(PVL)モデル初代培養細胞実験系におけるモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL、ABHD12)の機能解析:ミクログリアをin vitroでLPS及びLTAで処理することにより、PVLと同様の低酸素性炎症環境培養細胞実験系を用いて両酵素の機能を解析した。ミクログリアのLPS 処理でMAGL 活性は上昇し、その発現量はStat6 による転写抑制を受けていること、これがプロテアソームによる分解を免れて安定化するためであることを明らかにした。また、MAGL は炎症性サイトカインの産生に関与しないことが明らかになった。ノックダウンによりABHD12の発現を阻害するとミクログリアの細胞増殖が阻害され、細胞死が誘導された。 2)脳の発達期にオリゴデンドロサイト(OL)系譜細胞の脱落を人為的に誘導する遺伝子組換えマウスを用いたPVLの発症機構の解明と治療法の開発:タモキシフェン投与によるCreリコンビナーゼ活性化により、脳の発達の各時期に特異的にOlig2プロモーター下でジフテリア毒素Aサブユニットを発現させ、選択的にOL系譜細胞の細胞死を誘導するマウスを作製し、分化・成熟過程にあるオリゴデンドロサイト系譜細胞の変性・脱落を試みたが、期待通りの細胞死が誘導できなかった。 3)LPS全身投与に応答する脳内サイトカインの種類と経時変化の解析:脳室周囲白質軟化症(PVL)発症の主要危険因子である全身性炎症状態が生じると、髄膜・脈絡叢のCXCL12 陽性細胞、脈絡叢上皮、血管内皮が早期に応答し、多彩なサイトカインを介する細胞間相互作用をアストロサイト突起と行うことによって、免疫応答が脳に伝達されることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は、脳室周囲白質軟化症(PVL)モデル初代培養細胞実験系におけるモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL、ABHD12)の機能解析、脳の発達期にオリゴデンドロサイト(OL)系譜細胞の脱落を人為的に誘導する遺伝子組換えマウスを用いたPVLの発症機構の解明と治療法の開発、LPS全身投与に応答する脳内サイトカインの種類と経時変化の解析の3つ方向から研究を進め、夫々の課題では成果が得られたが、PVLの病態全体を俯瞰するまでには至っていない。特に遺伝子組み換えマウスを用いた実験系が十分機能していないため、研究は十分進捗したとは言い難い。また、新たな研究課題として、PVL患者にしばしば認められる自閉症スペクトラム障害と白質障害との関係を、OL系譜細胞の分化制御に関係すると考えられているmicroRNAを自閉症児・者の末梢血検体を用いて解析することで明らかにする計画を立てた。本研究は倫理審査を申請するにとどまった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に引き続き、炎症環境と低酸素負荷による脳室周囲白質軟化症(PVL)モデルミクログリア初代培養PVL実験系を用いて、細胞機能の係る遺伝子群の発現変化を、定量的PCRとウェスタンブロットにより解析する。脳の発達の各時期に、選択的にオリゴデンドロサイト(OL)系譜細胞の細胞死を誘導する遺伝子組換えマウスマウスを作製したことにより、このマウスの脳の組織学的変化、行動変化を検索し、脳の発達におけるOL系譜細胞の機能をin vivo、in vitroでの検討を進める計画を立案したが、実験系が機能するように諸条件を検討しなおす。新たな研究課題として、PVL患者にしばしば認められる自閉症スペクトラム障害と白質障害との関係を明らかにする臨床研究を開始する。。
|
Causes of Carryover |
平成25年度に研究者の異動が生じ、新たな研究者を加えた。これにより研究内容を一部変更した。モデルマウスを用いた実験系が機能しなかったことも加わり、各共同研究者の研究が遅れ、配分額に使用残が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度の各共同研究者が繰り越した金額は、各研究者への平成27年度配分額に追加して配分する。
|
Research Products
(6 results)