2013 Fiscal Year Research-status Report
難治性皮膚アレルギー疾患の病態に基づいた好塩基球を標的とした新規治療の開発
Project/Area Number |
25461665
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
横関 博雄 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90210608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井川 健 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (00372441)
宇賀神 つかさ 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40581327)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 好塩基球 / 痒疹 / TH2サイトカイン / M2マクロファージ / STAT6 / IgE / プロテアーゼ / 蕁麻疹 |
Research Abstract |
1.研究開始当初の背景 痒疹は痒みを伴う孤立性の丘疹であり慢性的に続く痒みにより患者のQOLは著しく損なわれる。痒疹の一部は蕁麻疹様病変ではじまりやがて持続性の丘疹ないし結節性病変へと変化するのが特徴である。 2.研究の目的 今年度はこの現象に着目してIgE依存性に痒疹病変マウスモデルの作成を試みた病態を解析した。 3.方法 TNP特異的IgEで受動感作させたC57BL/6(wild-type: WT)マウスとSTAT6欠損マウスについて、耳介皮膚あるいは背部皮内にTNP-OVAを3回反復投与し、IgE-CAIを持続させた。 4. 結果 TNP-OVAを耳介皮内に反復投与したSTAT6欠損マウスでは、耳介腫脹はWTマウスに比べて著明に増悪していた。さらに、WTマウスの耳介にSTAT6 siRNAを投与すると、耳介腫脹はscramble siRNAに比べて増悪した。次に、STAT6欠損マウスの背部皮膚にTNP-OVAを反復投与して痒疹様病変を作成したところ、WTマウスに比べて、表皮の肥厚や好酸球、好塩基球の浸潤が極めて顕著となっていた。さらに、病変部ではIL-4、 IL-13産生が著明に増加していた。STAT6欠損マウスの病変部にはM2マクロファージマーカーであるCD163(+)細胞、CD206(+)細胞はほとんど存在しなかった。またWTマウスでみられたF4/80(+)マクロファージ、CD206(+)M2マクロファージにおけるpSTAT6の核内移行はSTAT6欠損マウスでは確認されなかった。 5. 考察 痒疹マウスにおいて、STAT6を抑制すると痒疹様反応は増悪した。マウス痒疹様反応においてもIL-4によるSTAT6シグナルの消失がM2マクロファージの誘導を阻害し、炎症が増悪した可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性痒疹(慢性多型痒疹、結節性痒疹)、アトピー性皮膚炎の痒疹結節部の皮膚病変、末梢血の好塩基球の免疫組織学的解析にて好塩基球の活性化と重症度の関連性の検討を目的としていたが、既に慢性痒疹、アトピー性皮膚炎の痒疹部および正常人の皮膚の病理組織のクリオ切片を用い、好塩基球特異的抗体(BB1)抗CD4,CD8モノクローナル抗体を用いて病変部のリンパ球、好塩基球の浸潤を解析して痒疹反応形成における好塩基球の役割を解析し痒疹反応部で好塩基球が多数浸潤していることを報告し得た(Ito Y et al : Basophil recruitment and activation in inflammatory skin diseases., Allergy, 66 : 1107, 2011) 。さらに抗原特異的IgE遺伝子導入マウスによる痒疹モデルマウスを樹立することができの病態解析を解析が可能となった(Hasimoto T,J Immunol submitted)。現在、抗原特異的IgE導入マウスの背部に大量の抗原を数回皮下投与することにより誘導した痒疹モデルマウスを用いての発症機序、痒疹反応との違いなどに関して各種サイトカイン、ケモカイン、接着因子、Th1,Th2,Th17細胞に関してRT PCT法を用いてmRNAの発現、ELISAにて蛋白レベルでの検討しており痒疹におけるサイトカインパターンと痒疹モデルマウスで一致することが明らかにされた(Hasimoto T,J Immunol submitted)。今年度ではSTAT6の役割も解析でき順調に研究は進んでいる。痒疹モデルマウスで好塩基球が産生する大量のIL-4がSTAT6を介してM2マクロファージを誘導でき痒疹反応が抑制できることが明らかになったのでさらに、この機序を解析して臨床応用に応用する予定であり人を用いた研究でもマウスを用いた研究でも順調に解析が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方策は好塩基球の活性化の機序のin vitroでの解析である。最近、亜鉛(Zn)がアレルギー炎症反応においてシグナル伝達因子の調節因子としてとして重要な役割を果たすことが明らかにされている。亜鉛を細胞内に輸送する輸送体は現在Zn transporter(Znt),MTと呼ばれ8種類ある。好塩基球にFceRIを介した刺激を加え細胞内の亜鉛濃度を測定。各種Znt,MTの発現レベルをPCT法にて解析、また各種のtransporterの阻害剤を用いて主にどのZntが重要な役割を果たすか解析。また、Western blot法を用いて蛋白レベルでも検討する。各種Znt特異的モノクローナル抗体をもちいて好塩基球での発現を確認。FceRIを刺激した好塩基球からの各種サイトカイン、ケモカインの産生を欠損マウス、WTで比較検討する。さらにアレルギー性皮膚炎反応における亜鉛の役割解析するため接触過敏症、抗原特異的IgE誘導性第3相反応、蛋白抗原接触感作誘導性皮膚炎症などIn vivoにおける各種皮膚炎症反応モデルマウスを用いて亜鉛、Zn transporter,MTの役割を解析する予定である。亜鉛をターゲットとした好塩基球の制御機構を解析していきたい。さらにプロスタグランデンD2が接触過敏症、痒疹モデルマウスである抗原特異的IgE遺伝子導入マウスにおいて非常に重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。今後、マウス好塩基球のPGD2産生能の検討を行いたい。マウス骨髄細胞から培養した好塩基球を刺激後、PGD2,E2を産生するかELISA法、RT-PCR法で検討する。さらに末梢血からDX5陽性細胞を純化後、非刺激のマウス好塩基球がPGD2,E2を産生するか検討する。また、PGDSに関しても同様に検討する。また、ヒト好塩基球のPGD2産生能も検討する予定である。ヒト好塩基球細胞株を用いてPGD2, PGDSの産生をELISA,RT-PCRを用いて遺伝子レベル、蛋白レベルで検討する。亜鉛、PGD2を介した好塩基球をターゲットとした研究を進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の痒疹モデルマウスの解析を主に施行している大学院生が防衛医大の助教として出向後、防衛医大の研究費を用いてモデルマウスの解析を行ったため消耗費等を使用しなかったが研究は十分に進展した。また、本大学の動物施設が工事をしたためマウス等の使用が十分できず動物実験ができず今年度に繰り越した。今年度は共同研究者の宇賀神が好塩基球のin vitroでの解析を進めるため昨年の費用を使用する予定である。 研究に伴う試材などの購入に加え、使用計画にはなかったものの、解析を進めるためにテクニシャンを雇うことを予定しており、その費用は150万円ほどを見込んでいます。
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Research Products
(9 results)